2011年5月に初版が発行された本。
著者のイアン・ローランド氏は、マジシャン、エンターテイナー、コールド・リーディングの達人。
テレビ番組でパフォーマンスを行う一方、国家機関・企業・大学で、講義やコンサルティングも行っている。
本書は、サイキックでない人がコールド・リーディングを使って、あたかも超能力を持っているかのように見せかける方法について書いた本である。
ページ数は謝辞等まで含めると460ページを超えており、かなりボリューム感のある専門的な本となっている。
コールド・リーディングとは
コールド・リーディングとは一言で言えば「人を欺く心理テクニック」のこと。
ただしコールド・リーディングそのものは単一ではなく一群のテクニックを集合的に表す言葉であり、個々のテクニックは様々な場面で様々な目標を達成するために使われる。
また、コールド・リーディングは、何の予備知識もなく、まったく知らない相手にリーディングを提供するテクニックであり、これに対して事前に相談者に関する情報を密かに集めるタイプのリーディングは「ホット・リーディング」あるいは「ウォーム・リーディング」と呼ばれている。
サイキック・リーディングは、そのタイプや内容、提供方法が非常に多岐に渡るが、いずれにせよサイキックでない人がサイキック・リーディングを行う場合、その裏にはコールド・リーディングの技術があることが多い。
コールド・リーディングの仕組み
先述のとおり、コールド・リーディングは様々なテクニックの集合体である。
この項では、それを7段階に分けて説明する。
セットアップ
リーディングをスムーズに進めるため、準備段階からテクニックが用いられている場合がある。
その目的は、リラックスした協調的な雰囲気を作り、相談者がコールド・リーディングのプロセスに文句をつけたり、妨害したりしないようにすること。
主なテクニックは以下のとおり。
顔合わせと挨拶
大抵のサイキックは相談者と顔を合わせるので、第一印象を良くしようと心がける。
その際のテクニックはいくつもあるが、最も重要で効果的だと筆者が考えるテクニックが、「マインド・スクリプト」と呼ばれる、誰かと会う場面について自分の思いを表明する、短く単純で前向きな言葉。
例えば、「私はあなたが好きで、あなたも私が好き。だからこの会話はすごくうまくいく」という具合である。
相手に会う前に心の中でその言葉を唱え、相手との会話の最中もそれを反復する。
マインド・スクリプトを唱えると、唱えた人の姿勢、ボディ・ランゲージ、声の調子、表情、仕草などに良い影響が現れ、会話相手も少なからずそれに影響される。
協調的な解釈を促す
サイキックと協調し、力を合わせることが自分には求められている、と相談者に思わせる。
それによって、相談者が自発的に情報を提供し、サイキックが物事を正しく言い当てるのを助けてくれるようにする。
親密な雰囲気を作る
相手を快く迎える感じを穏やかに伝えられさえすればその手段は問わない。
その狙いは、相談者が挑戦的になったり自分の意見を主張したりするのを防ぐこと。
サイキックとしての信用度を印象付ける
その方法は様々で、これまでの相談者からの賛美の言葉を並べておく、それらしい機関の証書(捏造の場合もある)を掲げておく、参考図書を並べて研究対象たりえることを示す、質の良い小道具を使う、といった方法が例として挙げられる。
リーディングの体系を信用させる
リーディングの長い歴史や、それがいかに高く評価されているかなどといった話を持ち出すことによって、リーディングに敬意を抱く方向に相談者を導き、つまらない疑問を封じるのに役立てる。
失敗したときの言い訳をあらかじめ用意しておく
言うまでもなく、間違ったことを言った場合に備えてである。
また、あえて「私はときどき間違うことがある」などと伝えることにより、相談者にサイキックのことを好意的に見させ、できるだけ手助けしようという心構えをさせる。
相談者が最近リーディングを受けたかどうかを調べる
同一の人物に互いに相容れないことを告げてしまわないようにすることが目的。
前のリーディングから2,3ヶ月も経過していれば、内容に食い違いが生じたとしても、重点の置きどころや解釈の違いや影響の変化で乗り切ることができる。
相談者を楽にさせる
相談者の目に、できる限り好意にあふれ、魅力的で、害のない人物に映るように心がけることで、ラポール(信頼関係)の妨げとなるような恐怖や不安を払拭する。
主要なテーマ
