2015年12月に初版が発行された本。
著者の小久保尊氏は、日本ソムリエ協会認定ソムリエとして活躍する傍ら、シェフとして自らの飲食店を経営している。
本書は、「飲まないわけではないけどワインのことはよくわからない」人に向けて書かれた、「ワインのことがなんとなくわかった気になる」ワイン入門書である。
ページ数はあとがきまで含めて280ページ弱。
初心者でもスムーズに理解できるように、味や香り、特徴などをあえて極端に表現し、イラストも交えてわかりやすく記した、入門書としてかなり手に取りやすい一冊となっている。
そもそもワインの「おいしい」とは
おそらく初心者が皆抱いている疑問だが、ワインは嗜好品であるがゆえ「おいしい」や「まずい」は個人の好き嫌いに大きく左右されるというのが実際のところ。
ただ、もしもワインの「おいしい」を定義するのであれば、バランスがいいワイン(酸味や甘み、果実味などが過剰に出ていたり出ていなかったりしないワイン)ということになる。
また、一口に「おいしい」といっても、「おいしい」には段階がある。
例えば、子供の頃にはハンバーグやグラタンのような「わかりやすくおいしいもの」が好まれていたのに対し、大人になるとあん肝しめ鯖のような「わかりにくくおいしいもの」が好まれるようになるのと同じで、ワインも舌の経験値によっておいしいと感じる銘柄は変化していく。
そのため、はじめから無理して高いワイン(わかりにくくおいしいワイン)を買おうとせずに、ジュース的においしいワイン(わかりやすくおいしいワイン)から飲み始めるのがおすすめである。
繰り返しになるが、「おいしい」は個人の感覚であり、そこに優劣などは存在しない。
準備
道具
家でワインを飲むための準備としてはスクリュープルやフォイルカッター、ワインキーパーなどがあるが、それよりもまず優先すべきものがある。
それはワイングラス。
グラスがちゃんとしているだけで、+1,000~2,000円程度のワインの味に変わる。
筆者がおすすめしているのが、
- でかい(鼻の根っこまでグラスの内側にすっぽり入るくらい)
- うすはり
のグラス。
もちろんそれぞれのワインの特性を活かしてくれるような専用の高級グラスがあるに越したことはないが、いいワイングラスはそれなりにか弱く、すぐに割れてしまったりするため、最初のうちは高級グラスにこだわる必要はないだろう。
価格
価格が高いからといって絶対においしいというわけではないが、おいしいワインに当たる確率はシンプルに価格に比例する。
高いワインは優れた産地のぶどうを使っていたり、同じ産地でもさらに良質なぶどうのみを選別するのに手間をかけていたりするためである。
価格帯の目安は次の表のとおり
~1,000円 | プチプラワイン |
1,000~2,000円 | デイリーワイン |
2,000~5,000円 | ちょっと贅沢ワイン |
5,000~30,000円 | 高級ワイン |
30,000円~ | 超高級ワイン |
「わかりやすくおいしいワイン(先述)」ではデイリーワインでも当たりのものがある。
しかし、「わかりにくくおいしいワイン」を求めるのであれば、「ちょっと贅沢ワイン」以上のカテゴリー以上から選びたいし、特に複雑で繊細なフランスワインは、最低3,000円以上出さないとハズレが多い印象がある。
まずは自分ならではの基準で「わかりやすくおいしいワイン」を選べるようになることを目標に「デイリーワイン」カテゴリを攻めるのが良いだろう。
ちなみに、上記のお値段はショップの価格。
レストランやバーで出されるボトルはだいたいワインショップの3倍だと言われている(一律でプラスいくらというお店もある)ので、参考にしたい。
保管
まず、1万円以上するような高級ワインを持っているのであれば、迷わずワインセラーを買うべき。
