2013年10月に初版が発行された本。
著者の高橋フミアキ氏は、大手広告代理店に10年間勤務した後、2007年に文章スクールを立ち上げ、企業向けにレポートやメール、論文の書き方を講義しているほか、フリーライターの育成にも尽力している。
本書は、ビジネスシーンやSNSなどで、人の心をつかむ文章の書き方について、そのテクニックを77個にまとめたものである。
ページ数はあとがきまで含めて200ページあまり。
本記事では、重要な部分を抽出してまとめている。
タイトルのテクニック
文章において一番大事なのは言うまでもなく中身だが、情報が溢れている現代においては、魅力的なタイトルがつけられていないと、そもそも中身を見ることすらしてもらえない。中身を見てもらうために、読者に「読むに値する」と感じさせるようなタイトルをつける必要がある。
数字
客観的な数字には説得力があるので、形容詞や副詞は具体的な数字に置き換える(例:簡単→たった3分で)。また、50や100などの概数よりも、49.5や101など、細かい数字のほうが信憑性が増すので、ギリギリまで細かく表示したほうがいい。
問いかけ
タイトルに問いかけを入れると、読者の好奇心を刺激したり、同意したくなったり、結果をイメージさせたりする効果が生まれる。記事のテーマを考え、読者が抱くであろう疑問をイメージして、それを問いかけの形にする。
擬声語
読者の五感を刺激する擬声語は、臨場感を増す効果がある。例えば、食べ物なら、味や食感、匂いなどに着目。
ボリューム感
サイズや量、種類が多いことを示すフレーズを入れておくと、お得感が出て読者が食いつきやすい。本文から規模や大きさを感じさせるものを見つけ、それに合った表現を考える。
焦燥感
不安になったときに解決策を知りたがるという、人間の習性を利用し、あえて焦燥感を煽るような表現を入れる。できるだけ具体的な読者層をイメージし、彼らがどんな不安を抱えているのかをリサーチする。
緊迫感
危険性のある要素を、人は見逃すことができない。本文から何かしら危険性がないか探し、読者の関心事と結び付けて表現できるといい。
安心感
自分が抱えている不安を解消してそうなコンテンツには惹かれてしまうもの。安心感を与える手段としては、共感・第三者の証言・根拠を示した断言などがある。
割安感
ただ安いだけでなく、「良いものを割安に」ということが重要。質が悪いから安いと思われないようにするため、「在庫処分」など、割安になっている理由を入れることが大切。
クオリティー感
安くなくとも、価格に見合う価値があることをアピールできれば、購買意欲を刺激できる。商品やサービスのウリを考え、それを具体的に表現する。
新規性
新しいもの、新鮮なものに人は魅力を感じる。
利便性
以前よりも少ない労力、時間で目的を達成できることをアピールする。
専門性
専門性をアピールすると、信頼感と期待感を上げることができる。読者がどんなことを求めているかを探り、それに適した専門性をアピールする。
希少性
希少であること自体に価値がある。数や期間、場所などをあえて限定し、意図的に希少性を作り出すのも有効。
心地よさ
ストレスにさらされている現代人は「リラックスしたい」という欲求を抱いている。擬声語を交えながら、癒やしを連想させるフレーズでアプローチする。
命令形
理不尽な命令にはイライラするが、自分を後押ししてくれるような命令表現は、悩みから解放されたような高揚感をもたらす。
脅し文句
自分に降りかかる危険やトラブルを回避したくない人などいない。危機感を煽る表現を使うことで注目を集めることが可能。
メソッド
「目的+方法」というタイトルで、ゴールまでの最短ルートを知ることができるという期待を与える。
非道徳な言葉
不謹慎な言動でブログやSNSが炎上することからわかるように、非道得な言葉には人を動かすインパクトがある。ネガティブな言葉ほど拡散しやすいという性質を利用する。ただし、本当に炎上してしまうようなことは書かない。
タイムリーなニュース
新規探求性や同調性、メディア効果をうまく利用し、注目を集める。
タイトルの複合テクニック
これまでに紹介したタイトルのテクニックを組み合わせると、より効果が上がる。
タイトル+サブタイトル
サブタイトルにメインタイトルとは異なる切り口を書く、メインとサブで雰囲気を変えて緩急をつける、メインの詳細をサブで説明するといった方式がある。
ポジティブワード+ネガティブワード
真逆のワードを並べられると、人はその違いや理由を知りたくなる。
簡単さ+理想の姿
