たった5分でわかる『世界最高の話し方』

2020年11月に初版が発行された本。

著者の岡本純子氏は、エグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト、株式会社グローコム代表取締役社長。日本を代表する大企業や完了・政治家などに対して、プレゼンやスピーチ等のコーチングを行ってきた。

本書は、プレゼンから雑談に至るまで、あらゆる場面での話し方のコツを体系化し、ノウハウをまとめたものである。
ページ数はあとがきまで含めて約250ページ。ジャンルごとにルールがまとめられているので、目的の箇所だけをピックアップして読めるような構成になっている。

本記事では重要な部分を抽出してまとめている。

雑談のルール

雑談では大事なのは内容ではなく気持ち。相手が後々になって思い出すのは、会話の内容ではなく、あなたと話してどう感じたかである。

主役は相手

「自分が聞きたい情報だけ」を受け入れるのが人の性。なので、相手本位に立った会話をすることが大切。

まず、大事なことは「話す」ことよりも「聞く(質問する)」こと。相手にいかに気持ちよく話してもらうかということに注力する。

質問

質問のコツは、オープンクエスチョン(Yes/Noではなく、相手に自由に答えさせる質問)。具体的には6W1H(What/Who/When/Where/Why/Which/How)で始まる質問である。相手が言ったことに関する「フォローアップ質問」や、トピックを変える「ギアチェンジ質問」を織り交ぜて、「質問→聞く→質問→聞く・・・」のサイクルを回すように心がける。

自分の話

質問→聞くのサイクルを回した後に、少しだけ自分の話をすると良い。話のトピックは、次の中から選ぶ。

  • 相手に関係すること:身近なこと、悩み、損得、便利なこと、影響があること
  • 相手が関心あること:流行、有名な人や企業、困難の克服、感情を刺激すること、秘密、真新しい変化
  • 相手をほめる内容:「あなたはすごい」という話

ほめ方・叱り方のルール

ほめ方

まず、「すぐに」「具体的に」「気持ちを込めて」ほめること。なげやりな「ありがとう」や「お疲れ様」はNG。

次の4つのポイントを組み合わせてほめる。

  • 承認:相手の存在や行動に気づき、認める
  • 共感:相手の気持ちや意見を肯定する
  • 賞賛:優れた点をほめる
  • 感謝:「ありがとう」と言う

叱り方

ほめる(ポジティブ)と叱る(ネガティブ)の割合は6:1がベストという結論がアメリカのコンサル会社によって導出されている。また、「ほめる」場合と「叱る」場合はきっちり分け、曖昧に織り交ぜたりはしない。

叱る際に重要なのは、「建設的なネガティブフィードバック」
叱るべき事実を特定→なぜダメなのか→それについて自分(叱る側)はどう思うか→解決策を相手に提示させる、の順で叱る。

説明のルール

説明の秘訣は「パンチの効いた一言」と「話の順番」

インパクトのある13文字

Yahoo!ニュースの見出しがそうであるように、13文字以内の言葉であれば、ひと目で直感的に内容を把握できる。これにならって、まずは言いたいことは13文字以内でまとめるクセをつける。

13文字のフレーズにはインパクトがなければならない。コツは次の3ステップ。

  1. 言いたいことを単語サイズにして並べ上げる
  2. 1の中で特に心が動く言葉をピックアップする
  3. 2の言葉に、(意外な例え/具体的な数字/相手にとっての得が伝わる言葉/力強い言葉/謎めいたまたは扇情的な言葉)を組み合わせる

話の順番

基本は「ハンバーガー話法」と呼ばれる、「結論→中身→結論」の順番での話し方。冒頭と最後には、先述の13文字のキーフレーズを入れる。

「中身」はもう少し細かく分けられる。分け方は概ね3通り。

  1. 理由→事例:「なぜならば→たとえば」の展開で話を進める。
  2. 3つある:3つのポイントや要素があることを伝え、「第一に・・・第二に・・・第三に・・・」の展開で進める。
  3. 問題→解決法:問題を提起し、その解決法を示す展開で進める。

共感される話し方のルール

ロジカルな説明と共に、心の距離を縮めるコミュニケーションも大切。相手から感嘆詞が頻繁に出てくるような話を心がける。

相手の感情に共感しながら話す

好意の返報性(好意を寄せてくれる人に好意を抱く)と同じように、共感にも返報性がある。つまり、相手に共感してほしいなら、まず自分が相手に共感しなくてはならない。自分と相手の間に線を引かないために、主語は「We(私たち)」を使う。

相手の感情を刺激する

感情を刺激して話し手と聞き手の間に共感状態を作り上げる。ロジックをどれほど積み上げようと、人間は結局のところ直感的に物事を決めてしまう。相手の感情を刺激する話、とくに身の回りや自分自身に被害が及ぶかもしれない「恐怖」は人の心を大きく動かす。話し手と聞き手でその「恐怖」を共有することにより、強い共感が得られる。

ストーリーを使う

ストーリー(物語)は人の心を強く惹きつける。特に、苦労や挫折を乗り越えて成功を収める話は万人の心をがっちり掴める。

最初から長々としてストーリーを構築するのは難しいので、まずは30秒ストーリーを組み立てる。要素は3つ。

  1. 前はこうだった(Before)
  2. それがこうなった(After)
  3. それによって気づいた(教訓)