サイキック・リーディングはテーマ(何について語るか)と要素(実際に何を言うか)から構成される。
主要なテーマは次の4つ
- 愛情
- お金
- 職業
- 健康
そのほか、やや小さいテーマとして、以下の3つがある。
- 旅
- 教育
- 野心
これらのテーマは、大多数の相談者にとって重要なものとなっている。
リーディングの要素
続いては要素について。
要素とは、実際以上に意味がありそうに見える様々なタイプの言明及び質問である。
本書では4グループ、合計38個の要素が解説されている。
性格に関する要素
虹色の戦略 | 対極的な傾向について同時に述べる。 反論の余地のある定量的な表現はしない。 |
細やかな褒め言葉 | 誠実、勤勉、良心的、公平、愛情深いなど、相談者をそれとなく褒めて調子を合わせてもらえるようにする。 コールド・リーディングのプロセス自体を和らげるような形で、相談者への褒め言葉を使うのが上手なやり方。 |
サイキック感覚の称賛 | 「細やかな褒め言葉」の特殊な例で、同様に、直接的な称賛は行わない。 |
シュガー・ランプ | 熱心に話を聞く相談者に砂糖の塊のような心地良い言葉をかける。 疑いや疑問を抱くことがいかにネガティブな態度かを強調する場合もある。 |
ジェイクイーズ・ステートメント | 誰もがぶつかる典型的な問題について述べる。 |
隣の芝生 | ジェイクイーズの一種。 人生において選ばなかった選択肢への未練について言及する。 |
バーナム・ステートメント | 大多数の人が「自分のこと」と思うような一般的な事柄について述べる。 相談者の反応によって、強化する方向と逆転させる方向の2種類の話題が後に控えていることが多い(後述のフォーキング) |
事実や出来事に関する要素
曖昧な事実 | 地理や医療、事実のように大抵は受け入れられそうな話を、具体的な事柄へと発展させる余地を大きく残す形で展開する。 人間関係、家族、職業、人や場所や出来事の名前、イニシャル、数、旅行、休暇、祝い事などについての言明を構成するのに利用できるので、非常に汎用性が高い。 |
確率の高い推測 | 「住んでいる家やそれに関連した2という数字」、「白っぽい車」というような、普通に考える以上に当たる確率の大きい推測を含む要素。 |
まぐれ当たりを狙う推測 | 複数の要素(名前、イニシャル、日付、地名など)から構成されるただの当てずっぽうだが、それだけに一部でも当たったときに相談者に与えるインパクトは大きい。 もし当たらなかった場合は、他のテクニックで別の話題に移る。 |
統計上の事実 | それほど知られていない統計上の事実を利用し、リーディングにそれとなく盛り込む。 |
統計のトリビア | 公的統計ではなく、自らの顧客のタイプに応じてサイキックが自ら集めたデータ。 「統計上の事実」と同じで自然な形でリーディングに盛り込むことがポイント。 |
文化のトレンド | 社会や文化のトレンドを観察し、その先行きを推測することでリーディングに役立てる。 |
幼時の記憶 | 誰もが大抵は幼少期に経験することを基に、相談者の性格について述べる。 分かりきったこととまでは言い切れないぎりぎりの表現(リーディングの文脈でそう思える表現)を使うのがポイント。 |
民衆の知恵 | 誰もが知っている格言などの援用。 リーディングの間を埋めたり、次の話題へつないだりするのに役立つ。 |
季節に関わること | 国、文化、社会に応じた時候や季節に関係のある事柄を織り込む。 ただし直接的に使うのはあまりに見え透いているので、適切なイメージでコーティングしたり、その後の見通しを立てて話したりする。 |
対照的な人物 | 相談者とそりの合わない相手の存在を示唆し、その人物像を、相談者と正反対の性格の人物描写で伝える。 |
プッシュ・ステートメント | 否定的な反応が返ってくる内容をあえて自信をもって語り、段々と細部を拡張していき、相談者自身に適合する事実を思い出させる。 話の構築自体が困難だが、成功すれば相談者に強烈なインパクトを与えることができる。 |
情報を引き出す要素
これまでの2項では、情報提供がメインだったが、この項では、情報を引き出すことに重きを置いている。
また、そちらの要素が実はコールド・リーディングにおいては大部分を占めている。
直接の質問 | 相談者が協力的で、リーディングの体系を信頼し切っている時に使う。 相談者が求めていることに焦点を合わせるために使われることが最も多い。 |