4本や6本収納の小さくて安価なものもあるため、この機会に買うと良い。
ただし、そこまで高級品ではないのなら、冷蔵庫の野菜室に保管しておけば問題ない。
白ワインは飲む直前(香りや味わいがしっかりした、5,000円以上のものならもう少し前)、赤ワインは飲む10分前くらいが冷蔵庫から取り出すタイミング。
なお、「赤は常温で飲むべき」という説があるが、フランスならまだしも、日本では夏場は部屋に置いておくだけで20℃くらいになってしまう。
温かいので健康には良いだろうが、おいしくはないためおすすめはできない。
飲み頃の温度の目安は次の表のとおり。
重い赤 | 15~17℃ |
軽い赤 | 12~14℃ |
厚みのある白 | 8~10℃ |
すっきり白&甘口白 | 5~7℃ |
ちなみに一度抜栓したワインは、コルクやキャップでふたをしておけば、翌々日くらいまでは普通においしく飲めるし、ワインキーパーを使えば3,4日は味を保つことができる。
それ以上の日数が経過してしまったら料理用のワインとして使うといい。
味わう
まず、グラスへの注ぎ方は、ちょっと高めの位置からワインを落として、空気に触れさせながらじょぼじょぼと注ぐようにする。
この際、注ぐ量はグラスの3分の1くらいまでにとどめておく。
その後の味わい方は自由だが、集中して味わいたいなら、まずはワインの外観を見る。
液体の中に枯れた色、褐色、レンガ色っぽさを見つけたりしたらニヤニヤしてみる。
次に匂いを嗅ぎ、(よくわからなくても)「開いてきた」などと言って気分を高める。
グラスを回しては嗅ぎ、回しては嗅ぎしてみる。
ただし、飛び散らないようにやさしく回す。
良いワインを飲むときはなるべくゆっくり飲んだほうがいい。
一口をそっと口に含み、液体を舌の上に広げた後、舌全体を包み込ませる。
これは、舌の場所によって感じる味が異なるので、舌全体を使ったほうが味の特徴をつかみやすいため。
そして最後は余韻に浸る。
食べ合わせ
ワインは基本的に食事に合わせる飲み物なので、組み合わせはとても大切。
グルメ経験値が低くても食べ合わせを見極められる3つの法則(似た色、似た味、反対の味)がある。
- 色が似ているもの同士を合わせる
ここでいう「色」は単に赤、白というだけではなく、タンニン(≒渋味)豊富なら茶色、爽やか系なら緑といったような「イメージとしての色」もある。
また、「肉→赤」「魚→白」という考えにとらわれず、味付けによって使い分けると良い。 - 味が似ているもの同士を合わせる
例えばシラーという品種はコショウっぽさが強いので、コショウで味付けされた肉料理とよく合うし、ソーヴィニヨン・ブランという品種はネギっぽいので、ネギを使った繊細な味の京料理なんかに合うかもしれない。 - 味が対極にあるもの同士を合わせる
ブルーチーズを使ったピザにハチミツをかけるかのごとく、乳臭くて塩気の強いブルーチーズに、フルーティーな香りで極甘口のリースリングを使ったワインを合わせたりする。
なお、エスニック料理によくある、「酸っぱい料理」と「辛い料理」は、基本的にはワインに合わないので、ビールなどの方がおすすめ。
飲食店
飲食店で何を選んでいいのかわからなかったら、お店の人に「料理に合いそうなワインの候補」を挙げてもらった上で、自分たちの好み(後述)に合いそうなものを選べばいい。
ちょっと高級なレストランでボトルを注文すると、ソムリエがボトルを持ってきて、ラベルを見せるので、ラベルを見て間違いがないことを確認し、軽くうなずけば、ソムリエがそのワインを開栓する。
また、開栓後にグラスに少しだけ注ぎ、テーブルの主っぽい客に「飲め」という合図をしてくる(ホストテイスティングという)が、この際は香りをちょっと嗅いで、一口だけ飲んでから「はい。これでお願いします」と言う。