「簡単さ+理想の姿+方法」というタイトルで、入口のハードルを下げて読者を引き込む。
ランキング+呼びかけ
世の中にランキングが溢れていることからわかるように、人は人気なもの、売れているものに関心がある。さらに、呼びかけを使うことで、それを他人事から自分事に変える効果がある。
時代性+(だからこそ)対応策
ニュースにアンテナを張り、「○○の時代」に当てはまりそうなキーワードを集め、対応策と組み合わせる。
弱点+じつはそれが強み
「いい話には必ず裏がある」と読者が気づいているからこそ、あえて弱点をさらすことには効果がある。強みと弱みが表裏一体な要素を提示することにより、形式上は弱みを見せているのに、実際は強みをアピールしているという構造を作り出せる。
メリット+その先のメリット
簡単に成し遂げられそうなことの後に大きなメリットを配置する(例:月3,000円の節約→ヨーロッパ旅行)ことで、読者の期待感を大きく膨らませる。
一般論+じつは~
自分が信じている一般論を否定されると、その理由を知りたくなる。
「あなたのことですよ」+勧誘
「○○なあなた!□□してみませんか?」というよくあるフレーズ。対象を限定することで、自分事として認識させる。
あきらめていませんか?+簡単な解決法の提案
最初の問いかけの部分で共感を示すことにより、後から提示する解決法に説得力と期待感を抱かせることができる。
敵を作る+撃退方法(自分が挑む)
共通の敵を作ると強い連帯感が生まれることを利用する。ただし、特定の個人や企業を敵として提示するのは問題なので、そうではないもの(例:ジメジメ梅雨、多忙、手荒れなど)を挙げる。
アピールポイント+パロディー
ベストセラーやヒット映画、有名なセリフ、流行語などをアピールポイントと組み合わせる。
悩み+安心感
読者の迅速な行動を促すことが目的なので、緊急性の高い悩みに焦点を当てると効果的。
凡人ができた+次はあなたの番
凡人が大きな成功を収めた話から始めることにより、「自分にもできる」と思わせる効果がある。
リード文のテクニック
リード文は、前書き部分のことで、タイトルの直後に書かれている、タイトルと本文の橋渡しをする役割がある文章。タイトルの次に目に入る部分なので、内容を読んでもらうためには、リード文の工夫をすることが必要不可欠。
クライマックスを見せる
映画の予告編がそうであるように、本編の中で印象的な部分を強調して持ってくることにより、読者の興味を引き出す効果がある。
心のつぶやきを並べる
感情、特に悩みを告白すると、読者の共感を得やすい。
魅力的な提案
悩みの解決法や、悩みを解決して到達できるゴール地点を示すと、読者の興味を引きやすい。
読み手の悩みに合わせる
共感を示されたり、同じ悩みを持った人物の具体的エピソードを示されたりすると感情移入しやすい。
虚栄心をくすぐる
「心優しい」「賢明な」「鋭い」など、自己承認欲求を満たしてくれるような文言に、人は食いつきやすい。
好奇心をくすぐる
クイズになりそうな要素を本文中から探し、クイズ形式の文章を作る。読者は、答えを知ろうと無意識に文章に集中してしまう。
読み手を特定する
「みなさん」ではなく「○○なあなた」という表現にすることで読者を絞ると、自分事として読んでもらいやすくなる。
特定の人以外をあえて禁止する
「○○の人以外は読まないでください」などの表現を使う。禁止されると、それをむしろしたくなるという心理効果(カリギュラ効果)を狙ったもの。
理想と現実の両面を見せる
理想と現実のギャップを見せつけることで、自己実現欲求をくすぐることを狙う。物語風の文章にすると効果的。
コミットメントさせる
冒頭で読者に選択を迫り、責任感を抱かせる。コミットを取り付けると、目標達成のためにモチベーションが上がりやすくなる(宣言効果)
書き出しのテクニック
工夫を凝らしたタイトルやリード文で本文に誘導させることに成功したとき、本文を最後まで読んでくれるかどうかは、はじめの数行で「おもしろさ」や「わかりやすさ」を感じてもらえるかどうかにかかっている。以下に紹介するテクニックで、読者を本文の世界へ引き込むことが重要。
疑問文
疑問符のついた文があると、読者は答えを見つけるために次の文を読み進めてくれる。
呼びかけ
「○○しませんか?」「○○していますか?」という呼びかけで読者の行動や気持ちの変化を促す。その後は、それをしたほうがいい理由、それをしたときのメリットを示す文を続ける。
超短文
書き出しを10文字程度の超短文にまとめると、テンポがよくなる。2文目には1文目の理由となる文をつなげる。
結論