副次的な質問 | 長い言葉の終わりにさりげなく付加される軽い調子の質問(ex. ~それってなぜでしょう?) 優秀なコールド・リーダーは絶妙な抑揚や声の調子によって、相談者に「質問されている」と感じさせずに質問する。 |
ベールをかけた質問 | 言明のように聞こえる形で質問を行う。 音調と発音のタイミングを細かく調整して、質問でないかのように偽装する。 |
転用された質問 | 直接の質問などにより得たわずかな情報からその先を推測し、適切と思われる結論にして相談者に送り返す。 結論は元の情報と別のジャンルになっている方が相談者に気づかれにくい。 |
専門語のたたみかけ | 適当な専門用語を次々と口にすることで、相談者に情報提供を促すやり方に変化をつけると同時に、信念体系を強化し、リーダーの権威を示し、儀式めいた雰囲気を作ってやっかいな反応を封じる。 |
薄れゆく否定 | 否定形の疑問を相談者に投げかけ、回答に応じて「だと思いました/違うと思いました」を使い分けることで的中している感じを醸し出す。 相談者の反応の強化、否定した選択肢をけなして安心させる、質問は前置きに過ぎないという態度、によってさらに気づかれにくいものにすることが可能。 |
シャーロックの戦略 | シャーロック・ホームズのような観察と推理から情報を得る。 ただし、役に立つシチュエーションは想像するよりもずっと限定的。 |
ロシアの人形 | 最初の言葉(いくつかの意味や文脈、解釈で使える言葉)を提示した後、何らかの重要な意義が見つかるまで、その言葉の意味を拡張・移行し続ける。 |
未来の出来事に関わる要素
ほとんどのリーディングについて回るものだが、全般について言えるのは「未来の出来事に関する予言の正否を現在確かめる方法はない」ということである。
予言が当たれば、強烈なインパクトをもって相談者の心に刻まれ、宣伝効果も見込めるが、外れた予言は記憶の彼方だし、覚えていてもわざわざ外れたことを吹聴したり、責任を追求してくる人はまずいない。
万が一いたとしても、サイキックはいくつもの逃げ道を用意している。
ピーターパンの予言 | 主に主要なテーマ(先述)について、相談者の希望が叶うと請け合う。 |
ポリアンナの真珠 | 現在(直近)は苦しかったが、今後は好転すると伝える。 |
確実な予言 | 新たな出会いやちょっとした病気など、ほぼ確実に起こることを「時期を明言しないで」告げる。 |
五分五分の予言 | 50%の確率で当たる予言。 予言数を増やすほど的中した予言の数も増える。 |
当たりそうな予言 | ありふれた出来事を予言する。 タイムスケールを含むという点で「確実な予言」と異なる。 |
当たりそうもない予言 | 無論、当たる確率は低いが、それだけに実現した際の宣伝効果は大きいため、あえて行う。 |
事実に関する予言 | 中くらいの遠さの未来に関する率直な予言。 相談者は後で、うまく当てはまる方向に予言を解釈しなおす傾向があり、その点で有利。 |
自己実現的予言 | 相談者の気分や人格などに関係した、自ずと成就していく予言。 後天的な予言を受けたこと自体が相談者の心理を好転させ、成就の助けとなる場合が多い。 |
曖昧な予言 | 「旅を示唆」「進歩の新しい段階」といった中身の薄い予言。 占星術によるリーディングに多く見られる。 |
検証不可能な予言 | 相談者には正否を確かめる術がない予言。 |
一方向でのみ検証可能な予言 | 予言内容が実現した場合にのみ検証できる予言。 |
本当はなかった予言 | インタビュー時などに限定されるが最も効果的かつ強力な予言。 実際にはなかった過去の予言とそれにまつわる印象的なエピソードをこしらえて話す(つまり厳密には予言ではない) 「あくまで本人の主張によれば」という但し書きは、最初の記事、あるいは引用が繰り返されるうちに抜け落ち、「事実」として圧倒的な宣伝効果をもたらす。 |
ウィン=ウィン・ゲーム
サイキックのリーディングに対して否定的な反応が返ってきたときの対処法に関する紹介。
上位のものほど汎用性が高い。
固執、当惑、引き延ばし
最もありふれた対処法で、固執によって部分的な同意を獲得すること、当惑によって食い違いの原因の一端を相談者にも共有させること、引き延ばしによって相談者が一致点を後で発見することを期待する狙いがある。
私は正しいが、あなたはそのことを忘れている
食い違いを相談者の記憶の薄れのせいにする。