ホストテイスティングは、客に後から文句を言わせないための確認だが、もはや形式化しているので、淡々と事を進めればいい。
ただし、中にはコルクにカビが生えて臭い状態(ブショネ)の場合がある。
ちょっとおかしいなと思ったら「このワインって、こういうものなんですか?」と恐る恐る聞いてみてもいい。
ソムリエはプロなので、ブショネじゃなければ丁寧に説明してくれるし、ブショネだったら丁重にお詫びした上で交換してくれる。
ちなみに、お客さんがワインを気に入ってくれるかどうか、ソムリエも緊張しているものなので、「ありがとう」とか「おいしい」と一言添えると雰囲気が和やかになる。
実践
準備が整ったところで、まずは大雑把な違いや自分の好みがわかるような状態を目指す。
4種類の王道
まずは4種類の王道を飲んで大雑把な違いを把握する。
4種類の王道とは
- ボルドー(産地)
- ブルゴーニュ(産地)
- シャブリ(産地)
- リースリング(品種)
上2つは赤ワイン、下2つは白ワインの比較に用いる。
ボルドーとブルゴーニュはどちらもフランスにある地方名。
そこで作られる赤ワインは赤ワイン界のド定番で、価格やクオリティはピンきりだが、全ワインにとっての基準となっているので、「ボルドーの味はかなりがっしり」、「ブルゴーニュの味はかなり軽め」という味の傾向を舌に記憶させるのにうってつけである。
次に白ワインだが、まずは「辛口」「甘口」の違いを正確に知ることから始まる。
そこで役に立つのが「ブルゴーニュの白」と「やや甘口のリースリング」
上記を満たしていれば何を選んでもいいが、どこにでもあるという観点で前者はシャブリ(ブルゴーニュ地方内にある地区)のものが良いだろう。
後者はショップで「リースリングの甘口をください」と伝えればたいていフランスのアルザス(地方)かドイツの白ワインが出てくるはずである。
ちなみに、2,000円台で買えるワインの例として、シャトー・モンペラ(ボルドーの赤)、ラブレ・ロワ(ブルゴーニュの赤/白)、ヒューゲル(リースリング)が紹介されている。
6つの品種
4つの王道で大まかな傾向をとらえた後は、代表的な品種を飲んで味を覚える。
数千種類あるとも言われている品種の中で、トップグループに位置する主要品種は以下の6つ。
品種 | 赤/白 | 特徴 |
カベルネ・ソーヴィニヨン | 赤 | タンニンが豊富、ワインぶどう界の主人公的存在 |
ピノ・ノワール | 赤 | 高貴で複雑な味わい、ブルゴーニュにおける最重要品種 |
メルロー | 赤 | 果実味はあるがタンニン・酸味が控えめでまろやか |
シャルドネ | 白 | 産地や造り手によって味が大きく変わる、白の最メジャー |
リースリング | 白 | 高級甘口にも使われる甘口白の筆頭品種だが、キリッとした辛口にもなる |
ソーヴィニヨン・ブラン | 白 | ハーブやグレープフルーツの香りがする、爽やか系の代表 |
赤ならまずはカベルネ・ソーヴィニヨンが使われたワインの味を舌に記憶させ、重い(濃い)かもと思えばピノ・ノワール、これ系がもっと飲みたいと思えばメルローに展開していく。
白ならまずはシャルドネから入り、フルーティー寄りがいいと思えばリースリング、すっきり寄りがいいと思えばソーヴィニヨン・ブランに展開する。
以上の6つの品種さえ掴んでおけば、そのときの気分や食べ物に合わせて、だいたいワインを選ぶことができるようになる。
ところで、ワインには単一の品種が使われているものと、複数の品種がブレンドされているものがある。
傾向としては、新世界(大航海時代より後にワインを造り始めた国:アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・チリ・アルゼンチン・南アフリカ・日本)は単一が多く、旧世界(大航海時代より前にワインを造り始めた国:フランス・イタリア・スペイン・ドイツ)はブレンドが多い。
