たった5分でわかる『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』

2014年12月に初版、2020年10月に新訂版が発行された本。

著者の児島明日美氏、福田真弓氏、酒井明日子氏はそれぞれ司法書士、税理士・ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士で、お金や行政手続きなどの分野で活躍されている。

本書は、タイトルのとおり、親族など、身近な人がなくなった後に発生する各種手続について、代表的なものと、その手続方法についてまとめたものである。

ページ数は全体で約230ページ。
手続の種類ごとに章が分かれているため、各自が必要な部分を探しやすい構成となっている。

なお、本記事においては各種手続を、行う時期が早い順にまとめ、その中でも必須の手続の頭には「☆」をつけて示している。
また、手続の種類や内容については、本書執筆時点のものであり、制度改正などにより内容が変わりうるため、実際の手続の際には公的機関への問合せ等により、最新情報を確認されたい。

  1. すみやかに行う手続
    1. ☆死亡診断書・死体検案書の手配
    2. ☆葬儀・納骨の手配
    3. ☆相続人の確認
    4. 相続財産の確認
    5. 未支給年金・未支払給付金請求書の提出
    6. 中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算の確認
    7. 児童扶養手当請求書の提出
    8. 公共料金の解約・変更
    9. 免許証・カード等の返却
    10. ゴルフ会員権その他の相続手続
  2. できるだけすみやかに行う手続
    1. ☆遺言があるか探す
    2. ☆正確な相続人の特定
    3. 遺留分の確認
    4. ☆相続財産をどうするかの検討
    5. 遺産分割協議書の作成
    6. 遺産分割調停申立書の提出
    7. 金融機関での相続手続
    8. 有価証券の相続手続
    9. 生命保険の保険金受取
    10. 自動車の移転登録申請書の提出
    11. 不動産の所有権移転登記申請書の提出
    12. 団体信用生命保険に関する手続
    13. 不動産の評価額の計算
    14. 株式の評価額の確認
    15. 相続税の軽減・加算措置の確認
    16. 相続税の計算
  3. 5日(14日)以内に行う手続
    1. ☆健康保険の資格喪失手続
  4. 7日以内に行う手続
    1. ☆死亡届の提出
    2. ☆火葬許可申請書の提出
  5. 14日以内に行う手続
    1. 世帯主変更届(住民異動届)の提出
    2. 介護保険資格取得・異動・喪失届の提出
  6. 4ヶ月以内に行う手続
    1. 準確定申告書の提出
    2. 青色申告承認申請書の提出
  7. 10ヶ月以内に行う手続
    1. 小規模宅地等の特例の確認
    2. 相続税の申告書提出
    3. (納付書)領収済通知書による納税
  8. 2年以内に行う手続
    1. 葬祭費・埋葬料の申請
    2. 高額療養費支給申請書の提出
  9. 5年以内に行う手続
    1. 年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)の提出
  10. 適宜行う手続
    1. ☆住民票の写しの取得
    2. ☆印鑑登録証明書の取得
    3. 改葬
    4. 復氏届の提出
    5. 子の氏の変更許可申立書の提出
    6. 姻族関係終了届の提出
  11. その他
    1. 葬儀社の選び方
    2. 法定相続情報証明制度
    3. エンディングノート
    4. 生前贈与
    5. 生命保険のメリット
    6. 各種機関のウェブサイト
  12. まとめ

すみやかに行う手続

☆死亡診断書・死体検案書の手配

入手場所 市区町村役場窓口
手配先 医師(病気)または警察を介して監察医(事故など)
備考
  • 死亡届とセットの様式
  • 葬儀社が詳しいので、わからないことは聞くといい

☆葬儀・納骨の手配

ここではメジャーな仏式を前提とする。

葬儀・法要の流れ 臨終→遺体搬送→葬儀社との打ち合わせ→通夜→葬儀・告別式→納骨
連絡タイミング 危篤状態(家族・親族・親しい友人・関係者など)
亡くなった後(必要な人)
葬儀費用 平均的には、葬儀一式121.4万円、寺院費用47.3万円、飲食接待費用30.6万円
備考
  • 搬送前に退院手続、死亡診断書作成を済ませる
  • 火葬には火葬許可証が必要
  • 火葬後に火葬場から埋葬許可証を交付してもらう

