たった5分でわかる『一対一でも、大勢でも 人前であがらずに話す技法』

『一対一でも、大勢でも人前であがらずに話す技法』の表紙画像 コミュニケーション

2011年8月に初版が発行された本。

著者の森下裕道氏は、接客・営業コンサルタント。接客、営業、人材育成、人間関係のコミュニケーション問題の観点から、講演活動、執筆などで幅広く活躍している。

本書は、面接、プレゼン、恋愛など、多くの人が緊張してしまう場面について、その対応策を解説したものである。
ページ数はエピローグまで含めて約240ページ。専門用語などは登場しない、かなり読みやすい本となっている。

本記事では、特に重要な部分を抽出して解説する。

あがる原因は「見られている」という意識

人によって緊張する場面は異なる。例えば、面接を受けるとき、人前で祝辞を頼まれたとき、慣れない高級レストランに行ったとき。これらのケースは一見バラバラに思えるが、実は緊張している人が「見られている側」という意識を持っているという点で共通している。

逆に言えば、「見られている側」という意識を払拭し、「見ている側」に立つことによって、緊張しなくなる。意識を自分自身ではなく、相手に向け、観察し、よく知ろうとすれば、自然と緊張は解けていく。

見ている側に立つためのトレーニング

相手の長所を見つけるよう心がける

人と会ったら、まずは相手の良いところを見つけようと観察するクセをつける。良いところや良い変化を見つけたら、口に出してほめるようにする。逆に、悪い変化を見つけたら気にかけてあげるようにする。これを習慣化することで、相手をしっかり見るようになる。

部屋の様子や人数をよく見る

講師を務めるセミナーの会場や試験会場に入ったときなどのケース。まずはどんな部屋で、どれくらいの大きさで、何人くらいの人がいるのかをよく見る。こうすることによって、いち早く会場全体を自分の心の支配下に置くことができ、会場の雰囲気に圧倒されてしまうのを防げる。

このトレーニングは、普段の電車、会議、レストランなど、自分が人前で話す側でないときにも実践しておくと、本番でスムーズに実行できるようになる。

目を見て話す

まず、目を見て話すだけで、話の説得力が増すというメリットがある。
ポイントは、相手と目を合わせることではなく、相手の目を観察しようと意識すること。簡単な方法としては、2~3秒ごとに視線をずらしながら、相手のまばたきの特徴を観察するといい。

目の観察ができるようになったら、次は目線の動きに着目する。人によってパターンは異なるが、同じ人であれば、「ポジティブなこと」を考えるときと「ネガティブなこと」を考えるとき、目線がそれぞれ一定の動きをすることに気づくだろう。話の内容と目線の動きを関連付けることができれば、目の動きを見るだけで相手の考えていることがわかるようになる。

相手の欲求、クセ、本音を観察する

お酒の席での各人のふるまいには人間性が表れるので、絶好の観察場所と言える。グチを聞かされることもあるだろうが、グチにはその人の願望が詰まっているので、それをプラスの方向に変えてほめてあげるといい。

また、人はその人の価値観で他人をほめるので、ある人が他人をほめているとき、どういう観点でほめているかを見ればその人の価値観がわかる。例えばファッションをほめる人はファッションに重きを置いているし、頭の回転をほめる人は頭の回転を重視している。そして、それは自分がその人をほめる番になったときに、どういう点をほめれば喜んでもらえるかのヒントになる。

表情や動作の変化を見る

目線の変化と同じように、感情が変化したときには、表情や動作にも一定のパターンが表れる。顔色や口の変化、眉、鼻、耳、手の動き、話しているときの上半身の揺れなどを、感情の変化と紐付けて細かく観察することによって、相手の考えを読めるようになる。

日常生活でも訓練する

普段の生活でも「見ている側」になるためのトレーニングの機会がある。

  1. 人に道を尋ねる
    目を合わせて相手の話を聞き、最後に目を見てお礼や感謝の言葉を伝える。
  2. セミナーや講演会で手を上げて質問する
    質問タイムになったら誰よりも先に手を上げ、講師の答え方や動きを見る。
  3. 映画館の最前列から観客席を見る
    誰かを探す素振りをしながら、1人ひとりの顔をよく見る。

過去のトラウマや未来の不安の払拭法

多くの緊張は

  • 過去のトラウマによる緊張
  • 現実の緊張
  • 未来の不安による緊張

の3つの要素で構成される。

しかし、本来、現在の緊張に関係しているのは「現実の緊張」だけのはずであり、あとの2つは、緊張している本人が勝手に作り出して増長させているにすぎない。

過去のトラウマ

過去のトラウマを克服する方法は、「自分自身がその問題に向き合う」こと。

まずは、いつ、どんなとき、どんな状況でその出来事が起こり、どんな気持ちになったのかをできるだけ具体的に箇条書きする。次に、少し時間をおいて気持ちが落ち着いたらそれを眺め、後輩や部下から相談されたと仮定して、先程の箇条書きの下にアドバイスを書き込む。