(ex. 幼い頃だったので覚えていないのかもしれません)
私は正しいが、あなたはそのことを知らない
食い違いの原因が、事実の全体像への相談者の理解不足にあると主張する。
(ex. その人はあなたの配偶者と仕事上のつながりがあるのかもしれません。なので、あなたは知らない可能性があります)
私は正しいが、誰もそのことを知らない
相談者やそれ以外の人も事実を知らない(忘れている)のだと主張する。
私は正しいが、大っぴらにできない事情がある
きまりが悪いとか慎みに欠ける、見られたくないといった事情で、当人が事実をあなたに話さなかったのだろう(だからあなたは知らない)と主張する。
今は間違っているようでも、近いうちに私が正しいことが分かる
事実が明らかになるまでに少し時間がかかると主張する。
もし現在のことに当てはまるなら、「時間の概念は流動的なので」などといった理由で修正することも可能。
私は間違っているが、それは問題ではない
間違えた箇所については些細なずれで、それは本題ではないかのように話題を別の方向に持っていく。
私は事実については間違っているが、感情においては正しい
事実に関しては間違っていることを認めるが、欲求、欲望、要求レベルにおいては正しいと主張する。
実際は言い訳しているに過ぎないが、協力的な相談者から見ると、よく深いレベルのリーディングがなされたと勝手に解釈されるので、高い評価を受けやすい。
私は事実については間違っている、しかし体系のなかでは正しい
事実については間違っていることを認めるが、サイキックの体系においては(間違っていた事実を含む)より広い意味でその言葉を使うという主張をする。
交霊術、タロット、占星術など、サイキックの裁量で解釈を変えやすいリーディングでよく使われる。
細部の間違いはあるが、大筋では正しい
ピンポイントでの的中こそしていないが、ジャンルとしては合っていたという主張をする。
(ex. 車輪に故障があると言ったが、実際はブレーキだった。しかし車という大枠の中では合っている)
間違いを認め、謝り、そして次へ
潔く間違いを認め、誰にでも間違いはあるとフォローし、さっさと次の話題へと移る。
プレゼンテーションの方法
内容はもちろんだが、提示の方法もリーディングが成功するか否かに大きく関係する。
以下に重要なポイントを掲載する。
フィードバックを促す
フィードバックは、リーディングにおいて重要な「相談者からの情報提供」である。
そのため、サイキックは、リーディングをモノローグ(独り言)ではなくダイアローグ(対話)にしようと努める。
フィードバックを引き出す方法としては
- 親密な雰囲気を作る
- 「情報を引き出す要素(先述)」を利用する
- オープンクエスチョンを使う
- アイ・コンタクト(関心のシグナルを送る、相手の注意を捉えて導く、こちらに注意を向けるよう促す)を使う
- ボディ・ランゲージ(かすかに頭を傾けて話を聞く、呼吸を相談者と合わせる、相手と交差・相反する姿勢をとらないように心がける)を使う
といった方法がある。
フィードバックの種類も、言葉そのものである場合もあれば、強調、声の調子と話し方、表情、仕草や癖などの場合もあるので注意を払いたい。
フィードバックを得ることにより、「主要なテーマ」を判断したり、同意の程度を測ったり、言葉と本心の食い違いを掴んだりするのに役立つ。
感覚を共有する
様々な感覚の捉えた印象をしっかりと表現することで、相談者の経験をサイキック自らも経験しているかのようにふるまう。
これを行うと、リーディングの効果は大きく上がる。
クリームの原則
コーヒーにクリームを注ぐとき、いきなりたっぷり入れるようなことは普通はしない。
リーディングも同じで、最初は弱い言明から提示し、相談者の反応を見て強い言明に調整する。
強い言明を弱い言明に変更するのは、自信がなさそうで、間違えているという印象を与えがちだが、弱い言明を強い言明に変更するのは容易である。
仮定の強調
「可能性がある」「なり得る」「はず」といった可能性としての表現をすることによって、相談者に完全な否定をできなくし、安全を確保する。
解釈の余地を残す
不思議なことに、相談者はしばしば心の中で言明の細部を補い、事実と関係の深い内容に作り変えている。
解釈の余地を残した表現を行うことにより、相談者がサイキックにとって都合の良い補完をすることを狙う。
フォーキング(分岐)のテクニック
