たった5分でわかる『超一流の雑談力』

2015年5月に初版が発行された本。

著者の安田正氏は、株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役、早稲田大学客員教授で、ロジカル・コミュニケーション、プレゼンテーション、対人対応コーチング、交渉などのビジネスコミュニケーションの領域で講師、コンサルタントとして活躍している。

本書は、仕事の場面はもちろん、プライベートのさまざまな場面でも自分をより魅力的に見せたり、短時間で人の心の中にふっと入っていく雑談の方法について記したものである。

ページ数はあとがきまで含めて220ページあまり。
専門的な用語などはなく、具体的な実践例が数多く盛り込まれているため、読みやすい本となっている。

雑談レベルを高めるメリット

雑談のレベルを高めると、以下のようなメリットがある。

  • 自分に対する印象や評価がガラッと変わる
  • 仕事がやりやすくなり、成果も上がる
  • 人間関係の悩みが減る
  • 良い縁に恵まれる
  • チャンスにも恵まれる
  • 表情や気持ちが明るくなって、充実感が得られる

非常に多岐にわたる恩恵を受けられるため、多くの人にとって、上手な雑談は、人生全体に大きな良い影響を及ぼしてくれる。

雑談の始め方

開始1分がカギ

人の評価は会話が始まってから1分で概ね決まる。
よって、この1分で適切な自己開示を行い、距離を縮めることが大事。

この際、自慢話はしないように気をつけたい。
軽い失敗談は気楽な雰囲気を演出できるので望ましいが、相手を不安にさせるような失敗談はしないように注意。

引きつける話をする技術

オノマトペ(擬声語)や身振り手振りを使って話に臨場感を与えると、相手は引き込まれやすくなる。
嘘は良くないが、程度や例え、感情を盛るくらいのことはしてもいい。
一文を短くして、テンポ良く話すことも大切。

ほとんどの人はぶつけ本番では話せないので、これぞという話は3回ほど話す練習をしておくべき。

目的意識

話ベタな人は「話の終着点をどこに持っていくか」というプランニングがないことが多く、それゆえにダラダラと広がりのない話をしてしまいがち。
それを防ぐため、会話の目的や、相手から引き出したい情報・フレーズを予め意識し、それに沿った会話展開を行う。

議論ではなく、あくまでも雑談なので、意見が食い違っても反論はせず、「うかつでした!」と相手の主張を飲み込み、深追いせずに話題をずらすようにする。

話し方

低い声にはメリットもあるが、それ以上にデメリットが大きい。
話をする際は少し高めの声を出すことで、親近感を演出する。

具体的には、自分基準で「ドレミファソラシド」と口ずさんだときの「ファ」か「ソ」の高さで話すと良い。

電話の声は対面より低く聞こえるので、さらにトーン、声量を上げることを意識する。

表情

口を開いているときにも結んでいるときにも口角は上げるようにする。
話すときには上の歯を6本以上見せる。

話題選び

最初の話題は無難なものを選ぶ

最初のきっかけとなる話題は、気候/相手の会社情報/衣服、ファッション/健康/趣味/最近のニュース/共通のこと/出身地/血液型/仕事 の中から選ぶのがおすすめ。

奇をてらった話題にする必要はなく、ありふれたところから話を膨らませて、共通点などをうまく見つけ、相手のふところに入っていく。

注意点として、政治や宗教は雑談のテーマとしてふさわしくないので、避けるようにする。
恋愛や下ネタは、場合によっては一気に距離を縮められる話題ではあるが、ケースバイケースなので基本的には避けたほうがいい。

「笑い」よりも「興味」が大事

あたりさわりのない話題から始めた雑談を盛り上げていくためには、おもしろい話をすることが必要だが、ここでの「おもしろい話」とは、「笑える話」ではなく「相手が興味を持つ話」である。
前者はその場では盛り上がるが、後者のほうが相手の記憶には残りやすい。

おもしろい話をするためには、話のレパートリーが必要なので、自分の本業、健康、スポーツ、気になる商品、映画や本など、異なるジャンルから最新のエピソードを常時5~6個持っておくように心がけたい。

情報源

自分の得意分野や仕事に関連する情報を持っておくことは信頼度向上のために必要だが、相手の興味分野を見極めて、それに対応した実用的な知識を伝えるために、一般的な情報に関してもアンテナを張っておきたい。

以下のような情報源が紹介されている。

媒体 名前
新聞 日経新聞、日経産業新聞
雑誌 プレジデント、日経ビジネス、週刊文春、週刊新潮
テレビ 時事番組、カンブリア宮殿、ガイアの夜明け

上手な聞き方

人は「自分の話を聞いてもらえると嬉しくなる」生き物なので、実際のところ、話す技術よりも聞く技術の方が重要になる。
目安としては、話す2:聞く8くらいの会話量が望ましい。

あいづち

まず、「なるほどですね」「そうですね」は会話の流れを止めてしまうし、真剣に聞いていない印象を持たれがちなので避ける。

あいづちの一例として「さしすせそ(さすがですね、知らなかったです、素敵ですね、センスがいいですね、それはすごいですね)」が紹介されているが、大切なのは、「相手の話に価値がある」というリアクションを取ること。
そして、会話を続けることを意識して返事をする(あいづち+何か喋る)。
また、話を聞く際には、ソフトな表情で相手の目を見てうなずきながら聞くこと。
基本的には相手に視線を向けるべきだが、唯一、感心を示して「さすがだなぁ」というときなどは目をそらしてもいい。

