ワインは自分流が楽しい

『ワインは自分流が楽しい』の表紙画像 読書

2000年9月に初版が発行された本。

著者の田崎真也氏は、日本を代表するソムリエの1人で、世界最優秀ソムリエコンクールで日本人として初の優勝を果たした経歴を持つ。

本書は、1996年10月に刊行された『ソムリエを楽しむ』を、改題、改筆、再編集したものであり、著者の半生や思考について、ワインに関する知識を織り交ぜながら記している。

ページ数はあとがきまで含めて240ページ弱あるが、文庫本サイズであり、自伝的な内容がメインのため、ストレスなく読めるボリューム感となっている。

なお、書籍の特性と本ブログの趣旨を踏まえ、本記事においては、随所に散りばめられた知識のまとめをメインに行うこととする。

著者経歴

  • 1958年3月、東京出身
  • 中学生の頃、「赤玉ポートワイン」で初めてワインと出会う
  • 高校・海員学校の中退、割烹の見習いを経て勤務したレストランでウエイターの仕事に魅力を感じる
  • 三鷹のレストラン勤務で、サービスの面白さと、自分が勧めたワインを飲んでもらう喜びを知る
  • 1977年頃、六本木の「イゾルデ」というフランス料理店でソムリエとして働く
  • 1977年9月、初めてフランスを訪問し、ブルゴーニュに1ヶ月、ボルドーに2ヶ月滞在する
  • 1978年6月、再び渡仏し、ボルドーで生活する
  • 1979年、軍資金が底を尽きかけたため、パリに出て日本料理店で働く
  • 「アカデミー・デュ・ヴァン」というワインの学校に通い始める
  • パリのフランス料理店で、カーヴ(ワインセラー)を任される
  • 1980年、日本に戻り、銀座のレストランで給仕長として働く
  • 1981年、第二回全国最優秀ソムリエ・コンクールに出場し、準決勝進出
  • 1983年頃、六本木の日本料理店で働く
  • 1983年、25歳にして第三回全国最優秀ソムリエ・コンクールで優勝
  • 1987年、「ホテル西洋銀座」で初めて専任のソムリエとして働く
  • 1990年、第三回パリ国際ソムリエ・コンクールで準優勝
  • 1995年、第八回世界最優秀ソムリエ・コンクールで日本人として初めて優勝

ワインはグローバルに見る

ワインをより深く理解したいなら、人間が後から作った国境でワインを分類するよりも、緯度や気候をグローバルに見て考えた方が正確な違いや共通点がわかるようになる。

ワインの特性は、基本的に、原料であるブドウの特性がそのまま反映される。
そして、ブドウの特性にはブドウが育つ土地の気候が大いに影響する。
したがって、ワインの特性は、土地の気候との関係性が深い。

例えば冷涼な地域では、酸味が重要となる白ワイン造りが適していることが多いし、温暖で雨の少ない地域では、酸味が少なく、渋味が多く、果皮の色素が濃いのが良いとされる赤ワイン造りが盛んだったりする。
実際、フランスでも北に行くほど白ワインを造る比率が、南に行くほど赤ワインを造る比率が高くなる。

このように、緯度や年間平均気温、それ以外にも標高や海流の影響など様々な気候や風土の影響を考えることでワインをより深く理解できるようになる。

レストランでのワインのスマートな頼み方

まず、緊張する必要はない。
大抵の人はワインリストを見せられても、どんな味か、どんな料理と合うかなどはわからないし、わからないからこそソムリエがいる。

一番正統なやり方としては、高級レストランではソムリエの「お任せ」にすること。

価格については、1人前の料理単価の70~80%の値段のボトルを選ぶのがおすすめ(例:1万円のコースなら1本7,000~8,000円のワイン)
リストを見ながら上記の価格帯のあたりを指し、「これくらいの感じで何かおすすめを」とソムリエに言えばいい。
この際、赤か白かについては同伴者の好みを聞いておき、ソムリエに伝える。

5,6人で行った場合など、複数本飲むときには、あらかじめ本数についても告げておくと、料理の流れに応じて適切なワインを持ってきてもらうことができる。

また、接待やデートなど、同行者の目の前で上記のようなことを言いにくい場合には、予約時あるいは当日少し早めにお店に行き、予算等まで含めて相談をしておくと良い。
直前に訪問する場合には、ゲストが来る前に支払いを済ませておけば、ゲストから「スマートな人」だと思われるかもしれない。