そのため、品種の味を捕まえるには、新世界の単一品種を使ったワイン(ヴァラエタルワイン)を選ぶといい。
ラベル
実はワインのラベル情報というものは、いい加減に記されており、プロが見てもラベルだけでは良し悪しが判断できないものもあるのだが、一般的な傾向として、旧世界のラベルはわかりづらく、新世界のラベルはわかりやすく記されている。
基本の見方としては、新世界は「品種」、旧世界は「産地」を見るようにする。
先述のとおり、新世界のワインはたいてい「単一」で、それゆえにラベルに品種の名前が記載されていることが多い。
赤ならカベルネ・ソーヴィニヨンかメルロー、白ならシャルドネかソーヴィニヨン・ブランが使われたワインを選べばたいてい外すことはなく、あとはどれだけ値段をかけるかで「わかりやすくおいしい」ワインに当たる確率が上がる。
旧世界は「品種」よりも「産地」が重要で、産地についても、フランスではより狭い地域の方が一般的に品質も値段も高くなる(例:ボルドー地方よりもその中のメドック地区の方が高級だし、メドック地区よりもその中のマルゴー村の方が高級)
ちなみにラベルに「Grand vin de ○○」という記載があることもあるが、これは「○○の偉大なワイン」というただのキャッチコピーなので気にしなくていい。
ところで、裏に「フルボディ」「ミディアムボディ」「ライトボディ」と書かれていることがある。
これは「果実味」「渋味」「アルコール度」を合計した強さで、これらのうち2~3個が強ければフルボディ、3つとも弱ければライトボディ、1つだけが飛び抜けて強ければミディアムボディといったようなイメージである。
ここまでで全般的な解説は終了。
以下では、生産国ごとのワインの特徴を紹介する。
旧世界(大航海時代より前)
フランス
ワインの本当の面白さ、すごさを知るためには、とにもかくにもフランスワイン。
フランスは全域でワインが大量に作られており、高級なものからお手軽なものまで、ありとあらゆる種類のワインが揃っている。
魅力は、なんといっても複雑で繊細な味と香り。
舌の経験値が上がったかなと感じたら、その都度フランスワインを試してみると良い。
ボルドー
- いかり肩のボトルが特徴
- 主要品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、セミヨン
- 重厚なだけでなく、優雅で複雑な味わいをもたらす「長期熟成されたワイン」
- おいしさはわかりやすく価格に比例し、最低でも5,000円くらいは出さないと良いワインは買えない
- 醸造所を「シャトー」と称するのは原則ボルドーワイン
- 【シャトー・ラトゥール】【シャトー・ラフィット・ロートシルト】【シャトー・マルゴー】【シャトー・ムートン・ロートシルト】【シャトー・オー・ブリオン】は「五大シャトー」と呼ばれ、世界的に価値が高い
ボルドーにおける主要地区は以下のとおり
- メドック地区
五大シャトーのうち4つが存在する。ただしこれらは超高級品なので、ラベルに表示することが認められた6つの村(サン・テステフ村、ポイヤック村、サン・ジュリアン村、マルゴー村、リストラック村、ムーリ村)が現実的に手が出せる(5,000円~)高級ワイン。
南部のうち上記の6つの村を覗いた部分は、オー・メドック地区という表示の”あなどれない産地” - サン・テミリオン地区
2,000~3,000円くらいの値段でおいしいメルローが飲める印象がある地区。
格付けは、「グラン・クリュ」がつくとグレードが上で、「プルミエ」がつくとさらに上。ちなみにこの格付けは、1855年の制定以降一度しか見直されていないメドック地区の格付けと異なり、10年に1度見直されているので、信用度は高いかもしれない。 - ソーテルヌ地区
