たった5分でわかる『超雑談力 -人づきあいがラクになる 誰とでも信頼関係が築ける-』

2019年12月に初版が発行された本。

著者の五百田達成(いおたたつなり)氏は、作家・心理カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐に渡って活躍している。

本書は、雑談の技術について解説した本である。会話術に関する本は多数出版されているが、雑談専門の解説という点で、独自性のある本と言えよう。
ページ数はあとがきまで含めて200ページあまり。雑談のジャンルごとに、やってはいけない会話とやるべき会話が具体的に示されており、誰にでもわかりやすい内容になっている。

本記事では、重要な部分を抽出してまとめている。

雑談とは

多くの人は「会話」と聞くと、仲の良い人とのおしゃべりか、ビジネス関連の真剣な話を思い浮かべる。
しかし、雑談は仲の良い人が相手ではなく、真剣な話でもないという点でそれらの会話とは根本的に質が異なる。つまり、雑談とは「微妙な間柄の人と、適当に話をしながら、なんとなく仲良くなる」という会話方式であり、それをスムーズに進行させるには、雑談専門の技術を身につける必要がある。
その技術について、以下で解説する。

基本の7ルール

どんな場面の雑談でも押さえておくべき7つのルールがある。

ルール 補足
雑談の目的は、面白い話をすることではなく、会話のラリーを続けること 会話の継続を妨げるような結論やオチ、論理的データ、「要するに/つまり」などは不要
やりとりするのは情報ではなく気持ち 気持ちを伝える方が情報を伝えるよりも仲良くなりやすい
時事ネタ/ニュースではなく、エピソード/経験談について話す 「体験+気持ち」を擬音を交えながら話す
否定してアドバイスするのではなく、肯定して共感する 真偽や意見の食い違いには目をつむり、相手が気持ちを話しやすくなるように誘導する
質問やあいづちで話を引き出すよりも、大きなリアクションで一緒に楽しむ 気を張って質問をひねり出そうとする必要はない
会話が途切れたときは別の話題を探すのではなく、自分に近い話題に引き戻す 多少の沈黙を恐れず、会話のペースを落として、気持ちを話しやすい身近な話題にシフトする
いつまでも話し続けるのではなく、ほどよいところで切り上げる これまでのルールの逆利用で会話をトーンダウンし、「ありがとうございました」で上手に締める

初対面

初対面の人との雑談のコツは以下のとおり。

コツ 補足
会話のスタートは「こんにちは、○○です」 相手が覚えていない可能性が高いので、2度目3度目でも名乗ったほうがいい
名前を聞いた後はその名前の由来やエピソードを尋ねる 「同じ名前の知人の話」は大して盛り上がらないので避ける
趣味を尋ねるときは「最近ハマってるものありますか?」 「趣味」という言葉は身構えてしまう人は多いので避ける。自分が聞かれた場合も気軽に最近のエピソードを話せば十分
共通の知人ではなく、共通の趣味を探す 話すべきは他人のことではなく、お互いのこと
お互いが知っている話題を話すのではなく、知らないことを教えてもらう 「詳しくない」と前置きした上で、「過去」「現在」「未来」にフォーカスを当てた質問をする
共通の話題にすぐに「私もです」と言うのではなく、しばらくはそのまま相手に語らせる 乗っかる場合でも「私もです。それで、それで?」と、相手が話すように促す。
好きなもの・ことについては「意見」ではなく、「好み」を言い合う 正解などないのだから「いい・悪い」ではなく、「好き・嫌い」の話をして緩く会話する
質問攻めにするのではなく、適度に自分の話を挟む 自分の話の後に「そういうことってないですか?」「そう思いません?」などのフレーズで相手に話を振る
身振り手振りを大きくする 腕を組むのは拒絶のサインなのでやってはいけない
あいづちは「あ・い・う・え・お(あー!・いいですねー・うーん・ええ!?・おーーー!)」 「さ・し・す・せ・そ(さすが・知らなかった・すごい・センスいい・そうなんですか!)」は意外と使いにくい
困る話題は「ありがとうございました」で終わらせる 反論すると話が終わらないので、お礼か他人に話を振ることで切り抜ける
「陽キャ」を目指す必要はない 性格なんて簡単には変わらないし、雑談はテクニックさえ身につければ上手くできる