フランスの地方料理とワイン

星つきのレストランに行くと、完成度の高い料理と、これまた完成度の高いワインを味わうことはできるが、そういった店では料理とワイン、各々のクオリティが高いため、どちらかにしか気が回らない、なんてことも多い。

それよりもむしろ、庶民的なお店で素朴な料理とワインを味わう方が、フランス料理とワインの相性というものを実感できると筆者は言う。

フランスの地方料理とワインの相性例

料理名 ワイン原産地 ワイン名
豚のリエット ロワール地方 ヴヴレイ(白)
コトー・デュ・レイヨン(甘口の白)
鰻のマトロート(赤ワイン煮) ロワール地方 シノン(赤)
ブルグイユ(赤)
ブロッシェまたはサンドルの白バターソース(川かます類の大きな白身の川魚) ロワール地方 ミュスカデ(白)
サヴニエール(白)
ヴヴレイ(白)
乳飲み仔羊のロースト ボルドー地方 ポイヤック(赤)
八つ目鰻のマトロート ボルドー地方 サンテミリオン(赤)
セープ茸のガーリック・バター焼き ボルドー地方 グラーヴ(赤)
鴨のコンフィ(脂漬け) 南西フランス・ランド地方 カオール(赤)
マディラン(赤)
フォアグラのテリーヌ(ランド産) 南西フランス・ランド地方
ボルドー地方
ジュランソン(甘口の白)
パシュラン・デュ・ヴィク・ビル(甘口の白)
ソーテルヌ(甘口の白)
カスレ(白いんげん豆の煮込み) ラングドック地方 コルビエール(赤・ロゼ)
トリップ(牛胃)の煮込み ラングドック地方 ミネルヴォワ(赤・ロゼ)
干し鱈のブランダード ラングドック地方 コスティエール・ドゥ・ニーム(白)
ブイヤベース プロヴァンス地方 カシス(白)
ジゴ・ダニョーのロースト(羊もも肉) プロヴァンス地方
ローヌ地方南部
バンドール(赤)
シャトーヌフ・デュ・パープ(赤)
鹿肉のステーキ ローヌ地方北部 コート・ロティ(赤)
エルミタージュ(赤)
豚肉料理(豚足や腸詰) ブルゴーニュ地方 ボージョレ(赤)
コック・オ・ヴァン(鶏の赤ワイン煮) ブルゴーニュ地方 ブルゴーニュ(赤)中でも上質のもの
ブッフ・ブルギニョンヌ(牛肉の赤ワイン煮) ブルゴーニュ地方 ブルゴーニュ(赤)中でも上質のもの
ジャンボン・ペルシエ(ハムのゼリー寄せ・パセリ風味) ブルゴーニュ地方 マコン(白)
卵のムーレット(ポーチドエッグの赤ワイン煮) ブルゴーニュ地方 ブルゴーニュ(赤)軽めのもの
シュークルート(ソーセージとキャベツの酢漬け) アルザス地方 シルヴァネール(白)
キッシュ・ロレーヌ アルザス地方 リースリング(白)
フォワグラのテリーヌ(ストラスブール産) アルザス地方 ゲヴェルツトラミネール(白)
ヴァンダンジュ・タルディヴ(遅摘み)

テイスティング用語の一例

ワインの香りで良く使われる表現に「アロマ」や「ブーケ」という言葉がある。
「アロマ」はブドウ本来の香り(第一アロマ)や、ブドウからワインに変わる時点で生じる香り(第二アロマ)で、「ブーケ」は樽やボトルの中での熟成中や、開栓後にグラスに注がれて口に入るまでの間に生まれる香りのことを指す。

通常、アロマには、果実、花、ハーブ、スパイスなどの香りを感じ、ブーケには、きのこ、枯れ葉、土などの香りを感じる。

主にアロマを表す表現

果物(白ワイン) レモン、ライム、グレープフルーツ、青リンゴ、ゴールデン・デリシャス、カリン、洋梨、ピーチ(白桃・黄桃)、あんず、パイナップル、マンゴー、パッションフルーツ
果物(赤ワイン) ラズベリー、いちご、レッドカラント、カシス、ブルーベリー、ブラックベリー、チェリー、プラム
ライラック、ゆり、白ばら、赤ばら、アカシア、菩提樹、オレンジの花、ジャスミン
ハーブ(主に白ワイン) ミント、レモングラス、バジリコ、タイム、ローズマリー、カシスの芽、エストラゴン、セルフイユ
スパイス(主に赤ワイン) 白胡椒、黒胡椒、クローブ(丁字)、甘草、シナモン、ユーカリ

