たった5分でわかる『人前で話すのがラクになる!5つの魔法』

2011年11月に初版が発行された本。

著者の金光サリィ氏は、メンタルコミュニケーショントレーナー。脳科学、心理学の学習で得た知識をもとに、自らのあがり症を10日間で克服した経験を活かし、ビジネスサポート等を提供している。

本書は、あがり症を克服し、大勢の聴衆の前で魅力的な話をするようになるための方法をまとめたものである。
ページ数はあとがきまで含めて約200ページ。難解な内容や用語は登場しないので、移動時間などに手軽に読めるような本である。

本記事では重要な部分を抽出してまとめている。

言葉

例えば、「○○を思い出さないでください」と言われたときに、嫌でも○○を思い出してしまうことからわかるように、脳は否定形を認識できない。だから、「緊張しませんように」とつぶやいたり考えたりするのは、むしろ緊張を招く結果になってしまう。

肯定形かつ完了形、または現在進行形の文言(例:「私は人前で楽しく話した」「私は人前で楽しく話している」)を唱え、それをイメージする。完了形または現在進行形にするのは、「既に確定している(=失敗していない)」というイメージを脳に植え付けるためである。効果的な時間帯は寝る前と起きた後。

他人をほめることも効果的。右脳は「主語を認識しない」という特徴がある。つまり、他人をほめた場合も、自分をほめた(ポジティブな文言を唱えた)ときと同じ効果がある。

態度

感情と態度は密接につながっており、態度をコントロールすることによって、感情をコントロールできる。形から入っても、後からちゃんと気持ちがついてくるというわけである。

このことを応用して、人前で話すのが上手な人を徹底的に真似するよう心がける。表情、歩き方、立ち方、身振り手振り、目線、声の出し方、喋り方、息の吸い方など、できるだけ細かい部分まで真似をして、感情(セルフイメージ)をポジティブ(成功)へと近づける。

次の順で身体を動かすと、自信が湧いてくる。

  1. 直立する
  2. 両肩を前→上→後ろへと回してストンと落とし、体側に保つ
  3. 胸を開く
  4. 真正面より5~10センチ上を見る
  5. 微笑む
  6. 胸を上側に引き上げる

行動

とにかくまずは行動に移すことが大切。脳は変化を嫌う習性があるので、最初はハードルが高いが、「毎日続けなくてもいい」くらいの気軽な気持ちで行動を断続的に続けることによって、脳がだんだんと変化に慣れてくる。

変化に抵抗するのは自分の脳だけではない。周囲の人(家族や友人)も、あなたの変化に抵抗し、元の状態に引き戻そうとしてくる。そういった抵抗に屈さず、行動することをやめなければ最終的には以前より多くの理解者が周りに集まってくる。

トレーニングの効果をより高めるには、「本番=終了の日」を作ることが重要。1ヶ月以内に終了日を設定し、本番を成功させ、その経験を蓄えたらトレーニングは完了である。

イメージ

マイナスの記憶をプラスの記憶で上書きすれば、辛さは解消できる。とはいえ、上書きできるだけのプラスの記憶を常に生み出せるとは限らない。そういう場合には、「記憶を架空の成功イメージで上書きする」方法を用いる。

方法は以下のとおり。

  1. A4程度の紙を用意する
  2. 中央に自分が人前で楽しそうに話している絵を描く
  3. 自分の周りに気持ちの上がる言葉(大成功・ハッピー・ワクワクなど)を書く
  4. 聴衆を抽象的に笑顔で描く
  5. 聴衆の顔の間を言われて嬉しい言葉(かっこいい・なるほど・もっと聞かせてなど)で埋め尽くす
  6. 書いた紙を常に目に入るところに貼る
  7. 成功の喜びを強く感じながら笑顔でその絵を見る

上記の方法も「言葉」と同じく、起床直後と就寝前が効果的。

内容のまとめ方

個人差はあるが、聴覚優位の人や体感覚優位の人は、原稿を読むのが得意ではない。その結果、読むことに集中してしまい、感情が疎かになったり、棒読みになってしまいがち。

そういった人には、キーワードだけを紙一枚にまとめ、カンペとして使いながら話すのがおすすめ。自分だけが分かれば良いので、体裁を整える必要はない。

まとめ方は「マンダラボックス」がおすすめ。書き方は次のとおり。

  1. 紙の中央に四角形を描き、その中にタイトルを書く
  2. 1の四角形の周りに更に四角形を書き、その中に主要キーワードを書く
  3. さらに外側の四角形に詳細のサブワードを書く

ボックス(四角形)の数は、話す時間や状況に応じて調整する。
そして、本番前日には必ずイメージリハーサルを行う。

スピーチ

スピーチを成功させる鉄板のテクニックが7つある。

  1. ステージ袖からの登壇時には、聴衆と逆側の足を踏み出し、聴衆側に身体を向けると、聴衆が心を開いてくれる。
  2. 拍手をされたときには、胸元に手を当てたり、拍手をしてくれている聴衆を見てからお辞儀をするなど、「ありがとう」と受け入れるジェスチャーをする。
  3. 聴衆から見えているもの(マイク、コップなど)をあえて動かすと、「私がこの場を仕切ります」というメッセージを聴衆の潜在意識に伝えられる。
  4. 「みなさん、こんにちは」の前に「あらためまして」や「それでは始めたいと思います」などの前置きを入れると、これから挨拶することが聴衆に伝わるため、聴衆からの挨拶の息が合い、一体感が生まれる。
  5. 聴衆にお題や質問を投げかけると、大勢の視線のプレッシャーをかわせるだけでなく、聴衆の潜在意識に「自分は能動的に参加している」という意識を埋め込める。
  6. 肩を目一杯横に広げ、視線を移すときも目や顔だけでなく、肩と頭の位置関係を保ったまま動かすと、相手に落ち着いた良い印象を与えられる。
  7. 意識の中では左側が過去、真ん中が現在、右側が未来を表す。聴衆と向かい合ってジェスチャーや移動をするときには、自分から見た「正しい方向」とは逆の方向に行うように心がける。

まとめ

  1. セルフイメージを高める言葉を唱える
  2. 態度をコントロールする
  3. 本番の日を決めて新しい行動を積極的に行う
  4. 成功のイメージの絵を描き、それを見て記憶を上書きする
  5. 話の内容をマンダラボックスで書く
  6. イメージリハーサルをする
  7. 大成功の喜びを全身で噛みしめる

という、シンプルながら効果が高いとされる方法が解説された1冊だった。脳の研究内容に関しては学者や時代によって諸説あるし、個人差もあるが、実際に筆者が実行して効果があった方法なので、参考になる人もいることだろう。

本記事では割愛したが、書籍内ではイラストや筆者の体験談を交えて、上記のことがより分かりやすく解説されているので、そのあたりが気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。

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