知人/飲み会

飲み会などでの知人との会話のコツは以下のとおり。

コツ 補足
悩み相談に必要なのはアドバイスではなく共感 「ねー」「わかる」「たしかに」「そうだね」「○○よね」だけ言ってればOK
どういう話かを先に言ってしまう 「オチはないけど」「超どうでもいい話なんですけど」と切り出して相手をリラックスさせる
あだ名や固有名詞を使うとイメージが湧きやすい 加えて、写真を見せたりすると聞き手が飽きない。「その人」などの指示代名詞は使わない
「なにかこだわってるんですか?」ではなく、「なにか特別なことしてるんですか?」と聞く 「こだわり」は「趣味」同様、相手を身構えさせてしまう。聞かれた場合は「習慣」を答える
質問は「どう(HOW)?」で状況や気持ちを尋ねる 「なぜ(WHY)?」は相手にストレスを与える可能性があるので雑談には不向き
事実ではなく、雰囲気で話す 雑談はニュアンスが重要。白黒はっきりするような話題は避けるべき
無理してツッコミを入れるのではなく、「いいねー」「すごい」「かわいい」とただ褒める 素人がツッコミを入れても基本的にすべってしらける
会話の序盤はクローズドクエスチョンでリズムをつける いきなりオープンクエスチョンだと相手が考え込んでしまい、会話が停滞する可能性がある
褒められたときは謙遜せずに、素直にお礼を言う 「お礼+ひと言」で返すと会話を広げられる
褒めるときは「気付き+褒め言葉」 「気付き」のみだと相手は褒められてるのかわからず、リアクションに困ってしまう
無理して話を進めずに、前に戻すのもアリ 今の話題が停滞しそうなら、「ちょっと戻るんですけど」「さっき、気になってたんですけど」で前の話題に戻せばいい
知ったかぶりせずに「なんでしたっけ?」とその都度聞く 正確に記憶していないと気まずいし、会話を続けるのが目的なのだから相手に話させればいい
立ち入った質問には一般論で返す 答えたくない相手・ことは一般論で返すほうがその後の追及を避けやすい
司会者ではなく潤滑油の役目に徹する 「オウム返し」などで話しやすい雰囲気をつくる

職場/ビジネス

上司や取引先との雑談のコツは以下のとおり。

コツ 補足
対等な関係ではなく、先生と生徒のような上下関係で話す へりくだりすぎる必要はないが、わからないことは「門外漢ですみません」「無知で恐縮です」と前置きして教わるスタンスを取る
得意なジャンルではなく、得意な視点を持つ 得意な「視点」「切り口」を持っておくと、幅広いジャンルに対応できる
エレベーターで二人きりになったら、自分から話しかける 会話の中身ではなく、「無視しなかった」という事実が大事
タクシーで二人きりになったら、目に入る街並みの話をする 目についたものを口にしていけば話題に困らないし、突っ込んだ質問もされにくい
話題を変えるときは「そろそろ」ではなく「話変わりますけど」と言う 「全然違う話をしてもいいですか?」なども有効。自然な流れにこだわる必要はない
すべてをカバーするのではなく、特定のキーワードに絞ってリアクションする 会話のゴールや戦略を意識して、落ち着いて対応する
「メモしていいですか?」という勢いで聞く 「メモしてもいいですか?」と言い、スマホや手帳を取り出す。アピールが大事なので、実際にメモしなくてもいい
飲み会ではなく、ランチやお茶に誘う ランチやお茶の方がリーズナブルかつ時間も区切りやすいし、これまでのテクニックがあればお酒が入っていなくても会話できる
遊びに誘われたときはとりあえず「いいですね!」と即答する 断りたいならその後に「先約があった」「繁忙期だった」などと断ればいい
うわさ話をするなら知人・同業者ではなく、芸能人・有名人 自分に親しい人や店のネガティブな話は絶対に避けるべき

まとめ

オールラウンドに使える雑談テクニックから、場面ごとの細かなコツに至るまで、雑談の技術が余すことなく解説された一冊だった。本記事では割愛しているが、書籍内では会話のやり取りの例も豊富に掲載されているため、より具体的なイメージを持ちたい方には手にとって見ることをおすすめしたい。

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