2019年1月出版の本。
株歴36年、利益の6割をカラ売りで稼ぐ著者の相場師朗氏が、カラ売りに関する技術を綴った本。
文量は全体で190ページ弱、初心者でも理解できるようにわかりやすく説明されている。
念のため書いておくと、「世界一安全な株のカラ売り」は「必ず儲かる株取引」の話ではない。
そもそもそんな取引は存在しない。
もし存在するなら僕だって今頃数百兆円の資産を築いていることだろう。
本書はあくまで「現時点で世界一安全だと筆者自身は考えている株のカラ売り方法」について書いたものである。
その前提を踏まえて以下に要約を記す。
なお、本書に登場する言い回しは著者独特の用語であることもしばしばなので、実生活で使用する際には注意されたい。
カラ売りとは
証券口座に入金したお金で株を買い、株価が上がったところで売れば利益を得られるし、逆に下ったところで売れば損失が発生する。
これが普通の株取引(現物取引)。
しかしそれだけでは、持っているお金以上の株を買うことはできないし、持っていない株を売ることはできない。
それを実現させるために、証券会社からお金や株を借りて売買をするのが信用取引。
上記の信用取引のうち、(手数料を払って)証券会社から株を借り、売りから入る取引がカラ売り。
借りた株を売り、株価が下ったところで買い戻して株を返せば、下落分(ー手数料)の利益が得られる。
つまり、株価の下落局面でも利益を得られる方法がカラ売りである。
下落を爆益に変えるには
下落局面においてカラ売りで利益を出せることは先に述べた。
ただし、現実はそう簡単にはいかない。
売った直後に一直線に株価が下がればいいが、実際はあまり株価が動かなかったり、逆に上がってしまって損失が発生したりもする。
それを回避するためには、チャートの形から今後の株価の動きを予測し、適切な売買タイミングを見定められるようになる必要がある。
ローソク足と移動平均線
株価の予測には様々な指標が使われるが、数多の指標の中で著者が使うのは、「ローソク足」と「移動平均線」のみ。
ローソク足は、最新の値動きや勢いを読み取るのに使う。
一方で、移動平均線は、値動きの流れ方や方向性といったトレンドを見るために使う。
下半身と逆下半身
5日移動平均線をローソク足が陽線で下から上に突き抜けるのが「下半身」で、上昇の目印。
5日移動平均線をローソク足が陰線で上から下に割り込むのが「逆下半身」で、下落の目印。
ただし、下半身だから買い、逆下半身だから売り、という単純なものではない。
下半身/逆下半身を利用する際には、移動平均線の並びを見てトレンドを把握する必要がある。
基本的には移動平均線の傾き(=トレンド)と同じ方向に株価が動いたときに出る逆下半身、下半身で売買するのが正解。
わかりやすい具体的で言うと、移動平均線が
- 5日>20日>60日で下半身が発生したら買い
- 60日>20日>5日で逆下半身が発生したら売り
また、長期線が株価の下落/上昇を食い止めるクッション役になった直後に出た下半身/逆下半身での買い/売りも有効。
移動平均線が横ばいで、もつれ合いながら推移しているトレンドレスな状態のときは下半身・逆下半身では売買しない。
7の法則と9の法則
株を買ったりカラ売りしたあと、どこで利益確定をするかの判断材料に使える法則。
「7の法則」は強いトレンドがないときに使う。
下落の場合だと、下落開始前の終値が一番高いローソク足から数え始め、陰線が続いて終値が下がり続けている間は「2,3,4・・・」とカウントを続け、7本目になったところが利益確定の合図。
この際、陽線でも終値が前日より大幅に下落していたら、下落の1本と見なす。
ただ、実際のところ7日も続くほうがレアケース。
「7の法則の平均はだいたい4」を念頭に置いておく方が良い。
「9の法則」は移動平均の並びがきれいで、強い上昇トレンド(下降トレンド)のときに使う。
株価の下落が始まって、5日線を逆下半身などでまたいで下がったあと、5日線を割り込み続けている間の日数をカウントし、それが9日続けば終わりという法則。
下落時の基本戦略
株価がこんなにも下がっているんだからお買い得!と思って買ったものの、株価は上がるどころかどんどん下がっていき、損失は膨らむばかり。
容易にイメージできる光景である。
こんな状態を避けるにはどうしたら良いのか。
PPPと逆PPP
移動平均線の並びが5>20>60>100となっているのがPPPで、その逆が逆PPP。
要は直近になればなるほど上昇(下落)している圧倒的な上昇(下降)トレンドということだ。
例えば逆PPPが発生しているとき、株価がすでに大きく下げているので買いだ!などと思うのは危険である。
その後も下落を続ける可能性が高い。
安値圏で多少挙げたとしても、5日線が前の高値を越えられず下落したような場合はむしろ売りで勝負すべき場面である。
また、20、60、100日線が1ヶ所に寄せ集まるような形になると、その後は上や下に大きく動く可能性があるので注意する。
下げ止まりの判断
