たった5分でわかる『人がうごくコンテンツのつくり方』

2018年8月に初版が発行された本。

著者の髙瀬敦也氏は、コンテンツプロデューサー、実業家、株式会社ジェネレートワン代表取締役社長といった様々な肩書を持つ。かつてはフジテレビに勤務しており、「逃走中」や「Numer0n」といった番組を企画してきた。

本書は、コンテンツのつくり方やそれを広める方法について、筆者の経験や知識をもとに解説したものである。
ページ数は全体で240ページ弱。専門用語などは登場せず、エピソードが数多く織り交ぜられているため、読みやすい本である。

本記事では重要な部分を抽出してまとめている。

コンテンツとは何か

一般的なイメージでは、コンテンツは、アニメやマンガ、映画、音楽、キャラクターなど、ブランド化、マネタイズされているものと認識されている。

しかし、筆者は、コンテンツとは「誰かがコンテンツだと認識したもの」と定義している。そして、この定義がコンテンツづくりのポイントとなっている。例えば、長野や山梨の人にとっては「地元の水」である「南アルプスの天然水」を、首都圏の人は価値あるものとして認識しているように、場所や対象を工夫することによって、一見何でもないものでも、コンテンツ化できる。

コンテンツ化のコツ

コンテンツ化とは、「価値を感じたい」と思っている人たちに、「価値を感じてもらえるように仕立てる」こと。例えば場所や年代などを狭めると、その分イメージが明確になり、ターゲット層が食いつきやすくなる(例:原宿、JK)。イメージしやすいという意味では「池の水全部抜く」や「海鮮丼屋」といった、内容がひと目でわかる名前の付け方も有効。

コンテンツのつくり方

コンテンツづくりにおいては、アイデア自体にそこまで価値はない。意外に思われるかもしれないが、世の中の多くの人は、何かしらのアイデアを持っている。むしろ重要なのは、持っているアイデアを実行すること。様々な人を巻き込み、アイデアを形にする実行力が大切。

コンテンツをつくるときに、最初に決めておくべきは「目的」
「目的」と「手段」を混同してしまうことは多くあるが、真の目的を見つけるコツは、「なぜ?」を繰り返すこと。繰り返すと基本的には「世のため人のため」にたどり着くのだが、その過程はニーズを捉えるのに役に立つ。

目的を明確化したら、インプットとアウトプットを行う。インプットは、人と話したり、雑誌やネット記事、テレビを見て行う。アウトプットは、記憶の着床に役立つし、人に何かを伝えるという行為そのものが、コンテンツの根幹でもある。

具体的なコツとしては、以下のようなものがある。

  • 既視感を利用する(パロディ、昔流行ったもの)
  • ベタなもの
  • 生活者の気分を考える(どういうときに欲するコンテンツなのか)
  • ターゲットに媚びない(上から目線の押しつけがましさを出さない)
  • とりあえずデカくする
  • とりあえず伏線を張る

コンテンツを広めるには

コンテンツをつくったら、次は広げていくことを考える。

まず第一歩はコアなファンを獲得すること。そのためには、誰かに強烈に刺さるものをつくることが大切。コアなファンを獲得すれば、その人を起点に拡散されやすくなるし、「熱狂」というある種の異常状態にメディアは食いつく。

コアなターゲットからさらに広げる段階では、コンテンツの特性を理解しておく必要がある。

  商品 お金の出所 目的
有料コンテンツ(ニッチ) コンテンツ自体 ユーザー コンテンツを買ってもらう
無料コンテンツ(マス) コンテンツに集まる消費者 スポンサー 多くの消費者を集める

ニッチコンテンツとマスコンテンツでは客層が全然違う。前者は非日常の世界へ引き込むことを意識するが、後者は日常を演出して多くの共感を呼び込むことを意識しなければならない。

以上の特性を把握したうえで、適切な策を打って、コンテンツを拡散させる。

  • 視覚と聴覚に訴えかける(「○○のヤツ」と呼ばれるようにする)
  • あえて気持ち悪くして印象付ける
  • 先例を分析し、外せないポイントを見つける
  • イイ感じのタイトルやキャッチコピーを創作する
  • マネされやすいものにする
  • 目的を揺るがすような変更は行わない
  • 時代の変化に合わせて、こっそり微修正を加える
  • 当たるまで続ける

テクノロジーとコンテンツ

テクノロジーの進歩の原動力は常に「もっと便利に/楽に/簡単に」といった、人の欲望だった。コンテンツもまた「欲しい/見たい/食べたい」といったような人の欲望が根底にあり、その意味で両者は近しい関係にある。コンテンツをつくる上で、テクノロジーを意識することは避けては通れない。

欲望の源は本能であり、生理である。だから、人の生理に合ったコンテンツをつくることがヒットのコツとなる。例えば、見られるコンテンツであれば、視覚にダイレクトに訴えかけるようなものを作る必要がある。

コンテンツ制作のためのインプット元と、そこからできたコンテンツを差別化するカギとなるのがテクノロジー。既存のコンテンツに新鮮なテクノロジーを加えることで、真新しさが生まれる。

このテクノロジーは常に最新のものである必要はなく、コンテンツが属するジャンルにとって新鮮なものであれば、テクノロジー自体は古いものでも問題ない。例えば、フリーズドライ味噌汁が近年ヒットしているが、フリーズドライの技術自体は1960年ごろから開発されていたと言われている。

テクノロジーの進歩により、個人が情報発信をできる時代が到来し、圧倒的な数のコンテンツが世に出るようになった。同時に、人の生理はよりシンプルになり、知らないものへの拒絶反応は強化され、知っているものの評価が高まっている。こうなると新たなコンテンツが世代や生活圏を超えて広がる「メガトレンド」は発生しにくい。今後は「みんなが知っている」ことの希少価値がより高まっていくことになる。

コンテンツの終わり

コンテンツの終わり方として、最高のパターンは「一般化されること」である。存在して当たり前のものになると、人々はそれをもはやコンテンツとは認識しない。狭い枠組みで「○○的」「○○みたい」と称されるようになることも、成功のパターンと言える。

そうは言っても、脚光を浴びる前に終わってしまうコンテンツも多い。製作者からすれば「あと少しで花開くのに」という悔しい気持ちもあるだろう。

そんなときは「終わらせたフリ」をしておく。一見終わらせたように見せておいて、内心ではいつか来るチャンスをつかむためにアンテナを張っておくのである。つくり手がやめようと思わない限り、コンテンツに真の終わりはない。

逆に、終わらせたいのに外的要因で終わらせられないコンテンツもある。これは、そのコンテンツうんぬんより、次のコンテンツのためにリソースを割けないという点で問題である。続けることによって失われる利益もあるということを認識しておく。

コンテンツがハズれると、つくった本人としては凹むが、客観的にみれば、ハズれたコンテンツなんて誰も覚えてはいない。正直なところ、コンテンツが当たるかどうかについては運要素も大きい。コンテンツのつくり方でも触れたが、アイデアを世に出そうと行動することこそが大事。

まとめ

プロが考える、コンテンツのつくり方や広め方などがひと通り解説された1冊だった。テーマが「コンテンツ」という、抽象的なものなので、一見すると想像しにくいところはあるが、いわゆる「クリエイター」に限らず、普遍的に役に立つ内容が盛り込まれている。特に、「続けること」は『SNS時代に自分の価値を最大化する方法』や『ハッタリの流儀』でも触れられており、何かを成し遂げるためには非常に大切な要素なのだろう。

本記事では割愛しているが、書籍内では筆者の過去のエピソードが数多く盛り込まれている。有名番組の裏話などが見られるので、そのあたりが気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。

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