2013年11月に初版が発行された本。
著者のロバート・キヨサキ氏は起業家、教育者、投資家。『金持ち父さん貧乏父さん』以外にも数多くの著書がある、作家としての一面も持つ。
本書は、著者と2人の父(高い教育を受けたがお金に苦労した実の父と、高校すら卒業していないがハワイ有数の富豪となった、友人マイクの父)とのやり取りを通じて、経済的に不自由なく生きるための方法、考え方について説いたものである。
ページ数はあとがきまで含めて260ページあまり。その大半は物語調で進行するため、非常に読みやすい本となっている。
本記事では重要な部分を抽出してまとめている。
自分ではなくお金を働かせる
中流以下の人々と金持ちでは、お金と自分との関係に差がある。
中流以下 | お金のために自分が働く |
金持ち | 自分のためにお金を働かせる |
「自分のためにお金を働かせる」とは、毎日8時間働かなくても、実際に自分がそこにいなくても、お金を生み出してくれる事業や資産を持つということである。
資産からのキャッシュフローを支出に充てる
金持ちになりたければ、お金について勉強し、ファイナンシャル・リテラシーをマスターする必要がある。
もっと具体的に言えば、資産と負債の違いを知り、資産を買う必要がある。中流以下の人々は、資産だと思って負債を買い込み、結果としてお金に困窮する日々を送っている。
では、資産と負債の違いは何なのか。本書では非常に簡単に説明されている。
資産は私のポケットにお金を入れてくれる
負債は私のポケットからお金をとっていく
つまり、収入を生むものが資産であり、支出を生むものが負債ということである。資産からは収入が生まれ、お金が増える。負債からは支出が生まれ、お金が減る。これを理解することが最も大切。
持ち家は資産だと考える人は多いが、本書の定義に従えば負債となる。持ち家によって発生する住宅ローン返済や固定資産税、保険料、維持費・・・はすべて家計からお金を吸い取っていく要素だからである。家を買うなというわけではないが、買うのであれば、本当の資産に投資し、そこから家を買うのに充分なキャッシュフローが生まれてからにするべき。
まずは全力で資産を増やし、資産からのキャッシュフローで日々の支出を賄えるようにする。そして、あまったお金は資産につぎ込む。すると、資産が増えた分、入ってくるキャッシュフローはさらに大きくなる。これが金持ちになるためのサイクルである。
自分のビジネスを持つ
会社に勤めている人は、自分のために働いていると思っているかもしれない。たしかにその要素もあるが、それはごく一部だ。
実際のところ、会社に勤めている人の労働によって裕福になる層の序列は次のとおり。
- 会社のオーナーや株主
- 政府(税金)
- 銀行(住宅ローンやクレジットカード)
- 自分
一生懸命働いている自分自身はなんとトップ3にも入らない。世の中の多くの人は上記のように、一生他人のために働いているから、いつもお金に苦労している。
そこで、自分自身のビジネスを持つことを考える。自分自身のビジネスは、資産を中心に展開される。収入(給与明細表の数字)で一喜一憂する必要もなくなる。
ただし、自分で会社を起こすことは、よほどやる気がある人でない限りはおすすめしない。大した熱意もなく作った会社はほとんど潰れる。現在の仕事を続けながら、並行して自分のビジネスを持つことを考えたほうがいい。
会社を作って節税する
「自分で会社を起こすことはおすすめしない」と言った矢先、「会社を作って」などというと全くもって矛盾したことを言っているように思える。しかし、前者の「会社」は建物があって従業員がいて、という一般的なイメージの会社であるのに対し、後者の「会社」は個人企業のことを指している。
つまり、この項で言う「会社」は、何枚かの法的書類を綴じ込んだ一通のファイルにすぎない。
数枚の紙束でしかない「会社」は、税金の観点では大きな力を発揮する。
まず、法人税率は個人の所得税率よりも低い(※所得による。参考:国税庁HPより、法人税率及び所得税率)
さらに、会社の場合、支出の一部は経費として、税を払う前の収入から差し引くことができる。払う税額は、経費×税率の分だけ減る。
- 会社を持っている金持ち:稼ぐ→お金を使う→税金を払う
- 会社のために働く人々:稼ぐ→税金を払う→お金を使う
この違いだけで、会社の所有をおすすめする理由がお分かりいただけるだろう。
ファイナンシャル・インテリジェンスを習得する
与えられた状況でどうやればお金を作り出すことができるか、どうすればより多くの選択肢を持てるのか、それがファイナンシャル・インテリジェンスである。具体的な構成要素は次の4つ。
- 会計力:数字を読む力
- 投資力:お金がお金を生み出す科学
- 市場の理解力:市場は需要と供給の科学
