たった5分でわかる『人は話し方が9割 』

2019年9月に初版が発行された本。

著者の永松茂久氏は、株式会社人材育成JAPAN代表取締役。経営、講演、執筆、人材育成、コンサルティング、ブランディングプロデュースなど、数々の事業を展開する実業家であり、講演の累計動員数は40万人にものぼる(執筆時)

本書は、職場、家族、友人、配偶者など、身近な人達との人間関係を円滑にするコミュニケーションの方法についてまとめたものである。
ページ数はあとがきまで含めて240ページ弱。専門用語は特に登場しないので、誰にでも読みやすい本である。

本記事では重要な部分を抽出してまとめている。

スキルよりメンタルが大事

過去の苦い経験が元になって、自己肯定感が失われている(=話すのが苦手と思っている)人は少なくない。対策は「否定のない空間」に身を置いて、自己肯定感を高めること。

「否定のない空間」に必要なことは3つ

  1. 否定意見は禁止
  2. 笑顔でうなずく
  3. 前向きな話をする

上記が守れない空間からは距離を置くことで、少しずつ、自己肯定感を高められる。

大原則

細かいテクニックに入る前に、人の心理について、抑えておくべき大原則が3つある。

  1. 人は自分に一番興味がある生き物である
  2. 誰もが自分のことを認めてほしい、わかってほしいと熱望している
  3. 人は自分のことをわかってくれる人のことを好きになる

聞くことが大切

上記の大原則から言えるのは、「いかに話すか」よりも「いかに聞くか」が大切だということ。相手に対して自分がいかに関心を寄せているかをリアクションで示すことが大事。

  • 顔の表情
  • 声の表情
  • 体全体の表情

3つを駆使して、相手への興味を伝える。

拡張話法

相手の話を広げ、相手にしゃべらせるための話し方が「拡張話法」

感嘆→反復→共感→称賛→質問

拡張話法は上記の順番で行う。

【感嘆】
「へー♪」「ほー!」「えー!?」などの反応
【反復】
相手の話のキーワードを捉えてそれを反復する
【共感】
「わかります」「よかったですね」「つらかったね」などの感情に寄り添う表現を相手と同じ表情で口に出す
【称賛】
「素敵♡」「すごい!」「さすがだね♪」となどの、相手を評価する言葉
【質問】
「それで、それで?」「そこからどうなったの?」などの、相手にその後の展開を話させるための質問

上記のキーワード集をあらかじめ作っておき、トイレのドア、寝室の天井、スマホの待ち受け画面に貼っておくことで、無意識下で拡張話法をインプットする。

思いやスタンスが大切

これまでのことを身に着けた上で、話す際に心に留めておくべきことは、一般の会話においてうまく話せるスキルは必須条件ではないということ。うまく話そうと思う必要はそもそもない。

うまく話すことよりも「思い」や「スタンス」の方が大切。じっくりと、自分のペースで、真意を相手の心に届ける。

話しやすい人とだけ話す

話しにくい人と無理に話す必要はない。エレベーターの中での沈黙は気まずいことではない。

初心者の場合は、いきなり難しいシチュエーションに飛び込む必要はなく、自分が話しやすい人とだけ話す中で、会話力は磨かれていく。

「また会いたい」と思われる話し方

まず、褒め方。

  • 「やっぱり」という言葉を加えることで「普段から思っていた」というメッセージを伝える
  • 独り言のようにつぶやいて褒める

次に内容だが、自分の話したいことではなく、相手の求めている話をする。たとえビジネスであっても、実際のところ「好き嫌い」で判断されることのほうが圧倒的に多い。必要なのは正論ではなく、相手に好かれる話や相手にメリットのある話である。

相手の名前をしっかりと覚え、相手を主役にした会話の展開も大切。名刺をもらったら相手の名前を繰り返して頭にインプットし、すぐに会話の中で相手の名前を呼ぶようにする。

相手との共通点を探るのに使えるネタは「食べ物」「出身地」「ペット」
実名登録が多いフェイスブックで相手のことを検索し、あらかじめ好きな本や映画などの共通点を見つけておくのも有効。

共感が大事なので、相手を笑わせることより、相手の話で一緒に笑うことに注力する。また、相手からの共感を得られるような、ちょっとした「失敗談」をストックしておくといい。

嫌われない話し方

そもそも、「好かれる話し方」の前段階として「嫌われない話し方」をすることが重要。

  • 相手の感情に寄り添う言葉を発する
  • 本心だとしても相手の気分を害するような余計なひと言を言わない
  • 正論を伝える際には、目線を揃えて相手を傷つけない伝え方にする
  • 悩んでいる人が求めているのはアドバイスではなく共感
  • アドバイスを求められた場合でも、意見を押し付けないように慎重に伝える
  • 部下や後輩、目下の人にも上司や目上の人と同じように丁寧に接する
  • 「でも」「だって」「どうせ」「ダメ」は使わない
  • つっこんだ男女関係や下ネタは話さない
  • お笑い芸人のように他者をいじることはしない
  • 無理やり話をまとめたり、結論を出そうとしない
  • 相手から話を奪わない
  • すぐに馴れ馴れしい口をきかない
  • 負け惜しみを言わない

人を動かす話し方

  • 「がんばれ」は「がんばってるね。あまり無理しすぎないでね」という使い方をする。がんばっている人に「がんばれ」と言ってはならない
  • がんばっていない人には、周りの人が頑張っているエピソードをさり気なく話す
  • 叱る際にも敬意を忘れずに、相手の存在を尊重する
  • 叱る際、「君はダメだ」や「意味がない」といった言葉は発しない
  • 自分が叱られたら「謝罪」と同時に、言いづらいことを言ってくれたことに対する「感謝」も伝える
  • 悪口を言う人には別の話題を振るか、具合が悪いなどの理由で中座して逃げる
  • 高圧的な物言いをする人には反応しない
  • 感謝の言葉を口癖にする
  • 褒め言葉は「ありがとう」と、素直に受け取る
  • 表面的な言葉ではなく、その奥にある感情を汲み取る

まとめ

職場や友人関係など、日常的な場面に特化した会話術をまとめた一冊だった。この手の本は、苦手な人や難しいシチュエーションの対応法に焦点を当てたものも多いが、本書は、あくまでも初心者向けに、「苦手な人や難しいシチュエーションは避ける」というスタンスを徹底しているのが特徴である。そのため、初心者にはうってつけの本と言える。

本記事では割愛しているが、書籍内では具体的なキーワードが豊富に掲載されていたり、購入特典として特別音声や未掲載原稿の配布も行われているので、そのあたりが気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。

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