☆相続人の確認

原則的な相続人と相続割合は法律で定められている。

子がいる場合 配偶者が1/2、子が全員で1/2を等分
子なし、親ありの場合 配偶者が2/3、親が1/3を等分
子と親なし、兄弟姉妹ありの場合 配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4を等分

なお、法律上の婚姻関係にない配偶者には法律上の相続権がないため、事実婚・内縁の場合には、遺言などのしかるべき対策を取っておく必要性が高い。

相続財産の確認

故人の自宅の金庫や引き出し、棚、仏壇や、貸金庫などを調査し、資料を集める。
手がかりとなるのは、通帳、カード、金融機関の粗品、権利証、登記簿謄本、売買契約書、納税通知書、株券、金融機関等からの郵便物、借用書、請求書、確定申告書の控えなど。

不動産があることがわかったら、地番や家屋番号を調べ、法務局で登記事項証明書を取得し、権利関係を確認する。
また、名寄帳を閲覧することで、同一市区町村内にある故人所有の不動産を確認することができる。

未支給年金・未支払給付金請求書の提出

年金受給者が亡くなった場合には、年金受給権者死亡届(未支給年金・未支払給付金請求書とセット)の提出が必要で、これが遅れて年金が支払われてしまうと、返還手続きが必要となる。
また、まだ支払われていない未支給年金がある場合には遺族が請求できる。

入手場所 年金事務所の窓口か日本年金機構のウェブサイト
提出先 最寄りの年金事務所か、年金相談センター
請求できる人 配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の3親等の順で、先順位の人がいない人
必要なもの 故人の年金証書、死亡の事実を証する書類、故人と請求者との身分関係を証する書類(住民票は不可)、故人の住民票(除票)と請求者の世帯全員の住民票等、受け取り希望の金融機関の通帳(コピー)など
備考 年金は年6回、偶数月の15日に前2ヶ月分が支払われ、死亡した月の分まで受け取れる

中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算の確認

厚生年金の被保険者であった夫が亡くなった場合、遺族厚生年金の支給要件には該当するが遺族基礎年金の支給要件には該当しない場合や、遺族基礎年金の給付が終了した妻に加算される給付があるので確認すべき。
(参考:中高齢寡婦加算経過的寡婦加算(日本年金機構HPより))

児童扶養手当請求書の提出

入手場所 市区町村役場窓口
提出先 住んでいる市区町村役場窓口
必要なもの 請求者と対象児童の戸籍謄本、世帯全員の住民票、請求者本人名義の通帳と印鑑、年金手帳、請求者のマイナンバー確認書類、請求者の身元確認書類など
備考 児童手当の支給には所得制限があるため要確認

公共料金の解約・変更

故人の口座が凍結されると、料金の自動引落としができなくなるため、余裕があれば早めにやっておいた方が良い。
対象は、電気・ガス・水道・NHK・携帯電話・インターネット・固定電話など多岐に渡るため、サービスセンターなどに確認をする。

免許証・カード等の返却

紛失や悪用のリスクを抑えるため、余裕があれば早めにやっておいた方が良い。

運転免許証 運転免許証と死亡の事実が確認できる書類を窓口へ持参
手続を行わなくても更新しなければその時点で自動的に失効する
パスポート パスポートと死亡の事実が確認できる書類をパスポートセンターに持参
パスポートの有効期限が切れている場合は死亡の確認書類は不要
クレジットカード カード会社に問合せ
マイナンバーカード 死亡届提出により自動的に失効のため返納の必要なし