「フォーキング」とは、2つの異なる方向に展開できる言明を提示すること。
最初の言明に対する相談者の反応によって、その後の言明を強化の方向にするか転換の方向にするか選ぶ。
はっきり聞き取れるように話す
俳優や司会者と同じで、はっきりと話すことによって、相談者の集中力と注意を保ちやすくなるし、注意や反応を引き出しやすくなる。
親しみやすさを維持する
相談者に適した言葉を使って表現し、分かりやすい比喩や事例を採り入れることによって、リーディングの体験が理解しやすいものとなり、相談者の参加を促すことにも寄与する。
ペースを維持する
ゆっくりとしたリーディングのペースを維持することによって、サイキックは様々な要素を使い、どれを発展させるべきか観察することができるし、ミスや不同意があってもスムーズに先に進む(相談者にリーディングの内容を分析する時間を与えない)ことが出来る。
金色に塗って反復する
自分にとって有利になるようにゆがめた形で、それまでのリーディングの一部を見直し、手を加える。
素早く、上手な反復を行うと、相談者が後でリーディングの内容を振り返った際に、サイキックが最初から的確なリーディングを行ったという記憶を植え付けることができる。
リーディングを要約する
リーディングの終わりに、それまでに語ったことを簡単に要約する。
その際には「金色に塗って反復する」ときと同様、当たった部分を強調し、外れた部分を事実に適合するように改変する。
観衆の目にどう映るかを意識する
この方法は相談者自身に対してはでなく、周囲で見ている人に対して効果的な方法である。
リーディングにおいてしばしばあるのが、「周りの人からリーディングの様子は見えているが、交わされている言葉まではわからない」という状況。
この状況で、相談者に頷きを促すような言葉(「聞こえますか」「わかりますか」といった、言明とは直接関係がないような質問)を投げかける。
当たり前だが、相談者は頷く。
周りの目からするとそれは、リーディングに対して逐一同意しているかのように映り、的確なリーディングをしているという印象を与えることができる。
すべてをまとめる
これまでに紹介した技術を使い、リーディングを形作る。
普通のリーディングの流れは
- セットアップと武装解除
- 開始
- 橋渡し
- 拡張
- きれいな締めくくり
の5段階となっている。
セットアップと武装解除
まず、自らの経験に照らして最も効果的だと思うテクニックを用いて場を整える。
筆者は「協調的な解釈を促す」と「リーディングの体系を信用させる」を使うことが多い。
開始
スムーズに、自信たっぷりに始めることが重要なので、大抵のサイキックは、経験則から上手くいくことが分かっているフレーズや、洗練された導入の枠組みを用いる。
筆者が好むのは、まず「曖昧な事実」や「幼時の記憶」を用いて若い頃の話から始める方法。
それが無理な場合は「ジェイクイーズ・ステートメント」と「細やかな褒め言葉」をミックスして使うとのこと。
橋渡し
導入部から主要部への橋渡しである。
ほとんど即興がない導入部に対して、主要部ではほぼすべてが即興となる。
ここでは、「主要なテーマ」を個別に試し、どれが相談者にとって一番大事かを確かめる。
そのときまでに情報が不足している場合には、2つか3つの要素(筆者のお気に入りは「ベールをかけた質問」と「専門語のたたみかけ」)を用いて情報を引き出す。
拡張
強調すべきテーマと、有用な情報をいくつか引き出すことができたら、それに沿って主要部を展開する。
筆者のリーディングでは、「虹色の戦略」と「隣の芝生」を多用し、「曖昧な事実」や「確率の高い推測」で具体的な名前や数字によるインパクトを与える。
また、「まぐれ当たりを狙う推測」や「プッシュ・ステートメント」も一度は試すようである。
きれいな締めくくり
「リーディングを要約する」を用いて、偏ったまとめをする。
予言についても締めくくり段階に持ってくるのが普通。
筆者は大抵の場合「ポリアンナの真珠」を使うようである。
懐疑的な相手への対処法
滅多にないことではあるが、「コールド・リーディングについて知識のある懐疑派」がわざわざお金を払ってやってくることがある。
この時は以下のような防御法がある。
何も主張しない
相談者に対して何も主張しないと告げ、何も約束しないよう慎重に言葉を選んで話す。
こうすれば、間違っているとか、約束が違うなどと批判されることはありえない。
