2020年12月に初版が発行された本。
著者の山崎理佳氏は写真編集者で、写真撮影のハウツーなどに関する書籍の撮影・編集・執筆などを行っている。
本書は、写真撮影の中でもiPhoneなどを使ったスマホ撮影に焦点を当て、日常生活で出会うちょっとした一コマを、より美しく撮影するための技術についてシーン別に解説したものである。
ページ数は全体で140ページ強。
写真の掲載がページの大半を占めているため、かなり短時間で読むことができる本となっている。
撮影の基本知識
細かい工夫は撮影したいシーンごとに異なるが、基本的な技術については共通しているため、最初に解説されている。
撮影時に気をつけるポイントは3つ。
- 撮影対象を観察する
- 光の当たり方を見る
- アングルと構図を決める
観察
まずは「どこから撮るか」を決める必要がある。
撮影対象の周りをぐるっと一周して、ベストな撮影角度を決定する。
光
光がどの方向から当たっているかで、写真の印象は全く異なってくる。
例えば、顔を撮影する場合
- 順光→濃い影ができやすいので意外と難しい
- 逆光→全体が影に入るので強い陰影ができにくく、実は撮りやすい
- サイド光→長い影ができるのでドラマチックな雰囲気になる
といった特徴がある。
上記と同様の理由で、顔などの撮影は、晴れの日よりも、濃い影ができにくい曇りの日の方が向いている。
また、光の種類も印象に強く影響する。
小物の撮影は午前中の窓際で斜めから差す自然光を使うのがベスト。
天気(光の強さ)に応じて、カーテンの開閉で光量を調節すると良い。
複数の種類の光が混ざると美しく見えないので、自然光を使う際には部屋の電気は消すことに注意。
ドラマチックな写真を撮りたい場合には、朝や夕方など、太陽が低い位置にある時間帯を狙う。
構図
- 主役を引き立てたいなら縦構図、雰囲気を伝えたいときは横構図で撮る
- 料理や小物は、スタイリッシュに撮るなら真上、雰囲気を伝えたいなら斜めから撮る
- 雰囲気を切り取りたいときは広角、一部のみ見せたいときは望遠を使う
- 対象に近づき、かつ背景を離せば、特殊な機能を使わなくても背景をぼかせる
続いて、具体的なシーン別の撮り方について、特に有用だと思われるものを抜粋する。
屋外撮影
壁づたいの花
- スッキリとした壁を背景にする
- 背景も含めて色を3色以内に抑える
- 花と同じ高さで正面から平面的な写真を撮る
庭先の花
- 強い影ができにくい曇りの日を狙う
- 背景を花から離してボケさせる
- 主役より目立つ色や形のものはできるだけ外す
木漏れ日
- 葉が小さく隙間の多い木が狙い目
- 不自然な斜め構図にならないように気をつける
- 人や日傘、階段などの小物を端に入れてアクセントにする
雨の街
- 雨粒のついたガラス窓を利用する
- 窓の映り込みの一部を実像に重ねて撮る
- 編集で彩度を下げてコントラストを上げると雰囲気のある写真になる
雨とアジサイ
- 丸い水滴がついたビニール傘越しに撮る
- ピントはアジサイではなく水滴に合わせる
- 水滴が目立つように背景は暗い場所を選ぶ
雨上がりの滴
- 滴が綺麗についた草木を選ぶ
- 水滴の背景に樹木が入る位置を探す
- 逆光状態で滴にピントを合わせる(ポートレートモードも効果的)
- トリミングして主役を目立たせる
足元と草花
- 白スニーカーなど、野草に合う靴を履く
- 草花が密集している部分を選ぶ
- 見せたい場所にピントを合わせる
- 歪まないように真上から撮る
道
- 光や影を効果的に利用する
- 影を利用するなら朝や夕方
- バイクや自転車、カーブミラーを端に配置してアクセントにする
空
- 広角などで木々を入れ、額縁代わりに利用する
- 編集でシャドウを上げてハイライトを下げ、ブルーの色味をグリーン寄りにする
サクラと川
- 時間帯は早朝
- 逆光で撮る
- HDR機能を活用する
- 水平垂直で左右対称になるように撮る
水面への映り込み
- 上下左右のバランスに気をつける
- 望遠で見せたい部分を切り取る
- 映り込み部分のみを明るく編集する
雲
- 比較対象となる建物や飛行機と一緒に撮る
- 主役が目立つ程度にズームする
- うろこ雲やひつじ雲など、広範囲の雲は広角で撮る
竹林
- 上を向いて広角で撮影
- 中央に竹が集中するような構図にする
- HDR機能を利用する
- 露出補正で明るくする
建物
- 望遠で先端を切り取る
- 鳥などと一緒に写す
室内撮影
花
- 一輪なら余白を贅沢に使う
- 全部入れずに、茎の一部は画面外へ
- スタイリングボードを使うとバリエーションが増える
スイーツ
- ふっくらしたケーキは厚みがわかるように斜めか横から撮る
- 真上から撮るなら切り込みを入れる
- お皿やテーブルの色と同化しないように注意
- コーヒーやゼリーは手前に葉などを映り込ませてアクセントに
料理
- 一番良い光が当たる場所を把握しておく
- 少し離れ、ポートレートか望遠モードを使うと歪みにくい
- 食器の水平垂直に気をつける
- パーティー料理などは真上から全体をまっすぐ撮り、テーブルは斜めに入れる
湯気
- 逆光で撮影する
- 背景が暗くなるように位置を調整する
部屋
- 部屋の中でピックアップしたい主役を決める
- 目線の高さでスマホを構え、壁などで体を固定する
- 広角で角や正面から撮る
SNSにアップする本
- 真上から撮る
- 小物を控えめに映り込ませる
- 窓際の自然光で撮る
風
- 風で揺らぐカーテンを裾まで映して風を切り取る
- 上から見下ろして撮る
人物撮影
- 綺麗に撮るなら日陰か、手や帽子、日傘などで影を作る
- 手をかざす場合には上半身のみ撮る
- 背景がすっきりしているアングルを探す
- 広角で低いアングルから撮ると、美脚、小顔に撮れる
- 太陽は木などで半分くらい隠すと画面が白っぽくならない
- 全身を撮るなら足元も写るように、そうでないなら関節以外の部分で切る
- 少し離れて撮るとスタイルが良く見える
まとめ
シーン別のスマホ写真撮影のコツについて、詳しく解説された1冊だった。
本ブログで以前に紹介した、『たのしいカメラ学校の教科書 カメラ1年生 iPhone・スマホ写真編』や『もっときれいに撮れる!スマホで旅行写真コツと裏ワザ』は詳細な撮影知識に重きをおいている。
一方で、こちらは具体的なシーンごとに解説がされているため、撮りたいシーンに応じて辞書のような感覚で用いるのが有効だと思われる。
なお、書籍内では、コツを踏まえて実際に撮影した写真が豊富に掲載されているため、イメージを掴みたい方は手にとってみることをおすすめしたい。
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