たった5分でわかる『一番伝わる説明の順番』

2018年6月に初版が発行された本。

著者の田中耕比古氏は、アクセンチュア株式会社、日本IBM株式会社を経て、現在株式会社ギックス取締役。様々な業界のコンサルティングに従事しているほか、数冊のビジネス書を執筆している。

本書は、プレゼン等において、相手に伝わる話し方を、「話す順番」に焦点を合わせて解説したものである。
ページ数はあとがきまで含めて250ページあまり。特に専門用語などはなく、誰にでも読める本となっている。

本記事では重要な部分を抽出してまとめている。

相手の立場や理解度を意識する

説明が下手な人の代表的な特徴としては以下のようなものがある。

  • 自分が言いたいことを話す
  • 相手のレベルを超えた話をする

これらの特徴はいずれも、相手ではなく、自分本位の説明をしてしまっていることに起因する。

相手がどういった立場の人で、説明する事柄に関してどの程度の知識を持ち、どのような内容をどういう順番で聞きたいのかといったことを意識することが、わかりやすい説明をするための大前提。

説明の順番

説明は大きく2つに分類できる。

1つ目は、自分主導の説明。こちらから能動的に説明する、商品説明やプレゼンが該当する。
2つ目は、相手主導の説明。相手からの質問に答える、受動的な説明が該当する。

どちらの説明をするかによって、流れは異なる。

自分主導の説明

自分主導の説明の順番は以下のとおり。

  1. 前提をそろえる
  2. 結論・主張・本質
  3. 根拠・理由・事実
  4. 補足情報
  5. 結論・相手に促したいアクション

まず、「前提」とは、自分が話す内容について、相手がどの程度のレベルの知識を持っているかということ。それを把握し、相手のレベルに合わせた説明を行う必要がある。相手が専門外の人であれば、専門用語などは極力わかりやすい言葉で言い換えるべきだし、新任の上司であれば、これまでのやり取りなどを説明するべき。

前提がそろったら、結論・主張・本質をまず一言で伝える。承認やアドバイスなど、相手に何らかのアクションを期待している場合には、ここで併せて伝えておくといい。

次に、結論などの根拠・理由・事実を伝える。その際には、次の3つのことを心がける。

  • 理由を伝えるということを明言する
  • 理由は3つに絞る
  • 主観ではなく、客観的事実を伝える

続いて、経緯や根拠にいたった背景、その他あまり重要でない話を、補足情報として伝える。ただし、あくまでも補足情報なので、相手の興味や状況を見て、省略するなど、柔軟な対応をするべき。

最後にもう一度、結論や主張と、相手に求めるアクションを伝えて説明をまとめる。

相手主導の説明

相手主導の説明においては、相手の出方次第で流れが変わるため、自分であらかじめ決めておいた説明の構成に導くのは難しい。

そこで、以下の3つのことを意識する。

  • 大きいポイント→小さいポイントの順で説明する
  • 自分の解釈と純粋な事実のうち、相手が知りたいのはどちらかを見極め、相手の希望している方を話す
  • 事実を話す際には、客観性を重視する

ギャップの埋め方

冒頭で、自分が言いたいことではなく、相手が聞きたいことを話すべきとお伝えした。しかし、そうは言っても、説明者の立場から、最低限伝えなければならないこともあるだろう。つまり、相手が知りたいことと自分が伝えたいことのギャップを埋める必要がある。

ギャップの埋め方には2通りの方法がある。

自分の情報を補強する

相手の知りたいことからスタートし、情報を補強して自分の伝えたいことにつなげる方法。そのためには、相手の知りたいことと、自分の伝えたいことを正しく認識し、情報を網羅的に準備する必要がある。

ここで、意外な落とし穴となるのが、「自分の伝えたいことが定まっていない」というケース。準備不足から発生することだが、思っているよりも発生頻度は多い。自分の思考を紙やノートに書き出し、客観視するのがおすすめ。

相手の期待値をコントロールする

正攻法ではないが、冒頭で、手持ちの情報・伝えたい情報の範囲を開示し、「今日はこの話をする」と宣言してしまう方法もある。方向性が示されているので、相手がギャップを感じることはなくなる。

業務報告であれば、方向性を示すとともに、「他のメンバーと比較して、自分がいたらない部分や改善点をご教示ください」とお願いしてしまうのも手。

印象に残る説明のコツ

  • 徹底的な事前調査で知識を十分に蓄えておく
  • 相手の理解度や目的に合わせて、おおまかなことから伝える
  • 対比や分類ではサイズ感や大きさ、レベル感を合わせる
  • メールでの説明は、わかりやすい条件分岐を意識する
  • 本質的に似ているが、意外性があり、かつ相手が理解しているもので例える

説明力を磨くトレーニング

日常生活の中でのちょっとした心がけで、説明力を磨くことが可能。

  • 特定のテーマ(色、ペットの犬、自動販売機・・・)に合うものを意識して周囲を見回してみる
  • 文章を単語レベルに分解し、それぞれの意味を考える
  • 事象や業務をプロセスに分解し、それぞれの行程で必要なタスクについて考える
  • 何か(現在の仕事の内容、最近見た映画、お気に入りのゲーム・・・)についての説明を考え、ポイントを1点に絞り込む
  • 説明やポイントなどを常に「3つ」にすることを意識する
  • 居酒屋メニューのカテゴライズについて考察したり、書かれていないメニューがどの分類に属するか考えてみたりする
  • 分厚いビジネス書を章ごとにサマライズして誰かにフィードバックをもらう
  • 自分や知人、本や映画などにあだ名をつける(「○○な××」など)
  • 少ない情報から思考を巡らせ、問題解決の方法について考える(仮説思考)
  • 職業や業種・業態などを別のものに例えてみる

まとめ

説明の順番や、説明を上達させるコツについて解説した1冊だった。説明力を上達させるトレーニング法については、日常生活の中で気軽に実践できる有用なものであり、多くの人に役立つ内容だった。

本記事では割愛したが、書籍内では相手の思考の整理方法などにも触れられているので、そのあたりが気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。

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