ゴルフ会員権その他の相続手続

【ゴルフ場やリゾート会員権】
ゴルフ場やリゾートホテルまたはその管理会社に連絡して確認

【系譜・祭具・墳墓・香典】
慣習に従って、祖先の祭祀を主宰する者が承継する

【絵画・骨董品・宝石】
財産的な価値がある動産類は、遺産分割協議の対象

【死亡退職金】
就業規則等で受取人が指定されている場合は、受取人固有の財産と考えられるので、相続財産とはならない

【債務】
それぞれの相続人が法定相続分に従って承継するので、一部の相続人のみが引き継ぐようにするためには、債権者の同意を得て、免責的債務引受契約を行う必要がある

できるだけすみやかに行う手続

☆遺言があるか探す

遺言によって、認知、廃除・廃除の取消し、祭祀財産の承継者の指定、相続分の指定・指定の委託、遺産分割方法の指定・指定の委託、遺贈、遺言執行者の指定・指定の委託などが行えるため、各種手続の前に遺言があるか探す必要がある。

自宅や病院、入所施設などで保管していそうな場所、貸金庫などを捜索する。
公正証書遺言の形式で残していた場合は、最寄りの公証役場で遺言検索を行うことで確認が可能(昭和64年1月1日以降の作成分)
また、令和2年7月10日開始の「自筆証書遺言の保管制度」を利用していた場合は、所定の手続により、法務局内に保管された自筆証書遺言の有無を確認できる。

公正証書遺言や自筆証書遺言保管制度以外の場合には、家庭裁判所に遺言書を提出し、検認の手続をしなければならない(参考:裁判所ホームページ

☆正確な相続人の特定

故人の戸籍を取得し、正確な相続人を特定する必要がある。
戸籍が新しく作られる際、既に抹消された情報は新しい戸籍には基本的に記載されないため、故人の一生で作られた全ての戸籍をさかのぼって取得する必要があることに注意。

また、兄弟姉妹が相続人となる場合は、両親の戸籍もさかのぼって取得し、他に兄弟姉妹がいないことを証明する必要がある。

遺留分の確認

遺言によって相続割合に指定がある場合でも、兄弟姉妹以外の法定相続人には、一定割合を(遺言の内容に関わらず)相続できる権利が認められている。
ただし、義務ではなく権利なので、故人の意思を尊重したいなどの場合は遺留分を請求する必要はない。

遺留分を請求する場合には、遺留分を侵害している者に対して「遺留分侵害額請求書」を配達証明付内容証明郵便で送付する。
なお、相続開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈のあったことを知ったときから1年経過するか、相続開始から10年経過したときは遺留分侵害額請求が行えなくなるので注意。

☆相続財産をどうするかの検討

相続または放棄以外にも、プラスの相続財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という方法もある。

相続内容を確認し、負債のほうが資産よりも大きければ相続放棄や限定承認、そうでないなら相続のため、遺産分割協議や遺産分割調停を行うことになる。
ただし、限定承認は、共同相続人全員で、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に申述しなければならないので注意。

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があり、相続放棄をしていない者が1人でも協議に参加していない場合、無効となる。
行方不明者、未成年者、認知症となった者については、不在者財産管理人、親権者または特別代理人、成年後見人などが代わりに協議に参加する。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書には、誰が何をどのように取得するかについて、明確に記載を行い、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する。
協議書が2枚になる場合には、契印も必要。

協議を行う際には、相続人間の衡平をはかるため、「寄与分」や「特別受益」といった制度があるので予め確認しておくと良い。

遺産分割調停申立書の提出

遺産分割協議がまとまらない際には、遺産分割調停を行うことになる。

入手場所 裁判所の窓口かウェブサイト
提出先 相手方のうちの1人の住所地の家庭裁判所など
提出できる人 相続人、包括受遺者など
必要なもの 相続関係を証する戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本一式、相続人全員の住民票または戸籍の附票、遺産に関する証明書など
手数料 収入印紙1,200円、連絡用郵便切手

金融機関での相続手続

  1. 相続発生の事実を電話などで伝え、口座を凍結する
  2. 1と同時に、必要な手続や書類・郵送や最寄りの支店で手続可能か・戸籍などの書類の原本を返却してもらえるか・書類の有効期限・認証分のついた法定相続情報一覧図の写しを利用できるかなどに関して確認を行う
  3. 金融機関窓口で入手した、残高証明の開示・照会請求書に、被相続人の死亡及び請求者が相続人であることが確認できる戸籍謄本などを添え、窓口に提出する
  4. 金融機関所定の届出用紙を受け取っておく
  5. 金融機関に求められた書類の収集を行う
  6. 必要書類を提出する