主にブーケを表す表現

枯れ葉、腐葉土、たばこ、葉巻、紅茶
カビ 黒カビ
きのこ 黒トリュフ、シャンピニョン・ド・パリ(マッシュルーム)
動物 なめし革、濡れた犬の毛、ジビエ(野禽獣)、赤身の肉、ムスク(麝香)、糞
ミネラル 石灰、鉄、さび、鋼

その他

キャンディ、ジャム、ドライフルーツ、藁、ほこり、インク、白木、松やに、ヨード、マッチ、ゆで卵の黄身、ジンジャーブレッド、パン、イースト、バニラ、芝生、ナッツ類(くるみ、アーモンド、ヘーゼルナッツなど)、バター、チーズ、生クリーム、アーモンドミルク

ワインとチーズ

ひとえに「チーズ」と言っても、様々なタイプがあるため、合うワインというのは異なる。

一般的な傾向として、ヴィンテージが古いワインは、チーズの味によってバランスを崩してしまうことがあるので、チーズと合わせるなら渋味がしっかりした赤ワインや、酸味がフレッシュな白ワインといった、若いワインが良い。

具体的には、シェーブルのようなチーズは白ワイン、カマンベールのようなチーズには比較的なめらかで渋みの強くない赤ワイン、ウォッシュタイプには力強い赤ワイン、ブルーチーズにはポートワインや貴腐ワインといった定石がある。
ただし、最終的には個人の好みが大切なので、自分が合うと感じる組み合わせを選ぶのが一番である。

また、「チーズとワインは相性が良い」というイメージが定着しているが、実際のところ、チーズに含まれた塩味とクリーム質とアミノ酸の味を本当に引き立てるなら、ワインよりも日本酒のほうが相性が良いと思う面が多い。

チーズとワインの組み合わせの一例

ワイン   チーズ
ロワールの爽やかな白 サンセール
プイイ・フュメ
シェーブル
ロワールの赤 シノン シェーブル
  ブルグイユ ブリー・ドゥ・モー
サン・ネクテール
ボルドーの上質辛口白 グラーヴ コンテ
  ペサック・レオニャン サン・ネクテール
ボルドーの甘口白 バルザック ロックフォール
  ソーテルヌ フルム・ダンベール
ボルドーの赤 若いワイン ポン・レヴェック
リヴァロ
ルブロション
  熟成したワイン サン・ネクテール
カマンベール
ブリー・ドゥ・モー
ヴァシュラン・モン・ドール
ブルゴーニュの白   ブリヤ・サヴァラン
エクスプロラトゥール
モンラシェ
シャウルス
ブルゴーニュの赤   ヴァシュラン・モン・ドール
カマンベール
ルブロション
シトー
エポワス
ポン・レヴェック
ラミ・ドゥ・シャンベルタン
コート・デュ・ローヌの赤 コート・ロティ サン・マルスラン(熟成タイプ)
  エルミタージュ エポワス
  シャトーヌフ・デュ・パープ ブルー・ドーヴェルニュ
フルム・ダンベール
ヴァシュラン・モン・ドール

まとめ

著者の経歴をたどりながら、随所にワインや料理に関する知識が散りばめられた一冊だった。

ワインやチーズについて、初心者が単純に知識を身に着けたいのであれば、以前にご紹介した『図解ワイン一年生』や『図解 いちばんわかりやすいワインの基本』、『図解ワイン一年生 2時間目 チーズの授業』の方が適していると思われる。

ただし、世界一にもなったソムリエの生き様が書かれているという点で、本書は他の書籍とは一線を画しており、ある意味で全く違ったジャンルの書籍と言えるだろう。

冒頭でも触れたとおり、本書は著者の自伝的な内容がメインとなっているため、そのあたりが気になる方は手にとってみることをおすすめしたい。

 

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