高級な甘口の白で有名な地区。ここで造られた貴腐ワインはドイツの【トロッケンベーレンアウスレーゼ】、ハンガリーの【トカイ】とともに「世界三大貴腐ワイン」と称されている。 - ポムロール地区
狭い地区で、シャトーの数も少ないが、全体的にハイレベル。
3,000円台のリーズナブルなワインも存在するようだが、基本的には贅沢をするときにちょっと多めにお金を出して買うための地区なのでおすすめしない。
【ペトリュス】【ル・パン】という2つの銘柄が有名(だけど超高い)。 - グラーヴ地区
「砂利」という意味なだけあって、水はけが良い土地で、味もすっきりしており、白ワインの方が有能。
地味な地区であることは否めないが、グラーヴ地区にある優れた8つの村をまとめて「ペサック・レオニャン地区」と称し、五大シャトーのひとつ、【シャトー・オー・ブリオン】を有している。
ブルゴーニュ
- なで肩のボトルが特徴
- 主要品種はピノ・ノワール、シャルドネ、ガメイ
- 味というより、時間とともに移ろうはかなげで複雑な香りの変化を楽しむ
- 舌の経験値が求められる「わかりにくくおいしい」ワイン
- 当たり外れが激しいので、買うなら5,000円以上のものにするべき
- 地方名→地区名→村名→畑名の順に格付けが上がっていく
- 生産者は、自分の畑のぶどうのみで醸造する「ドメーヌ」と、複数農家からぶどうを買い付ける「ネゴシアン」に分かれ、前者のほうが個性的で人気・値段が高い
ブルゴーニュにおける主要地区は以下のとおり
- シャブリ地区
世界一メジャーで、典型的な辛口の白ワインの生産地。
上から順にグラン・クリュ→プルミエ・クリュ→シャブリ→プティ・シャブリという序列で、買うならプルミエ・クリュ以上にすべき。
「牡蠣が合う」というのはフランスの牡蠣の話で、日本なら白身魚のカルパッチョのようなシンプルな食べ物が合う。 - コート・ド・ニュイ地区
世界最高級品の数々を生み出す産地で、いくつかの村があるが、いずれも質・価値ともに高い。
ピノ・ノワールが好きなら一度は試すべき。 - コート・ド・ボーヌ地区
いくつか村があるが、代表的なのは高級白ワイン【モンラッシェ】でおなじみのモンラッシェ村。
シャブリと同じくシャルドネが使われているが、辛口すっきりのシャブリよりもふくよかで、樽やフルーツの香りが強く、料理なしでいけちゃう感じの味の厚みがある。 - ボージョレ地区
ガメイという品種を使った【ボージョレ・ヌーヴォー】が日本ではおなじみ。
ヌーヴォーはぶどうを潰さず、造ってわりと早めに出してしまうので、味の若さや酸っぱさが全面に出やすい。
ヌーヴォー以外のボージョレワインを飲んで、ガメイのいちごっぽいかわいらしい味を味わってみるべき。
シャンパーニュ
- いわゆる「シャンパン」を生み出す産地
- シャンパンは品種、熟成期間、炭酸の強さなどの厳しいルールによって高品質が担保されている
- 使われうる品種はシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエの3種類のみ
- シャルドネで造ったシャンパンは「ブラン・ド・ブラン」、ピノ・ノワールだけなら「ブラン・ド・ノワール」という表記が加わる
- 贈答用のシャンパンなら【ドン・ペリニヨン】【モエ・エ・シャンドン】【ヴーヴ・クリコ】あたりがおすすめ
- ラベルに「NM(ネゴシアン・マニピュラン)」と記されていたら味が安定したプレゼント向きの大規模メーカー、「RM(レコルタン・マニピュラン)」なら個性的でワイン通向きな小規模メーカー
コート・デュ・ローヌ
- 主要品種はシラー、ヴィオニエ、グルナッシュ、ルーサンヌ、マルサンヌ
- 全体的に型にとらわれない自由な雰囲気で、幅広い味をカバーしている
- わかりやすくおいしいし、値段も安め
- (地方名ではなく)品種や銘柄が好きだから選ぶという位置づけ
