たった5分でわかる『死ぬほど読めて忘れない高速読書』

2019年9月に初版が発行された本。

著者の上岡正明氏は、実業家・投資家。また、 脳科学と神経心理学を研究テーマとし、学会で論文等を発表しながら大学での客員講師を務めるなど、幅広い分野で活躍している。

本書は、15年間、1日1冊のペースで読書を続けている著者が、「高速で読めて、記憶に定着し、アウトプットに使える読書術」について解説したものである。
ページ数はあとがきまで含めて230ページあまり。高速読書を提唱する人物の著書なだけあり、要点を捉えやすい構成になっているので、短期間で読むことができる。

本記事では、特に重要な部分を抽出して解説する。

高速読書は速読とは違う

速読とは、速くたくさん読むことを目的とする。対して、高速読書は、たくさん読んで記憶に定着させることを目的とする。そのため、高速読書では、速読によくある、ページ全体を写真に撮るように見たり、眼球を素早く動かすといった、特殊な能力を必要としない。

高速読書は、「1冊を30分で3回読む」読書法。
30分の内訳は、1回目は15分、2回目は10分、3回目は5分で、各回の間は時間を空け、場所を変えるのが望ましい。なお、時間は200ページの本を読む際の目安である。

読み始める前の下準備

実際の高速読書に入る前に、やっておくべき準備がある。そんなことをやっている間に読んだほうが速いのではないかと思われるかもしれないが、この準備をしておくだけで、結果的に読むスピードは格段にアップする。

その準備とは「読む目的を明確にしておく」ということ。
自らの目的、願望、手に入れたいスキルやポジションなどをあらかじめ書き出して、目的意識を持っておくことが大切。それによって、読むべき本は明確になるし、読んでいる最中も、目的に沿う箇所に目が行き、無駄な部分で時間を使うことはなくなる。

本を読むのはあくまで自分のためであり、本のためではない。お金を出して買った本だとしても、自分の役にたたない箇所に時間を使うのは無駄だということを心に留めておく。

高速読書の手順(その1)

1回目(15分)

1回目の読書では、タイマーアプリをセットし、集中して一気に読む。
ポイントは以下のとおり。

  • 本文に入る前に、タイトル→帯→カバーの前そで→著者プロフィールの順に目を通す
  • 目次、あとがき、自分の目的にそぐわない箇所、既に理解した内容を示すイラストや図表は読み飛ばす
  • スピード意識で、読み直さない
  • 漢字中心で意味を把握し、ひらがなは基本的に読み飛ばす
  • 「逆接」と「理由」を示す接続詞以外は読み飛ばす
  • 「つまり何を言いたいのか」を常に意識して読む
  • 重要だと思ったページにドッグイヤーをつける(角を折る)

ドッグイヤーではなく、付箋をつける人もいるが、道具が必要ない、剥がれる心配がないという2点からドッグイヤーのほうがおすすめ。そして、ドッグイヤーの箇所を用いて、2回目の読書に入る。

2回目(10分)

1回目からある程度時間を空け、違う場所で行う。そのほうが脳に記憶が留まりやすい。

2回目の読書では、ドッグイヤーされたページ付近と、1回目で理解できなかった部分のみを読む。その際、青ペンで思ったことを直接ページに書き込む。これはエピソード記憶を利用した手法。重要度が高いと思う部分ほど、大きく、汚く、感情を込めてメモする。

ちなみに、青ペンを使うのは、青色が思考力や分析力の向上に寄与すると言われているため。赤ペンと違って目立ちすぎず、本文の黒文字に埋もれないのも利点。

3回目(5分)

本の内容や理解度次第では、3回目は読む必要がない。読む場合でも、量としては全体の10%程度になる。

3回目の読書では、後述の「アウトプットノート」をつけることを前提に、「本で得た知識を、どう自分の行動につなげるか」を考え、それを青ペンでメモしていく。2回目の青ペンメモページを中心に、具体的に書き込むのがポイント。

高速読書の手順(その2)

高速読書は、基本的に「その1」の手順で行う。「その2」は集中して読むのが苦手な人、受験生、資格試験受験者、編年体で書かれた歴史の本、学習参考書などにおすすめの方法。

方法は、「その1」で紹介した「1回目」と「2回目」の方法を章ごとに行うのみ(第1章1回目→第1章2回目→第2章1回目→第2章2回目・・・)。時間は1回目3分、2回目2分を目安とし、ドッグイヤーや青ペンなぐり書きは同様に行う。すべての章を2回ずつ読んだら、3回目は5分をかけて通しで読む。

アウトプットノートをつける

アウトプットノートを書く目的は、高速読書で得た知識を自分に役立てること。そのため、感想などを綴る読書ノートとはまったく種類が異なる。

重要なのは、時間をかけないということ。10分程度が目安。時間をかけてしまうと、長続きしなくなってしまう。

ノートの見開きを4分割し、以下のように書く。

目的

下準備で意識した「読書の目的」をここで言語化しておく。

読んだ本

書名のほか、日付や読書タイムなどを自由に記載する。

エッセンス

本のポイントを1文あたり20文字以内で箇条書きにする。

行動プラン

エッセンスから「→」を引いて、行動プランを箇条書きする。

行動プランまで書き終わったら、そのプランの現在の達成度がどのくらいなのか、スコア(10点満点)でスコアをつけるといい。それによって行動の優先度を客観的に定めることができる。

読書はインプットして終わりではない。読書で身につけた知識を実践すること、つまりアウトプットが何よりも大切である。インプットはアウトプットのための手段にすぎない。

高速読書のメリット8選

  • 1ジャンルで入門書2冊、中級レベル3冊、専門レベル2冊、計7冊読めば有識者になれる
  • 論理的思考力、発想力が伸びる
  • 非認知能力(予測する力、感じる力)が高まる
  • アウトプット(行動)することで自信が深まる
  • ノートを見返せば、自分の成長を実感できる
  • 子供の脳の発達に役立つ
  • 直感やひらめきが生まれてくる
  • 集中力が身につく

まとめ

知識の定着とアウトプットに重きをおいた「高速読書」について、方法やメリットを詳しく解説した1冊であった。このタイプの本は星の数ほど出版されているが、「素早く複数回読むこと」「アウトプットすること」は多くの本に共通しており、有効であるという確信を深められた。

本記事では割愛したが、書籍内では、実際のアウトプットノートや青ペンなぐり書きの写真なども掲載されているため、より具体的なイメージを持ちたい方には手にとってみることをおすすめしたい。

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