複数の金融機関と取引をしていた場合は、最初に全ての機関に問合せをしてから書類収集などに取り掛かるのがおすすめ。

有価証券の相続手続

  1. 証券会社に電話などで連絡をして、相続に関しての資料の請求と必要な手続の確認を行う
  2. 相続人名義の口座の準備・開設を行う(株式を売却する場合でもいったん開設する必要がある)
  3. 必要書類を提出し、名義変更手続を完了させる

なお、証券会社を通していない場合や、自社株を保有していた場合には、会社に問合せを行う。

生命保険の保険金受取

  1. 被保険者が死亡した旨を保険会社に連絡する
  2. 保険の契約内容と、必要な手続・書類や相続人全員が関与する必要があるかどうかなどについて確認する
  3. 必要書類を提出する

自動車の移転登録申請書の提出

相続人を決めた後(共同名義も可能)、移転登録申請を行う。

入手場所 陸運局の窓口か、国土交通省のウェブサイト
提出先 管轄の陸運局
提出できる人 相続人など
手数料 500円(ナンバーの変更がない場合)

原付は市区町村役場、小型二輪は陸運局で廃車手続を行ってから、相続人の名義での登録手続を行う。

不動産の所有権移転登記申請書の提出

入手場所 法務局のウェブサイト
提出先 不動産の所在地の管轄の法務局
提出できる人 相続人など
必要なもの
  • 遺産分割協議による場合には、遺産分割証明書、印鑑証明書、戸籍謄本など、不動産を取得する者の住民票の写し、固定資産評価証明書(市区町村役場にて取得)が必要
  • 遺言による場合には、遺言書、戸籍謄本など、不動産を取得する者の住民票の写し、固定資産評価証明書が必要
費用 課税価格の0.4%(登録免許税)
備考

相関関係説明図を併せて提出すると、提出した戸籍・除籍・改製原戸籍謄本の原本を還付してもらうことができる

団体信用生命保険に関する手続

団体信用生命保険(団信)に加入した者が亡くなった場合には、住宅ローンが完済扱いになる。

  1. 金融機関に連絡し、抵当権抹消登記に必要な書類一式(解除証書、登記済証または登記識別情報通知、委任状、会社法人等番号が確認できるものなど)を受領する
  2. 所有権移転登記を行う
  3. 必要書類(登記原因証明情報(解除証書、弁済証書など)、登記済証または登記識別情報、代理権限証明情報(委任状など)、会社法人等番号)を添えて抵当権抹消登記を行う(2と併せて法務局へ申請可能)

不動産の評価額の計算

  • 宅地
    路線価に面積をかけて評価する「路線価方式」と、固定資産税評価額(固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書に記載)に倍率をかけて評価する「倍率方式」がある(路線価と倍率は国税庁サイトを参照)
    なお、マンションは敷地全体の評価額に持分割合(建物の登記事項証明書に「敷地権の割合」として記載)をかけて求める
  • 農地、山林
    通常は倍率方式だが、市街地の農地などは宅地比準方式で評価する
  • 雑種地(駐車場など)
    近傍地の1平米あたりの価額に補正をし、面積をかけて求める
  • 建物
    固定資産税評価額をそのまま相続税でも用いる

株式の評価額の確認

上場株式については、原則として死亡日の最終価格(休日の場合は前後で直近の日の最終価格)によって評価するが、価格変動の大きさを考慮して、「亡くなった月」「その前月」「その前々月」の「1ヶ月分の毎日の最終価格の平均額」のうち、もっとも低い価格を使っても良いことになっている。

非上場株式については、相続人が同族株主なら原則的評価方式、その他の株主なら特例的評価方式(配当還元方式)で評価する(参照:国税庁サイト

相続税の軽減・加算措置の確認

相続税には課税価格の減額や税額控除、加算といった特例がある。
適用には要件があるので要確認。

【配偶者の税額軽減】
配偶者は、1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い金額までの財産額は非課税

