稼ぐ力をつける「リカレント教育」 誰にも頼れない時代に就職してから学び直すべき4つの力

『稼ぐ力をつける「リカレント教育」』の表紙画像 読書

2019年6月に初版が発行された本。

著者の大前研一氏は早稲田大学卒業後、東京工業大学で修士号、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。
日立製作所、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長を務めているほか、経営や経済に関する著書を多く出版している。

本書は、これからの社会において、日本人が受けるべきリカレント教育の必要性について説いたものである。

ページ数は全体で140ページあまり。
略語や専門用語、固有名詞はそこそこ多いが、主張は一貫して「リカレント教育が必要である」という点に尽きるので、理解はしやすい。

リカレント教育とは

リカレント教育とは、社会に出てからも学校や教育・訓練機関などで学び、生涯にわたって学習を続ける教育のことで、経済協力開発機構(OECD)が1970年代に提唱した。

日本においても、2017年に開かれた「人生100年時代構想会議」の席上で、「人生100年時代を見据え、その鍵であるリカレント教育の拡充を検討する」と宣言されている。

ただし、政府のリカレント教育は定年退職後の再就職や失業対策を目的とした、60歳前後の人にのみ重きを置いているのに対し、筆者のリカレント教育はこれからの時代で稼ぐ力を身につけるための、全年齢層を対象としているという点で大きく異なる。

なぜリカレント教育が必要か

21世紀が、AIやIoTが産業構造を大きく変化させる年代になることは疑いようがない。
かつてないほどの速さで変化していくこの年代において、大学などで身につけた知識や技術のみで生涯稼いでいくというのは極めて困難である。

さらに、メンバーシップ型の人事、年功序列の出世を行っている多くの日本企業では、業務を通じて長期的に必要な専門能力を培うことも困難であり、最新の知識や技術を身につけるためのリカレント教育の必要性は高い。

労働者は常に高いパフォーマンスを発揮して失業を防ぐために、企業は社内の人材の質を引き上げて競争力を維持するために、絶え間ない再教育が求められている。

リカレント教育で身につけるべきこと

リカレント教育でまず身につけるべきは、リベラルアーツではなく、デジタル・ディスラプションの時代(急速なデジタル化により、産業構造そのものに破壊的な変革が加速して起こる時代)を生き残るために直接役立つ実践的・実務的な知識である。

具体的な知識は、業種や業務内容によって、語学力・経営の知識・専門資格など様々だが、いずれにしても共通しているのが、「問題に直面したときに、論理的に考えて解決策を見出し、それを実践に移すための力」であるということ。

どこで学ぶか

リカレント教育で学ぶべきことは先述のとおりだが、現状の日本において学校でこれを学ぶことは困難と言わざるを得ない。
大半の学校には、上記のことに対応する科目がないし、講師陣もアカデミックの延長線にいる人物なので、リカレント教育の視点からは不適格である。
加えて、大学を評価する仕組みや、求められている運営ルールも、アカデミックと同じものがリカレントにも適用されており、実情に全く即していない。

また、学費や時間の観点からも、大学に入り直すというのは、今の日本ではハードルが高い。

だからといって何も勉強せずに漫然と働いていると、将来の自分が困ることになる。

現在主流となっている、民間教育訓練機関などを利用するのもひとつの手だし、今は「MOOC(インターネット上で誰もが無料で受講できる講義)」やクラウドソーシング、YouTubeなどでも学ぶことができるので、積極的な学び直しに取り組みたい。

リカレント教育で構想力を身につける

ビジネスパーソンに必要なスキルは概ね次の4つ

  • 問題解決力
  • ハードスキル(IT、ファイナンス、マーケティング、統計など)
  • ソフトスキル(リーダーシップ、コミュニケーションなど)
  • 構想力

このうち、問題解決力とソフトスキルは、あらゆる年代において必要となる。
一方、ハードスキルは若い社員には必要だが、年齢を重ねると最先端のハードスキルにキャッチアップすることは難しくなるため、若い世代に任せたほうが効率的と言える。

そして、ハードスキルの習得に割く時間を減らした分、時間を使って高めるべきなのが「構想力」である。

構想力とは、簡単に言えば「0を1にする力」のこと。
日本人は見えている目標に向かって努力する才能には長けているが、概して構想力は弱く、目標自体を思い描くイマジネーションやインスピレーションが不足している。

しかし、構想力こそが、デジタル・ディスラプションの時代の企業運営には重要となる。
これからの時代は「1を2や3へ」のビジネスだけではなく、「0から1」のビジネスを生み出すことができなければ生き残ることはできない。

若いうちから徐々に構想力を身に着け、経営者として必要な素養を身につけることがビジネスパーソンには求められる。
具体的には、40代頃から構想力を使う仕事にシフトしていくのが良い。

  • 構想は、コンセプトやビジョンよりもひとつ大きな概念である
  • 構想は、「見えないもの」を個人の頭の中で見えるようにすることである

企業は上記の2つのことを念頭に置き、社員教育を進めるべきである。
その際には、知識のインプットだけではなく、実際に責任ある仕事を任せ、経験を積ませなくてはならない。

まとめ

これからの時代における、リカレント教育の重要性について解説した一冊だった。
本記事では割愛したが、日本の教育の問題点や、海外企業の事例なども掲載されているため、気になる方は読んでみることをおすすめしたい。

 

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