2021年11月に初版が発行された本。
著者の厚切りジェイソン氏は、お笑い芸人でありながらIT企業の役員も務める異色の経歴を持つ人物。投資家としての側面も持ち、ご本人曰く、現在は資産運用だけで家族が一生暮らせるほどの資産を築いているという。
本書は、15年ほどで上記状態にたどり着いた著者の経験をもとに、コツコツとお金を増やす方法について解説したものである。
ページ数はあとがき等まで含めて190ページほど。投資用語については詳しく解説されており、著者の経験なども詳しく書かれているので、単純に読み物としても面白い。
本記事では重要な部分を抽出してまとめている。
お金を増やす目的
少し前に「FIRE」という言葉が登場した。Financial Independence and Retire Earlyの略で、経済的自立をしながら早期に(定年より前に)仕事を辞めることである。
FIREのノウハウを伝える本や動画は巷に溢れているが、著者がお金を増やす目的はFIREではない。
著者はあらゆる事柄について、自分が理解・把握できているという状態が好きで、それは資産に関しても例外ではなかった。そういった性格の結果、資産が増えていったという。
資産が増えたのは趣味の延長とも言える結果だが、資産が増えた今、感じているメリットは「どんなリスクがあっても家族を養えるという安心感」と「自分で仕事と時間を自由に選べること」だという。お金に余裕があれば、数ある仕事の中で、興味を持てる仕事、成長に繋がる仕事を優先させられる。
早期に引退して豪遊するというわけではなく、上記のような目的を達成するためにコツコツお金を増やす方法を、本書は解説している。
お金の増やし方
著者のお金の増やし方は実にシンプル。
- 支出を減らす
- 残ったお金を投資に回す
- 待つ
なお、お金を増やす方法は投資が良い。
日本人はアメリカ人と比べて資産における銀行預金の比率が高いが、現在の0.001%などという金利水準では、いつまで経っても資産は増えない。ちなみに、金利0.001%の銀行に100万円を預けたとして、それが2倍の200万円になるには、なんと約7万2,000年もかかる。
以上の理由から、余裕資金はできるだけ投資に回すことをおすすめする。そして、投資資金を増やすために、支出を減らすことを説いている。また、それ以外の元手の増やし方として、副業や、本業での出世も推奨している。
以下、支出の削減と投資について、具体的な方法を解説する。
支出を減らす
副業や出世によって投資の元手を増やすことも可能だが、新たに所得を生み出すよりもはるかに費用対効果が高いのは、支出を減らすこと。つまり節約である。
支出を減らすための第一歩は、支出を可視化すること。Money treeなどのアプリを使い、自分が何にどれくらいお金を使っているのかを把握する。月々のスマホ代などの固定費は、一度減らすとその後ずっと効果が続くので特に有効。
本書が勧める節約術は以下のとおり。
- 自販機やコンビニでペットボトル飲料を買わない
- コンビニに行かない
- 移動手段は徒歩
- より安いスーパーで大量買い&割引買い
- 同じスペックなら安い代替品を買う
- 洋服は貰い物orお下がり
- 飲み会には行かない
- ジムは公共施設を活用
- サブスクは本当に必要なものを必要な期間だけ契約する
- ポイントアップで衝動買いしない&ポイントは日常の買い物に使う
- 値下がりを待つ
- お金に対する価値観を家族内で一致させる
価値観は人それぞれなので、上記をすべて実践するのは極端かもしれないが、できることをいくつか実施するだけでも、今までより元手を増やせる。
投資で増やす
元手を増やしたら次は投資。
投資法も実にシンプルで、「インデックスファンドに長期・分散・積立」するだけ。
インデックスファンドとは株価指数などの指標に連動した運用を目指す投資信託。指数に連動するように機械的に運用するだけなので、プロが手間をかけて投資先を選定するアクティブファンドよりも、手数料が安い傾向にある。
インデックスファンドの有用性について詳しく知りたい方は『ウォール街のランダム・ウォーカー』を読むのがおすすめ。本ブログでも取り上げている。
なお、著者は米国ETF(上場投資信託)を購入している。理由はさらに手数料が安いからだが、両替や再投資、税金の問題などのハードルがあるので、日本の初心者には普通にインデックスファンドを買うことをおすすめしている。
3ヶ月暮らせる現金を手元に残し、生活費を除いた収入をすべて投資に回すのがセオリー。ただし、一気に全額を使ってしまうのではなく、定期的に一定の額買い付けるようにする。この「ドルコスト平均法」という方法で、価格変動のリスクを低く抑えられる。
投資銘柄としておすすめされているのは「楽天・全米株式インデックス・ファンド」という投資信託。著者が投資している「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(通称:VTI)」とほぼ同じ銘柄で構成されている。
VTIはアメリカの約3,800以上の企業に広く分散投資をしているので、これを買っておけば、アメリカの市場に広く分散投資をしているのと同じ効果がある。そしてアメリカの大企業はグローバルで活躍しているケースがほとんどなので、世界中に投資してリスクを分散しているという考え方もできる。
投資をする際の注意点は、税金や手数料をとにかく抑えること。なので、一度買った投資信託を無闇に売ったりしない(そのために3ヶ月分の生活費は現金で持っておく)。証券会社は手数料が安いネット証券(SBI証券や楽天証券)を利用する。また、NISAやiDeCoなど、税金を回避できる制度は徹底的に使う。
まとめ
シンプルで、誰もが実践しやすい資産形成術がわかりやすく解説された1冊だった。もちろん、投資において100%ということはありえないので、必ずしも資産が増えるとは限らないが、一定以上の説得力がある内容だった。
本記事では割愛しているが、書籍内では、不動産や中国株には投資しない理由、筆者の経験談なども豊富に掲載されているので、そのあたりが気になる方にはぜひ手にとって見ることをおすすめしたい。
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