【小規模宅地等の特例】
故人が自宅や事業に使っていた土地は、一定の面積まで課税価格が8割または5割減額

【贈与税額控除】
故人から相続開始前3年以内に受けた生前贈与に関して納めた贈与税は、相続税から差し引ける

【未成年者控除・障害者控除】
相続人が20歳(令和4年4月1日以降は18歳)未満の未成年者や障害者の場合には、一定の金額を相続税から(超過分は扶養義務者の相続税から)差し引ける

【相次相続控除】
10年以内に2回以上の相続があった場合には、1回目の相続税の一部を、2回目の相続税から差し引ける

【相続税額の2割加算】
遺言書により、配偶者・子ども・親以外の人が財産をもらった場合(孫を養子にして相続させた場合も含む)、相続税が2割増しになる

相続税の計算

  1. 故人の財産の評価
  2. 財産の評価額=相続財産+みなし相続財産+生前贈与財産の一部
  3. 評価額の合計から、マイナス分(小規模宅地等の特例、債務・葬式費用、非課税財産、寄付金等)を差し引いて、課税価格の合計額を求める
  4. 課税価格の合計額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を引いた残りが課税遺産総額となる
  5. 課税遺産総額を(実際の相続に関わらず)法定相続分で分けたと仮定し、各相続人の仮の相続額を求める
  6. 5で求めた金額を元に、下の表から各相続人の仮の相続税額を求める
  7. 6で求めた額を合計し、相続税の総額を求める
  8. 実際に相続した財産の割合で相続税の総額を按分する
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

5日(14日)以内に行う手続

☆健康保険の資格喪失手続

  会社員 自営業など
提出物 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 国民健康保険資格喪失届(自営業)
後期高齢者医療資格喪失届(75歳以上)
提出する人 家族等 世帯主等
提出先 年金事務所だが、まずは会社の担当者に確認 故人が住んでいた市区町村役場窓口
返却物 健康保険証(基本は会社を経由して返却)
  • 国民健康保険被保険者証(世帯主死亡の場合は世帯全員分)
  • 国民健康保険高齢受給者証
  • 後期高齢者医療被保険者証
必要なもの 死亡退職手続(担当者に確認) 死亡証明書類・マイナンバーカード等・印鑑など(担当窓口に確認)
期限 5日以内 14日以内

7日以内に行う手続

☆死亡届の提出

入手場所 市区町村役場窓口
提出先 故人の死亡地、本籍地等の市区町村役場窓口
提出できる人 親族、同居者、家主、地主、後見人など
必要なもの 死亡診断書または死体検案書、印鑑
手数料 無料
備考 火葬許可申請書と同時に提出する

☆火葬許可申請書の提出

入手場所 市区町村役場窓口
提出先 死亡届提出先と同じ市区町村役場窓口
提出できる人 死亡届を提出する人など
必要なもの 死亡届、印鑑、申請書
手数料 所定の火葬料
備考 死亡届と同時に提出する

14日以内に行う手続

世帯主変更届(住民異動届)の提出

入手場所 市区町村役場窓口
提出先 故人が住んでいた市区町村役場窓口
届出人 新世帯主・同一世帯の人または代理人
必要なもの 届出書・国民健康保険被保険者証(該当者のみ)・本人確認資料・委任状(代理人の場合)・印鑑など
備考
  • 新しい世帯主が明白な場合(夫が死亡し、妻と幼い子が残された場合など)には届出不要
  • 完了したら住民票の写しを取得して確認するのがおすすめ

介護保険資格取得・異動・喪失届の提出

必要な場合 故人が65歳以上、または40歳以上65歳未満で要介護認定を受けていた場合
入手場所 市区町村役場窓口(自治体によってはダウンロード可)
提出先 故人が住んでいた市区町村役場窓口
返却物 介護保険被保険者証・介護保険負担限度額認定証(対象者のみ)
備考 自治体によっては、死亡を証する書面・納付書や督促状(未納があった場合)・相続人の印鑑や預金通帳が必要な場合もある