- 法律力:会計、会社、国、自治体の法律に精通し、合法的に動く
どんなことをやるにせよ、上記の4種類の技術が基礎となる。
お金のためではなく学ぶために働く
才能があるだけでは成功することはできない。大学で専門スキルを身に着けただけではお金持ちになることはできない。お金を稼ぐには、ファイナンシャル・インテリジェンスが必要となる。
実際のところ、お金を稼ぐのに役立つのは広く浅い知識である。
専門的な知識はその分野の産業では重宝されるが、なにかの間違いでそこからはじき出された場合、他の産業では通用しない。もし専門的な仕事をするのであれば、そういったリスクを減らすために組合に入るべきである。
若者が会社を選ぶ場合、「いくら稼げるか」ではなく「何を学べるか」を重視したほうがいい。短期的な収入は減るが、将来的に自分のビジネスに大いに役立つ。長期的に見ればむしろ得をする戦略と言えよう。
5つの障害
お金の流れは読めるようになったのに、キャッシュフローを生み出す資産を増やせない人は、次のような障害があることが考えられる。
- 恐怖心
- 臆病風
- 怠け心
- 悪い習慣
- 傲慢さ
それぞれについて考えていく。
まずは恐怖心。損をするのが怖いのは誰だって同じだし、恐怖心を持つことは悪いことではない。成功した人で、一度も損をしたことがない人などいない。重要なのは、損をしたときに、そこから成功に役立つ学びを得ることである。
次に、臆病風。恐怖や疑いの気持ちで踏み出せないこともある。だがそういったものはたいてい、自分自身や周囲の人間が作り出した幻想にすぎない。ちゃんとした知識を積み上げてきた人は、皆が恐怖している間に行動を起こし、それに見合った利益を上げることができる。
忙しさを理由についつい怠けてしまうこともあるだろう。「怠け心」には「欲張り心」がよく効く。何かを欲しいという欲張り心を、「どうしたら手に入るか」考える原動力にすればいい。
「悪い習慣」とは、自分への支払いを後回しにする習慣のこと。他の人への支払いは自分への支払いを終えた後にするべき。もちろん、請求書や税金を無視しろということではない。自分への支払いを先に終えることで、「なんとかして他の人への支払いを済ませなきゃいけない」というプレッシャーが生まれ、それが原動力となる。
最後に、傲慢さ。自分の無知を隠すために傲慢に振る舞う人は数多くいるが、そんなことをする間に、その分野の専門家に話を聞いたり、本を見つけるなどした方が有意義である。
10のステップ
自転車は乗り方を覚えるまでが大変であるように、お金を稼ぐのも、スタートを切るところが大変である。強い決意でスタートさえ切れてしまえば、軌道に乗せるのはさほど難しいことではない。
お金に関する才能を開花させるためのステップは次のとおり。
- 強い目的意識を持つ
- 毎回自分で選択する力を持つ
- 協力し合える友人を持つ
- 最新の知識を次々と仕入れる
- 無駄遣いしない自制心を身につける
- 良いブローカーを見つけてたっぷりと報酬を払う
- 元手を取り戻すことを強く意識する
- 贅沢品は資産からのキャッシュフローで買う
- 投資が優しく見えてくるような、自分なりのヒーローを探す
- 自分が持っているものは出し惜しみせずに気前よく人に与える
具体的な行動を始めるためのヒント
「10のステップ」は思考の持ち方という側面が強い。
具体的な行動指針としては、以下のようなものが紹介されている。
- うまくいっていないことはやめて、新しいことを探す
- 自分が知らないアイディアが書かれた本を探す
- 自分がやりたいことをすでにやり遂げた人から話を聞く
- 学びたい内容の講座を取ったり、セミナーに参加する
- 免責条項を付け加えたオファー(買付申込)をたくさんする
- ジョギング、ウォーキング、ドライブをしながら優良物件を探す
- 不動産市場や株式市場が落ち込んだときに買う
- 安く買えるルート(抵当流れなど)で買う
- 大きく買って分ける
- 歴史から学ぶ
- 今すぐ行動する
まとめ
勤労所得をできるだけ早くポートフォリオ所得(株式や債権)や不労所得(不動産)に変えることの重要性について、筆者の体験記を交えて解説した1冊だった。内容はアメリカを前提としており、時代背景も違うので、記載内容をそのまま実践すればいいというわけではないが、思考などの普遍的な内容については、人によっては役に立つ。
本記事では割愛したが、書籍内では筆者やマイク、2人の父さんのエピソードなどが豊富に盛り込まれているので、そのあたりが気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。
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