何も約束されないのにお金を払うなど、商売として考えればおかしな話であるが、サイキックの分野においてはこういったことが成立する。
用心深さを褒める
提示されたサイキック・システムに懐疑的なことを褒め称え、賛同する。
ある程度のラポールを築くきっかけになる。
「シュガー・ランプ」を与える
先述の「シュガー・ランプ」を使うことにより、懐疑的な態度を和らげようと試みる。
諦める
潔く諦めてリーディングを中止し、代金を返して、お帰りいただく。
リーディングが上手くいかない理由をリーディングを受ける相談者の姿勢や、サイキックとのラポール、懐疑的な態度だと言うことにより、大きな損失をすることなくリーディングを切り上げることができる。
ブロッキング
この項では、自分に向けたコールド・リーディングをブロックするための方法について触れる。
効果的な方法は5段階あるが、共通する準備として、自ら録音をしておくと良い。
「自ら」というのは、サイキックに録音を任せた場合、都合の悪いことになったら音源を提供してくれない可能性があるためである。
こっそり録音するか、サイキックが「こちらで録音しますので」と申し出た場合に断る理由を作っておく。
冷静さを保ち、合理的でいる
終始冷静で、礼儀正しく、穏やかな態度を貫くことで、事態をコントロールできるようにする。
目的はあくまでコールド・リーディングを利用した偽サイキックをブロックすることであり、リーディング自体をめちゃめちゃにすることではないと心得て、サイキックがリーディングを提供したくなるように公平な態度を貫く。
質問されたら、そのことをはっきりさせる
「情報を引き出す要素」で触れたように、サイキックは質問だとさとられないような形で相談者に質問をし、情報を引き出そうとする。
それに対する防衛策は「それは質問なのか、サイキックに対する情報提供が求められているのか」という趣旨のはっきりとした質問をして、状況を確認することである。
質問に答えない
相談者は情報を提供するのではなく、受け取るために代金を支払うのだから、サイキックからの質問や情報提供を断っても何ら問題はない。
断り方は色々あり、以下に例を載せるが、いずれにせよ温厚な態度を崩さないことが大事。
- あなたが話してくれることに興味があるので、質問には答えないようにしたい
- 疑り深い友人が、「相談者から情報を引き出して、それを後で話すだけのイカサマ」だと言うので、言い返すためにこちらからは情報を提供したくない
あるいは、例えば「ジェーンって誰?」というようなサイキックからの質問に対し、「どのジェーンのことですか?」「姓は何ですか?」と返す手もある。
フィードバックを提供しない
フィードバックから情報を引き出されるのを防ぐために、どう反応していいか決めかねていることを伝えたり、反応を遅らせたり、答えを知らないふりをしたりする。
一方で、サイキックに対してはリーディングを進めるよう促す反応を用意しておく。
要素を壊す
先述の「リーディングの要素」が使われた時、その構造をはっきりと指摘し、破壊する。
例えば「虹色の戦略」に対しては「Aであると同時にAでないとおっしゃっているように聞こえるが、どちらが正しいのですか」という具合に。
サイキック・ベンディング
これは番外編となるが、コールド・リーディングを用いた偽サイキックを唯一完全に打ち破ることができる方法である。
ただし、営業妨害をされたと感じたら、実力行使に出るコールド・リーダーもいる可能性があるため、危険な立場に追い込まれたりするリスクがある場合には使うべきではないと筆者は強く警告している。
方法は単純で、ちょっとした嘘をついて、正しくないと知っているサイキックの言葉に同意し、その方向に話を展開させる。
しばらくサイキックを泳がせた後、事実ではないとはっきり分かる何か具体的なことが出てきた段階で、真実を打ち明け、先程までタロットや占星術や交霊術で言い当ててきた「事実」はどういうことなのかと言及する。
まとめ
コールド・リーディングについての基礎的なところから応用的なところまで、余すこと無くまとめられた専門的な本だった。
本記事では割愛したが、筆者の実際のリーディングの文字起こしや、コールド・リーディングのその他の分野(セールス、恋愛、捜査)への適用可能性などについても触れているので、気になる方は手にとってみると良いだろう。
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