4ヶ月以内に行う手続

準確定申告書の提出

確定申告が必要な人が亡くなった場合、準確定申告を行う必要がある。
代表的ケースは以下のとおり。

  • 個人事業主や不動産賃貸を行っていた人
  • 公的年金の受給(例外あり)や多額の医療費の支払いがあった人
  • 2ヶ所以上から給料をもらっていた人
  • 給与や退職金以外の所得がある人
入手場所 税務署の窓口か国税庁のウェブサイト
提出先 故人の納税地の所轄税務署か電子申告(令和2年分以後)
提出する人 相続人や包括受遺者
提出書類 確定申告書の第1表・第2表・付表、提出者の本人確認書類の写し
必要書類 年金や給与の源泉徴収票、医療費の領収証など

青色申告承認申請書の提出

入手場所 税務署の窓口か国税庁のウェブサイト
提出先 相続人の納税地(住所地)の管轄税務署かe-Tax
提出する人 故人から事業を引き継いだ人
期限 死亡日によって異なり、1/1~8/31なら4ヶ月以内、9/1~10/31ならその年の12/31まで、11/1~12/31なら翌年の2/15まで
手数料 無料
備考 必須ではないが、青色申告には税金面で有利な特典が多い

10ヶ月以内に行う手続

小規模宅地等の特例の確認

「小規模宅地等の特例」とは、簡単に言うと、故人が住居や事業、賃貸用として所有していた小規模な土地を相続する際、要件を満たしていれば土地の課税価格が減額される制度(参考:国税庁サイト

ただし、要件を満たす人が相続したときにしか、本特例は使えないため、相続税の申告書を提出するまでに、誰がその土地を相続するのか決めなくてはならない。
相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内であることから、本項目を「10ヶ月以内に行う手続」としてカテゴライズしているが、期限ギリギリに申告するのでない限りは、土地の相続人はもっと早めに決めなくてはならないということになる。

相続税の申告書提出

入手場所 税務署の窓口か、国税庁のウェブサイト
提出先

被相続人の住所地の管轄税務署、電子申告(令和元年分以降)

提出義務者 被相続人から相続または遺贈により財産をもらった人
備考
  • 各種軽減措置適用により納める必要がなくなる人も申告書を提出しないと適用を受けられない
  • 申告義務のある人の全員が共同で1通を作成し、記名押印して提出する

(納付書)領収済通知書による納税

入手場所 税務署
納税場所 被相続人の住所地の所轄税務署または最寄りの金融機関の窓口
納税義務者 相続または遺贈により財産をもらった人、相続時精算課税制度などにより生前贈与で財産をもらった人
備考
  • 原則、現金で納めるが、クレジットカード払いもある
  • 例外的に、分割払いの延納や、物で支払う物納が認められることもある

2年以内に行う手続

葬祭費・埋葬料の申請

故人が国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入していた場合は、3~5万円程度の葬祭費が支給される。

申請書入手場所 市区町村役場窓口
提出先 故人が住んでいた市区町村役場窓口
提出できる人 喪主等
必要なもの 葬儀にかかった領収証、印鑑など
手数料 無料

会社員等で健康保険に加入していた場合は、最大5万円の埋葬費(被保険者の家族が亡くなった場合は家族埋葬料)が支給される。

申請書入手場所 故人が加入していた健康保険組合または協会けんぽ
提出先 故人の勤務先の管轄協会けんぽ(年金事務所)または健康保険組合
提出できる人 埋葬を行った人など
必要なもの 埋葬にかかった領収証、印鑑、委任状(代理申請の場合)など
備考 会社が手続する場合もあるので要確認

なお、葬祭費も埋葬料も2年で時効が来るので注意。

高額療養費支給申請書の提出

高額療養費制度は、本人の死亡後に請求することもできる。

入手場所 窓口か自治体や健康保険組合のウェブサイト
提出先 住んでいる市区町村役場窓口(国民健康保険・後期高齢者医療の場合)
協会けんぽまたは健康保険組合(サラリーマンの場合)
必要なもの 領収証・故人との続柄がわかる戸籍謄本など