いきなり断定されると反論したくなる心理を逆手に取る。読者は根拠を知るために文章を読み進めることになる。
セリフ
2名以上の、読者と近い人物を設定し、会話を展開させることで、読者に感情移入させることを狙う。
感情
感情をシンプルに表現する。超短文との相性が良い。2文目でその感情の理由を説明する。
驚き
驚きを示すフレーズや、読者が驚くような事実を提示し、疑問や好奇心を換気させる。
誇張表現
極端すぎる表現で、読者の感情を揺さぶることを狙う。
話題のニュース
話題性の高いニュースは、「読むべき文章」として認識されやすい。ジャンルは、テーマと読者層に合わせて選定する。
短いエピソード
リアリティーのある短いエピソードのほうが読者の興味を引ける。
予告する
誰のどんな話かを簡潔かつ大げさな表現で予告すると、内容に対する期待が膨らむ。ただし、ネタバレまでいってしまうと魅力がガクッと落ちるので注意。
長文のテクニック
一つの段落には一つの内容を書く
話題が変わるときには段落も変える。無関係ない内容を思いつきでどんどん放り込まないように注意。
感情を揺さぶる
目標を設定→障害の発生→登場人物の心理的葛藤→逆境を乗り越えて成功、の順で物語を構成すると、読者は感動し、共感する。
エピソードで語る
難しいことを説明する際には、わかりやすいたとえ話を作る。2人の登場人物を描き、二項対立の図式にして、2人の違いを1点に絞るのがコツ。
出来事(現象)+理由
出来事に対して、理由が分からずに話が進むと、読者はストレスを感じて読むのをやめてしまう。結論→詳細の順で文を作る。
結果を段落の頭に入れる
最初に結果が示されている文章のほうが、文脈を把握しやすく、スムーズに読みやすい。
たしかに○○+しかし△△
想定される反論をあらかじめ○○で書き、そこに共感を示した上で、○○のデメリットを△△で示すと、自分の主張を通しやすくなる。
「想像してみてください」を入れる
相手が得られるものや失ってしまうものをイメージさせることで、文章に引き込み、行動を促す効果がある。
情景が目に浮かぶフレーズを入れる
文の中に色や動きを入れることで臨場感が増す。動きを入れる場合は、文末を動詞にするといい。
緊急性の高い問題を設定する
読者は遠い未来の問題は気にも留めないが、目の前に迫っている問題に対しては、積極的に解決方法を探ろうとする。
一つのメッセージを3つのエピソードで語る
人は見聞きしたことをすぐに忘れてしまう生き物だが、一つの主張に対して、角度を変えたエピソードを3つも提示すれば、さすがに記憶にこびりつく。エピソードは、身近なことから大きなことへと順に展開していくのがセオリー。
エピソードを実況中継する
5W1Hを設定し、五感に訴える要素、登場人物のセリフ、心理状態の変化を描写する。感情の動きを示すような文章で有効。逆に説明文や公的な文章には不向き。
敵を設定して議論する
読者の持つ悩みや苦しみ(例:受験、就活、上司との関係など)を探し、共通の敵として設定することで、話を受け入れてもらいやすくなる。ただし、実在する特定の個人や団体を設定してはならない。
統計データを入れる
統計データ→データの分析→データの結論→自分の意見、の順で話を展開させると説得力が増す。
権威のコメントを入れる
学者や専門家、有名人などのコメントがあるだけで、文章に説得力が生まれる。特に、有名人などは、文章で示されている商品と何ら関係がないとしても、大きなプラスの効果がある(ハロー効果)。ただし、発言や著作物を利用する場合には、出典を明示する必要がある。
最初と最後に同じフレーズを入れる
結論となるメッセージを冒頭に持ってきた場合に有用なテクニック。文章に引き締まった印象を持たせられる。
まとめ
ビジネス、プライベートを問わず、あらゆる場面で必要となる文章について、読者の心をつかむコツが示された一冊だった。
ただし、対象となる文章が広範であるため、必ずしも自分が書きたい文章に適したテクニックとは限らない。例えば、Webライティングに特化したテクニックを知りたいということであれば、以前ご紹介した『100倍クリックされる超Webライティング実践テク60』などを読むほうが良いだろう。本書は、対象を絞らない、全般的な文章テクニックに関する知識を得るために役に立つ。
本記事では割愛したが、実際の書籍内では、プロがどう考えて文章を書くのかといったプロセスまで詳しく記されているので、そのあたりまで知りたい方にはぜひ手にとってみることをおすすめしたい。
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