この作業はつらさを伴うが、過去の問題に向き合って自分に取り込むことが、トラウマ克服につながる。

未来の不安

未来の不安を払拭する方は非常に簡単。それは、「準備を徹底的にする」こと。
前々からあらゆることを想定して、それに対する準備を入念に行っておけば、不安を感じることはなくなる。例えば、自己紹介やプレゼンだったら、事前の練習を録音して、何度もチェックすればいい。

気をつけること

「緊張している」と言わない

「緊張する」と口にするほど、緊張するように自己暗示をかけてしまっている。
そこで、今は緊張しないという自己暗示をかけるために「以前は(昔は)、緊張した」などと言うように心がける。

否定語を使わない

潜在意識は否定語を理解できない。つまり「緊張しない」と言っても、それは潜在意識的には「緊張する」と同じ意味になってしまう。そこで、「緊張しない」→「リラックスする」などのように、否定語を肯定語に変えるクセをつけるといい。

結合法を使う

「リラックスする」のように、本来は意識では操作できないことを、意識してできること(例:深呼吸をする)とセットにすることによって、意図的に引き起こせるようにする方法が結合法。
方法は単純で、「深呼吸した。深呼吸したらリラックスした」というように、結合して話すだけ。強く意識せずに、さらっと話すことがポイント。

土壇場の対処

  • 笑ってしまうことを思い浮かべる
  • 周囲の人へ感謝する
  • 試合直前のスポーツ選手のように数回飛び跳ねる
  • 深呼吸する
  • 座っている状態で、息を吐きながら体を左右に2~3回ずつひねる
  • 手のひらの中央付近を、反対側の手の親指で指圧しながら、ゆっくりと息を吐くのを数回繰り返す

ピンチを切り抜けるテクニック

シチュエーションごとに、これまでに触れた内容以外のテクニックを以下で紹介する。

プレゼン

  • 姿勢は正しく、顔を上げ、顎は下げて、ゆっくりと歩く
  • 話し始める前に、参加者の顔をよく見て、ゆっくりと息を吐く
  • (作り笑いだとしても)笑顔で楽しそうに話す
  • 相手視点に立って、興味を持ってもらえるように話す
  • ひとつの事柄を相反する両面から話すことで、より多くの参加者の気を引く
  • 最後に「一番言いたかったこと」と「感謝の気持ち」を伝えて、ビシッと締める

質問

  • 質問してきた人をよく観察して、相手視点に立つ
  • 「逆にあなたはどう思いますか」と切り返す(「あなたがどう思うのかが重要です」で押し切る)
  • 突然の質問で答えが思い浮かばなかったら、とりあえず「それは3つあります」で話始めながら考える(実際に3つなかったら「本当に重要なことは2つなので1つは省略する」、4つ以上あったら「冗長になるので特に重要なものだけ話した」で誤魔化す)
  • 相手が納得しない場合は、自分の主張は崩さず、相手の考えを認めて、場を流す

会議

  • 会議室へ一番乗りし、後から入ってくる人を観察する
  • 声は語尾まで大きく、はっきり、普段よりも少しゆっくり話す
  • 上司や偉い人は、デフォルトでつまらなそうな顔をしているので、気にしない
  • まず結論を話し、その後に理由を続ける
  • 相手と反対の意見を言うときも「しかし」「でも」は使わず、いったん相手の意見を肯定し、「だから」で反対意見を始める(文法的にはおかしいが、会話ならバレない)
  • 「ご存知だと思いますが」「すでにお気づきだと思いますが」で始めた話は、相手の否定を受けにくい
  • 相手の意見にしっかりと耳を傾ける

面接

  • 自分が会社に選ばれるのではなく、自分が会社を選ぶのだという心意気で臨む(偉そうにはしない)
  • 自己分析は綿密にやっておく
  • 最初の笑顔の挨拶は極めて重要
  • 取り繕うよりも、正直に「わかりません」と言ったほうがいいこともある
  • 質問タイムで「特になし」は絶対ダメ(質問がないなら今までの発言の補足や自己アピールでもいい)
  • 最後は、話を聞いてくれたことに対する感謝の言葉を伝える

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まとめ

人前であがらずに話せるようになるための技法について、実践的な方法が丁寧に解説された一冊だった。具体的な行動だけでなく、意識の持ち様についても解説されている点が有用である。
本記事では割愛しているが、書籍内では、イラストやエピソードを交えてよりわかりやすく解説しているため、そのあたりが気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。

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