5年以内に行う手続

年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)の提出

入手場所 年金事務所の窓口か日本年金機構のウェブサイト
請求先 住んでいる市区町村役場窓口(遺族基礎年金のみ該当の場合)か、最寄りの年金事務所
必要なもの

故人と請求者の年金手帳・年金証書・恩給証書・戸籍謄本(全部事項証明書)(死亡日以降のもの)と、請求者の健康保険証、世帯全員の住民票の写し、故人の住民票の除票、死亡診断書のコピー、請求者の収入が確認できる書類、在学証明書または学生証等、請求人の預金通帳と印鑑など

請求できる人 給付対象(※)の遺族
備考 年金は1人1年金が原則なので、遺族年金と他の年金の併給ができないケースがある(例外もある)

※給付対象要件は複雑なのでよく確認すべき(参考:日本年金機構

また、遺族基礎年金がもらえない場合でも寡婦年金死亡一時金のどちらかを選択して受給できる場合がある。

適宜行う手続

☆住民票の写しの取得

申請書入手場所 市区町村役場窓口かウェブサイト
取得場所 住民登録している市区町村役場(郵送可)
申請できる人 本人、同一世帯の人・代理人(要委任状)
費用 市区町村によって異なる
必要なもの 身分証明書、定額小為替と切手を貼った返信用封筒(郵送の場合)、委任状(代理の場合)など
備考 マイナンバーカード(住基カード)があれば、対象のコンビニの端末で取得できる

☆印鑑登録証明書の取得

申請書入手場所 市区町村役場窓口
取得場所 印鑑登録している市区町村役場(郵送不可)
申請できる人 本人・代理人(本人の印鑑カードが必要)
費用 市区町村によって異なる
必要なもの 印鑑カード(これがあれば代理の場合でも委任状不要)

改葬

改葬とはお墓の場所を写す手続で、流れは以下のとおり。

  1. 新しい墓地を用意し、管理者から受入証明書(墓地の使用許可証)を交付してもらう
  2. 現在のお墓がある市区町村役場で改葬許可申請書を受け取り、現在のお墓の管理者から埋蔵証明書に記名押印をもらう
  3. 現在のお墓がある市区町村役場に改葬許可申請書を提出し、改葬許可書を交付してもらう
  4. 改葬許可書を新しい墓地の管理者に提出し、納骨を行う

もし、現在のお墓の管理者から、到底納得できない高額な請求を受けたりしたら、弁護士や市区町村役場の消費生活センター等の相談窓口に相談する。

復氏届の提出

入手場所 市区町村役場窓口
提出先 残された配偶者の本籍地または住所地の市区町村役場窓口
必要なもの 戸籍謄本(本籍地への届出の場合は不要)、婚姻前の戸籍謄本、印鑑など
備考 外国人と結婚していた場合は、亡くなった日の翌日から3ヶ月を経過してしまうと、届出に家庭裁判所の許可が必要となるので注意

子の氏の変更許可申立書の提出

入手場所 裁判所の窓口かウェブサイト
提出先 子の住所地の家庭裁判所
申立人 子(15歳未満の場合は法定代理人)
費用 800円の収入印紙、連絡用の郵便切手
必要なもの 子の戸籍謄本、父母の戸籍謄本など

姻族関係終了届の提出

入手場所 市区町村役場窓口
提出先 届出人の本籍地、住所地等の市区町村役場窓口
届出する人 残された配偶者
必要なもの 故人の死亡事項の記載がある戸籍(除籍)謄本、印鑑など
備考 子と故人の親族との関係は継続する

その他

葬儀社の選び方

限られた時間の中で判断することになるため、悪徳業者に引っかからないように注意。
方法としては、資料や見積書を各社から取り寄せ、セットプランに含まれるもの/含まれないものなどを比較するのが有効。