- 北ローヌでメジャーな、単体ではスパイシーすぎるシラーに、ヴィオニエをまぜてまろやかさを足した組み合わせは新世界でも真似されている
- 南ローヌではグルナッシュという、田舎っぽい庶民的な味のワインになる品種がよく使われる
アルザス
- 寒いので、おいしい白ワインができる
- 主要品種はリースリング、ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネール
- ドイツワインそっくり(ヴァラエタルワイン、使用品種、細長いボトル)
- ドイツワインは甘口主体だが、アルザスは基本的に辛口主体
- 土壌が複雑すぎて味がバラバラなので、品種を楽しむ
- リースリングを使った貴腐ワイン
ロワール
- 主要品種はミュスカデ、ソーヴィニヨン・ブラン、シュナン・ブラン
- 広大な地方なので、銘柄や品種で選ぶ
- 鉄板は、さっぱりした辛口の白
ロワールは以下の4つの地区に分かれている
- ペイ・ナンテ地区
ミュスカデを澱につけっぱなしにして熟成して旨味を引き出した白ワインを造る「ミュスカデ・ド・セーヴル・エ・メーヌ村」がある - トゥーレーヌ地区
シュナン・ブランで単一の白を造る「ヴーヴレ村」がある - サントル・ニヴェルネ地区
ソーヴィニヨン・ブランの魅力を存分に感じられる「サンセール村」とスモーキーな味の「プイィ・ヒュメ村」のワインが有能 - アンジュー地区
南ローヌのタヴェル地区、プロヴァンス地方と合わせて「三大ロゼワイン」と呼ばれる「ロゼ・ダンジュ」有する「ロゼ・ダンジュ村」がある。
ロゼは料理を選ばないという利点がある。
「アンジュー村」ではカベルネ・フラン単一の珍しいワインが造られている。
南フランス(プロヴァンス/ラングドック)
- 主要品種はカリニャン、サンソー、グルナッシュ
- プロヴァンスのロゼは高級リゾートのビーチでちびちび飲むイメージ
- 上記以外の南フランスは全体的に安ワインが多く、それゆえ安いワインを買うときはハズレが少なく安心
- 大事に少しずつ飲むというより、開放的にガブガブ飲むようなワイン
イタリア
- 主要品種はモスカート、サンジョベーゼ、ネッビオーロ、ピノ・グリージョ(仏ではピノ・グリ)
- 格付けはD.O.C.G.>D.O.C.>I.G.T.>V.d.T.
- ワイン法の制定が遅かったため、品種や製造方法が多様化しすぎて当たり外れが激しい
- 二大産地はトスカーナ州とピエモンテ州
- トスカーナは主にサンジョベーゼを使った【キャンティ】で有名だが、有名ゆえ、どこもかしこもキャンティを造るようになり、品質はピンきり
- キャンティ対策で、昔から造っている地方だけが【キャンティ・クラシコ】を名乗るようになったが、キャンティほどではないにしろ、似たような栽培面積拡大が発生し、やはり品質はピンきり
- ピエモンテは【バローロ】と【バルバレスコ】に使われるネッビオーロという品種でおなじみで、アメリカ人の口に合う味
スペイン
- 主要品種はテンプラニーリョ、カリニェーナ(仏ではカリニャン)、ガルナチャ(仏ではグルナッシュ)
- 格付けはDO de Pago>DOCa>DO>VdlT
- とにかく情熱的で濃厚な赤ワインが特徴
- 地域で選ぶよりも、品種やお酒の種類で選ぶのがおすすめ
- スペイン固有品種のテンプラニーリョを使ったワインはメルローに系統が近く、筆者のおすすめはリオハ地方の【マルケス・デ・リスカル】
- カヴァはリーズナブルだが、基本的な造り方はシャンパーニュと同じなので質が高い
- シェリーという、ブランデーを添加して造る酒精強化ワインも有名で、味の幅はとても広い
ドイツ
- 主要品種はリースリング、ゲヴェルツトラミネール、ミュラー・トゥルガウ、シルヴァーナ