説得のルール

説明のルール」と「共感される話し方のルール」をバランス良く組み合わせて、「説得力のある話」をする。具体的なノウハウがいくつかある。

イメージを想起させる

相手の頭の中に「絵」が浮かぶように、叙景的、説明的な言葉を使う。五感を刺激するような表現があればなお良い。

数字を使う

まず、数字は具体的かつ正確に伝えるとイメージが湧きやすい。つまり、「たくさんの」よりも「約1万人」の方が適切だし、「約1万人」よりも「1万561人」の方が適切。

また、数字を使う上で重要なのは、希少性や大きな変化、並外れたスケールによって感情を動かすこと。「30倍」「9割減」「東京ドーム115個分」「0.01%」など、表現の工夫によって思い通りの印象を与えられる。

話の対象や中身を絞り込む

時間でも場所でも人でも、絞り込むほど、相手は頭の中に映像が浮かびやすくなり、説得力が増す。何百人ではなく1人、会社全体ではなく社員、その人全体ではなくワンシーンやエピソードというように、一部分にスポットを当てる。

馴染みのない比喩

ありきたりではない、それでいて納得しやすい比喩を使う。たとえたいと思う事象の形状や特徴に当てはまる言葉を連想ゲームのように思い浮かべ、鮮烈なイメージかつジャンルが掛け離れている言葉をチョイスする。

重要だと伝える

単純だが実に便利なテクニックは、「この話は重要ですよ」というシグナルを発すること。

  • 今日、ぜひ覚えていただきたいたったひとつのポイントです。
  • これだけは聞いてください。

といった言葉を前置きして、注意を引く。前置きの後に、一拍置くと効果的。トーンやスピードにメリハリをつけると更に効果が上がる。

また、「たった/わずか/いますぐ/だけ/に限り/限定」という言葉も聞き手の脳を覚醒させやすい。

プレゼンのルール

カッコつけない

人前に出ると緊張するという人は多い。それは、「失敗して恥をかきたくない」という変なプライドがあるから。「いいカッコしたい」というプライドを捨てて体当たりで望むことが上手なプレゼンをする秘訣。

声のエネルギーとテンションを上げる

「ド」「ミ」「ソ」の音程で声量を上げながら3回「ヤッホー」と言ってみる。3回目の「ヤッホー」の声の高さと大きさで第一声を発する。また、「こんにちは~」と挨拶をしたら、聴衆から「こんにちは~」という反応が返ってくるのを待つ時間を十分に取る。このやり取りをセッティングするだけで、聴衆と心を通わせ、脳の緊張を解く効果がある。

言葉のキャッチボールを意識

「でしょうか」「ですよね」といった問いかけや質問を多用することで、聞き手を巻き込むプレゼンを行う。あるいは、語尾の「。」を「?」変えるだけでも効果がある。プレゼン=会場にいる一人ひとりとの対話の積み重ね、という意識を持つ。

冒頭のインパクト

プレゼンは冒頭30秒のインパクトが勝負。聴衆が既にプレゼンターの名前や経歴を把握している場において、自己紹介とお礼で入るような退屈なプレゼンはしてはならない。

基本的な冒頭テクニックは以下の5つ。

  • ユーモア:鉄板ネタの用意
  • サプライズ:鮮烈な話題
  • ストーリー:聴衆との距離を縮める軽いエピソードやメインメッセージに紐づく話
  • 質問:聞き手の興味を引く質問
  • 告白:「じつは私・・・」だけで興味を引ける

さらに上級のつかみとして次のようなスタートもある。

  • 「立って/深呼吸してみてください」
  • 動画を見せる
  • 名言や格言の引用から入る
  • 大胆な宣言をする
  • 「想像してみてください」

アイコンタクト

良いプレゼンのために何か一つだけしか変えられないとして、変えるべきは間違いなく「アイコンタクト」

日本人は、アイコンタクトがほぼなかったり、あったとしても全体を眺めるとか、会場を数ブロックに分けて漠然と視線を送るといったことをしているが、それらはすべて間違い。
正しいアイコンタクトは、観客一人ひとりと順番に目線を交わす方法。聴衆が「この人は私に話をしている」と思えるかどうかが重要。

また、資料に目を向ける時間は3割未満、つまり、7割以上の時間は聴衆を見て話すことを心がける。苦手な人は、少なくとも、冒頭の30秒/情報が少ないページやスライド/強調したいメッセージ/場面転換、のシーンだけは聴衆を見るようにしてみると良い。

魅せ方のルール

自信に満ちた、カリスマのようなオーラをまとうコツはいくつかある。

まずは自信があるフリでいい

そもそも自信は客観的な基準があるものではない。本当に自信がある人だろうが、自信があるフリをしている人だろうが、他人からの見え方は変わらない。ならばとりあえず自信があるフリをしていればいい。

ちなみに、力強い「パワーポーズ」をとるだけで、自信と関係性が強いとされる「テストステロン」が上昇するという研究もある。

胸を張る

しっかりと胸を張って、大きく振る舞う。大げさなジェスチャーなどもパーソナルスペースを大きく確保するという効果がある。
プレゼンのスタイルの基本形は、しっかりと背筋を伸ばし、広げた肩からすとんと両脇に手を落とした状態か、両手をおへその上で組む体勢。

シンプルに言い切る

回りくどい表現はシンプルな表現に変える。

  • 「~ことといたしました。」→「~いたします。」
  • 「~いきたいと考えております。」→「~まいります。」

「思います」「考えています」も極力減らし、はっきりと言い切る。

沈黙を恐れない

沈黙は恐れるものではなく、活用するもの。「えー」や「あのー」で間を埋めるよりも、しっかりと空けておいたほうがオーラを発揮するのに効果的。

まとめ

様々な場面での話し方のコツについて、網羅的にまとめられた1冊だった。個々のテクニックはさほど難しいものではなく、ルールをきちんと把握すること、それを実践することが大切なのだと気付かされた。

本記事では割愛したが、書籍内では具体例が豊富に盛り込まれており、よりわかりやすい内容となっているので、気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。

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