最低限、以下のことには注意する。

  • 見積書を提示し、細かに説明してくれるか
  • 質問に丁寧に答えてくれるか
  • 不要なオプションやサービスの押し付けがないか
  • 地元の方などの評判が良いか
  • 小規模な葬儀を希望しても丁寧に対応してくれるか

法定相続情報証明制度

平成29年5月29日から始まった制度で、これを利用すると、各種手続窓口で戸籍関係の書類一式を都度提出せずとも、認証文のついた法定相続情報一覧図の写しの提出をもって替えられるようになる。

申立書入手場所 法務局の窓口かウェブサイト
申出できる法務局 被相続人の本籍地・被相続人の最後の住所地・申出人の住所地・被相続人名義の不動産の所在地
申出できる人 相続人、資格者代理人(弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士)、委任を受けた親族
必要なもの 法定相続情報一覧図、相続関係を証する戸籍関係の書類一式、被相続人の住民票の除票、申出人の本人確認書類、返信用封筒(郵送手続の場合)など
費用 無料

エンディングノート

自分の身に万が一のことがあった場合に、家族や大切な人に伝えたいことを書いておくのがエンディングノート。
様式に決まりはないので、市販のノートを使っても良いし、データとして残しても問題はない。

書く内容も自由だが、一般的に次のような情報を書いておくと役に立つ。

個人的な情報 財産(資産、負債)、契約、重要書類の保管場所、デジタル遺品など
老後の備え 持病、かかりつけの病院、緊急連絡先、老後の生活についての希望
死後の備え 葬儀の希望、伝えたい思いなど

生前贈与

生前贈与を上手く利用することで税金の負担を軽くできる場合がある。
ただし、きちんと贈与の証拠(贈与した人ともらった人の署名捺印がある贈与契約書)がないと、税務署は贈与があったという事実を認めてくれないので、必ず作成する。

贈与税の計算方法は2通りあるが、併用はできないので注意。

  • 暦年課税制度
    もらう人ごとに毎年110万円の非課税枠があり、それを超えた場合には翌年3月15日までに申告書を税務署に提出し、贈与税を納める。
  • 相続時精算課税制度
    同じ「贈与する人・もらう人」間で、一生涯2,500万円の特別控除額を定め、それを超えたら20%の贈与税がかかる。特別控除額の分は贈与した人が亡くなったときに相続税がかかるが、贈与したときの財産の評価額で計算するため、時が経つにつれて価値が上がるような財産を贈与する場合に有効。

贈与税の申告書の提出方法は以下のとおり。

入手場所 税務署の窓口か、国税庁のウェブサイト
提出先 受贈者の住所地の所轄税務署か電子申告
提出期限 贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
提出義務者 受贈者

生命保険のメリット

生命保険には相続時に役立つメリットがある。

  1. 死亡保険金として受け取るお金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある
  2. 口座が凍結されてしまう預金と異なり、すぐに現金が手に入る
  3. 非課税枠を超える死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の対象にはなるものの、法律上は受取人の財産なので、遺産分割の対象にならない(故人が残したい人に多く財産を残せる)

ただし契約者、被保険者、受取人の組み合わせによっては、相続税ではなく、所得税や贈与税がかかる場合があるので生命保険会社に要確認。

各種機関のウェブサイト

各自治体 自治体ごとに異なるので検索
各金融機関 金融機関ごとに異なるので検索
日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/
法務省 http://www.moj.go.jp/
法務局 http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/index.html
国税庁 https://www.nta.go.jp/
裁判所 https://www.courts.go.jp/index.html
日本公証人連合会 https://www.koshonin.gr.jp/
登記情報提供サービス https://www1.touki.or.jp/

まとめ

ほぼ100%の人に関係するにも関わらず、学校では教えてくれない相続について、わかりやすく解説している非常に有用な1冊であった。

細かい制度については改正があるため、最新情報の確認が必要ではあるが、本書を持っておくことで、相続のおおまかな流れを抑えることができるだろう。
本記事では割愛しているが、申請書などの書き方について、図が掲載されているものが多いため、よりわかりやすい解説を求める方には手にとってみることをおすすめしたい。

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