- 格付けはトロッケンベーレンアウスレーゼ>アイスヴァイン>ベーレンアウスレーゼ>アウスレーゼ>シュペートレーゼ>カビネット>クーベーアー(Q.b.A)>ラントヴァイン>ターフェルヴァイン
- アルザスワインとよく似ているが、あちらと異なり、ドイツは甘口主体(糖度が格付けの基準になっているほど)
- 格付けは低いが、辛口の「トロッケン」、やや辛口の「ハルプトロッケン」は淡麗すっきりで和食と合う
新世界(大航海時代から後)
アメリカ
- 主要品種はジンファンデル、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ
- ただし多くの品種がアメリカナイズされた味になっている
- 歴史の浅さを科学的な研究で補っており、アルコール度数が高くて果実味たっぷりなわかりやすくおいしいワインが多い
- 2,000円未満の価格帯ならアメリカはかなり優秀
- 生産の9割はカリフォルニア州で、ヴァラエタル(単一)ワインが上級ワインとなる
- 筆者的にはオレゴン州のピノ・ノワールに注目
オーストラリア
- 主要品種はシラーズ(仏ではシラー)、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン
- 気候やBBQ文化がカリフォルニアと似ているためか、アメリカと同じで、たいてい安くてわかりやすくおいしい
- 西側にある「マーガレット・リバー」という産地だけはフランスの地中海性気候に近く、新世界っぽくない上品で繊細なワインを造る
- 最初にスクリューキャップを採用したのはオーストラリア
ニュージーランド
- 主要品種はソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール
- ソーヴィニヨン・ブランを使った白ワインがこれ以上ないくらいわかりやすくおいしいので、初心者にぴったり
- ピノ・ノワールを使った赤ワインも、甘味と酸味のバランスが良くおいしい
チリ
- 主要品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネ、カルメネール、ピノ・ノワール
- 品種の特徴をつかみたかったら、【コノスル】や【サンライズ】や【カッシェロ・デル・ディアブロ】などのチリワインを選べば間違いない
- 新世界の先駆けだが、最近では【アルマヴィーヴァ】などの高級ワインを造りはじめている
アルゼンチン
- 主要品種はマルベック、トロンテス
- チリワインの陰に隠れているが、安くておいしくて個性もある、狙い目のワイン
- コスパが高いので、主要品種の特徴を覚えるために使うのも悪くない
- 白のトロンテスはフルーツヨーグルトっぽいかなりキャッチーな味
南アフリカ
- 主要品種はピノタージュ、エルミタージュ(仏ではサンソー)
- 代表品種ピノタージュは、ピノ・ノワールとエルミタージュの交配品種だが、果実味とタンニンがあり、カベルネ・ソーヴィニヨン寄りの味
- 新興国中の新興国なので、まだまだこれからに期待だが、人気価格がプラスされていないので、掘り出し物に出会える可能性もある
日本
- 主要品種は甲州、マスカット・ベーリーA
- 赤はやや遅れているが、一部の白ワインはすでに世界に通用するほどおいしい
- 当然、日本人の舌に合うように造られており、和食にぴったり
- 筆者のおすすめは甲州を使った【シャトー酒折 甲州ドライ】や、甲州とシャルドネを使った【シャトー・メルシャン 萌黄】
まとめ
ワインの作法や主要品種、生産地の特徴について、初心者でも理解できるようにわかりやすく説明されていた。
「ワインの何を知りたいと言われても、まず何を知りたいかわかる段階にいないから全般的に知りたい」という方には非常におすすめできる一冊である。
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