先に少し触れたが、5日線が多少上昇しても、前の高値を越えられなかったり、安値が前の安値を割り込んで下落している間は下降トレンドが継続している。
逆に言えば、その状況が崩れたときがトレンドの打ち止めと考えれば良い。
ただし、株価は常に上下するものなので、前の高値を越えたらすぐ買うのではなく、その後の多少の下落を見据え、下落時の安値が2つ前の安値を下回らないことを確認してから買うなど、先の先を読むことが大切になる。
そして先の先を読むためには、過去のチャートをよく研究し、今後起こりうるパターンを頭の中でいくつも思い描くことが重要。
準PPP、準逆PPP、NON
PPPや逆PPPのときに取るべきポジションについてはこれまでに述べた。
だが、実際の相場ではPPPや逆PPPの状況のほうがそうでない状況よりも遥かに少ない。
実際、4本の移動平均線の並び方は24通りあるが、PPPと逆PPPは1通りしかないので、それ以外(NON)が22通りということになる。
もちろんNONの中には実現しにくい組み合わせもあるが、それにしてもPPPと逆PPPだけでは売買の場面が少ない。
そこでNONを次のように細分化する。
- 100日線の存在は無視して5>20>60と並んだ「準PPP」
- 5<20<60と並んだ「準逆PPP」
- 上記以外の「純NON」
日経平均を分析すると、4割が純NON、6割がPPP類ということになる。
つまり、準PPP・準逆PPPでPPP・逆PPPに準じた動きをすれば、6割の状況で売買ができる。
具体的には、逆PPPや準逆PPPなどでは、次のようになる。
- ローソク足が(逆下半身でなくとも)5日線を陰線で下回ったら売り
- ローソク足が5日線の下にある間は陽線陰線問わず売り継続
- 5日線が横ばったり、ローソク線が5日線の上に出たり、9の法則で下降が8~10あたりに達したあとの陽線で決済
では残りの4割の純NONはどうするのか。
不安定な状況なのは間違いないので、無理をせずに様子見をするというのもひとつの手だが、一応、本書は純NON時の対応も記載している。
純NONのときは、それ以前がPPPや準PPPだったら、
- ローソク足が20日線より下にある。5日線が右肩下がりに下がっていることを確認して売り(純NONに移行した時点ですでに逆下半身シグナルが点灯しているはずなのでそれも確認)
- 5日線の下に株価があれば売り継続、5日線越えなどで利益確定
短期売買を制す
短期売買を視野に入れた方法も提案されている。
ここでは、これまでに利用したものよりも短期の移動平均線を用いている。
往復リーディング
チャートからローソク足を消し、3日線、5日線、10日線、20日線、60日線を表示させる。
その上で過去から現在、現在から過去へとひたすら動きを見ていくのが「往復リーディング」
往復リーディングを繰り返していると、なんとなく傾向があることに気付く。
例えば、
- 上昇のときは3>5>10の並びになり、下降のときは10>5>3の並びになる。
- 3が10を越えて、5が10に触ると上昇開始、3が10を割り込んで、5も10に触れると下降開始
- 3と5が10から離れて推移している間は取引継続
- 3と5が10に再びくっついたら取引終了
- 3と5と10、時には20までがもつれ合って横ばいのときは様子見
- 3、5、10、時には20が一ヶ所に寄せ集まった状態からお釈迦様の手のようにばらけたところがトレンド発生地点
10日線の重要性
5本の移動平均線を使い場合に重要になるのは真ん中の10日線。
これを使うと反応の早すぎや遅すぎを回避できる。
流れとしては、これまでのとおり、3>5>10なら上昇、10>5>3なら下落。
だが、これは取引を継続する根拠にはなるが、取引を開始するタイミングとしては遅すぎる。
そこで、「10日線が前の安値を割り込んだところが売りポイント、前の高値を越えたところが買いポイント」というルールを定めている。
7日線
移動平均線が密集した直後は大きな値動きが発生しやすい。
そこで、3、5、10日線に7日線を加えた4本を用いて、密集地帯を探しやすくする。
ポイントは次のとおり。
- 密集地帯のあとは相場は上か下かに大きく動きやすい
- 密集が高値や安値を切り上げていれば上昇トレンド、切り下げていれば下落トレンド
- 前よりも高い位置で密集したら、その後、上昇へ向かう可能性が高い。低い位置で密集したら、下落に向かう可能性が高い。
まとめ
特に下落局面で使いそうなチャートの見方が書かれた本だった。
本記事では割愛したが、この他にも一般的に広く知られたテクニックや具体例がチャート図付きで掲載されている。
冒頭でも述べたとおり、本手法は筆者がこれまでに用いて成功した手法というだけで、今後も通用するとは限らない。
だが、様々な分析方法について見識を深めたい方には良い1冊と言えるのではないだろうか。
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