質問

質問をする際に心がけるべきは「意図のある質問をする」ということ。
ただ間を埋めるだけの質問はいずれ手詰まりとなり、会話が止まってしまう。

基本的には、「相手の好きなことや長所を喋らせるための質問」と「自分がわからないことを聞くための質問」がある。

前者の場合には、相手をよく観察し、(良い意味で)他の人とは違う部分を見つけたり、好きなことを語る際に表情が明るくなる瞬間を見逃さないようにする。
「何か特別なことをされているんですか」というフレーズが便利なので覚えておくといい。

後者の場合には、ただ質問するのではなく、自分の解釈や意見、あるいは関連しそうな情報を足して尋ねれば能動的な印象を与えることができる。
質問の答えに対しては、最終的に自分なりの要約を伝えて理解の度合いを相手に伝えることで真面目に聞いている印象を与えることが可能。

相手に合わせた会話の微調整

言いたいことをハッキリ言うタイプ

特徴は以下のとおり

  • 話のテンポが速い
  • 興味がある話への食いつきが良い
  • 途中で遮って質問をしてきたりする
  • 目の奥が鋭く、品定めしているような雰囲気がある

こういったタイプに対しては、雑談をフックに相手にメリットのある話をしていくことが重要。
質問に対しては、まず結論を答え、そのあとに情報を補足する。
プライドが高いタイプなので、上手に褒めたりできるとさらに良い。

やさしい感じのするタイプ

特徴は以下のとおり

  • 「感じのいい」印象
  • よくうなずいて話を聞く
  • 話のテンポや反応が遅め
  • 話は長めで、結論以外の細かいプロセスまで話そうとする
  • 「でも」「だけど」といった否定は使わない

決断力に乏しい人も多く、話が盛り上がっても本題が進まないような状況になりかねないので、和やかな雰囲気を出しつつも、頃合いを見て本題を切り出す必要がある。

分析家タイプ

特徴は以下のとおり

  • きちっとした雰囲気
  • やや反応が薄い
  • 冷静な受け答え
  • 納得いくまで質問してくる
  • 細かい点を気にする

頭のいい人に多いタイプで、「ハッキリ」タイプと似ているが分析家タイプの方が冷静。
結論→説明の順で、数字や根拠などを示しながら話を進める。
リアクションが薄い人が多いので、細かな変化を見逃さないように観察したい。

社交的なタイプ

特徴は以下のとおり

  • 笑顔で楽しそうに接してくる
  • 冗談やユーモアで盛り上げる
  • よく笑う
  • 大げさな反応、表現をする
  • 相手の話をあまり聞いていない

リアクションや質問を織り交ぜながら、その場が楽しくなる雑談を心がけるようにする。
ただし、脱線しがちなので、本来の目的を見失わないように注意。

控えめなタイプ

特徴は以下のとおり

  • 人あたりが良い
  • うなずきながら話を聞く
  • 相手に共感をする
  • あまり自分の意見を言わない
  • 主張しないので集団の中では目立たない

テンポを相手に合わせるようにする。
焦らず、慌てて関係性を縮めようとしないことが重要。

雑談から本題へ

雑談はそれ自体が目的ではない。
達成したい目的、本題があり、いずれかのタイミングでそちらに移行しなければならない。

重要なのは、「雑談から自然な流れで本題に移る」ということ。

予め、自分の話す領域についてキーワードを溜めておき、そちらの方向に雑談を誘導する。
そして、キーワードが出た段階で「そういえば」という体で本題に移るのがスマート。

具体的には「今の話で思い出したのですが」「お話を伺っていて、お力になれると思ったのですが」「実は私どもも同じことを考えておりまして」というフレーズが有用。
「ところで本日は」という発言は、会話の流れを断ち切り、不穏な空気を生む最悪のフレーズなので使わない。

本題を話すときには、ポイントをまとめて、10秒以内で話すことを心がける。
「ポイントは○個あります」と、はじめに宣言しても良い。

雑談は基本的にテンポ良く進めていくものだが、ここぞという話をするときには0.5秒くらいの間を設けることで相手の注意を引くというテクニックがある。

雑談トレーニング

雑談テクニックはこれまでに記載したとおりだが、それを日常で練習するためにできることを以下に示す。
下に行くほどレベルが上がるので、積極的に挑戦したい。

  1. エレベーターで「何階ですか?」と聞く
  2. お会計のときに店員さんと一言話す
  3. 口の中の空間を広く取り、よく通る声を出して、混んだ居酒屋で店員さんを呼ぶ
  4. アウェイの飲み会やパーティーに参加する
  5. 社内の苦手な人・嫌いな人と軽く雑談をする
  6. インプットしたことを社内で話す、ウケる社内スピーチを考える
  7. 謎かけ(たとえ話)を練習する
  8. 結婚式などのフォーマルな場で、おもしろい乾杯のあいさつをする

まとめ

上手な雑談のための技術だけでなく、それを行うための下準備、雑談から本題への流れなども網羅的に記した一冊だった。
雑談自体については、他の書籍と似たようなことが記されているが、本題への移行と部分まで書かれた書籍は比較的少ないので、その点で有用だと感じる。
このタイプの本を読んだことがない人には、はじめの一冊としておすすめできる内容だと思う。

 

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