たった5分でわかる『「いいね」で売上をいっきに倍増させる最新活用術! SNSマーケティング見るだけノート』

2021年1月に初版が発行された本。

著者の坂本翔氏は、株式会社ROC代表取締役CEO。様々な企業を相手にSNS施策を担当しているほか、テレビや週刊誌、講演など、幅広く活躍している。

本書は、SNS全般のマーケティングのノウハウについて、事前準備の段階から詳細に解説している。
ページ数は全体で220ページあまり。専門用語が数多く登場するので、読むには文量から想像される以上の時間がかかるが、用語の解説が適宜なされているため、初心者でも読むことができる本である。

本記事では、個人の(企業ではない)SNS運用者にとって、特に役立つ部分をまとめている。

SNSマーケティングとは

「マーケティング」とは、人々のニーズやウォンツの分析に始まり、開発、PR、営業、販売などの一連のプロセスを指した用語である。本書のテーマである「SNSマーケティング」のマーケティングの一部。

「アーンドメディア(earned media)」と呼ばれる、Twitter、LINE、Facebook、Instagramなどの各種SNSは、それぞれ利用者層が異なる。そのため、各SNSの特徴(利用者の年齢層と性別)を把握して、適切なものを選ぶのが重要。例えば10代、20代や女性はInstagramの利用率が高く、30代、40代ではFacebookの利用率が高い。また、どの年代においてもLINEの利用率は極めて高い。

出典:総務省『令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
報告書

SNSマーケティングが従来のマーケティングと異なる点は、大きく分けると3点ある。

  1. 従来のSEO対策(検索結果で自社メディアが上位に出るようにすること)だけでは通用しない
    若年層を中心に、WEB検索ではなく、InstagramやTwitterのハッシュタグ検索が主流になりつつある。
  2. SNS利用者の多くはスマホを使用している
    パソコン経由の利用者数は年々減少しており、スマホに対応したコンテンツの重要性が高まっている。
  3. 情報拡散力が高い
    ユーザー本位のマーケティングを行うことが拡散力につながる。

上記の特徴を踏まえ、適切な施策を打っていく必要がある。
また、5Gの普及により、今後は動画マーケティングの規模も拡大する。

SNSマーケティング戦略の基本

最初に考えるべき4つの要素

  1. 目的の設定
    なんのためのアカウント運用なのか(最終目標や中間目標は何なのか)。
  2. ペルソナの設定
    どんな人(年代、性別、既婚/未婚、職業、趣味など、できる限り詳細に)をターゲットにするのか。
  3. SNSの決定
    目的や顧客へのアプローチにふさわしいSNSを選択する。
  4. 運用方針の決定
    運用ルールやトラブル対応方針をあらかじめ決めておく。

宣伝色は抑える

SNSにおいては、ユーザーに自発的に拡散してもらうことが重要。宣伝色を抑えたほうが情報がシェアされやすくなり、結果的に消費者に興味を持ってもらいやすくなる。

主要SNSの特性を把握する

  公開タイプ 匿名/実名 ハッシュタグ 拡散 炎上
LINE クローズド 匿名 使われない しづらい しづらい
Twitter オープン 匿名 使われる しやすい しやすい
Instagram オープン 匿名 使われる しづらい しづらい
Facebook オープン 実名 使われない しやすい しづらい
TikTok オープン 匿名 使われる しやすい しやすい
YouTube オープン 匿名 使われる しづらい しづらい
Pinterest オープン 匿名 使われる しやすい しやすい

※あくまで原則であり、例えば実名のルールがないSNSでも実名登録している人はいる。

PDCAを回す

PDCA(Plan/Do/Check/Action)のサイクルを繰り返すことで、マーケティングの質をブラッシュアップする。

評価指標のひとつとして、エンゲージメント率がある。

エンゲージメント率=(「いいね」などのアクション数/投稿へのリーチ数)×100

エンゲージメント率が高い投稿は、SNSのアルゴリズムによって、投稿が表示される機会が多くなる傾向にある。そのため、SNSならではの双方向性のコミュニケーションを意識し、エンゲージメント率を高めることを目指したい。

SNSコミュニケーションで抑えておくべきルール

「1対n対n」の原則

従来のマスメディアでは、情報発信側が不特定多数の大衆に対して情報を発信して終わりの、「1対n」の構図だった。
しかし、SNSマーケティングでは、情報を受け取った不特定多数の大衆がSNSに投稿することで、さらに不特定多数の大衆へと拡散する「1対n対n」の構図が主流になっている。しかも、企業ではなく、ユーザーが生成したコンテンツ(UGC)のほうが、他のユーザーに受け入れられやすいという特徴がある。

フォロワーを増やす方法

  1. HPやメールマガジンなど、他媒体で宣伝する
  2. 「フォロー&RTしてくれた人の中から○人にプレゼント」キャンペーンを行う
  3. 広告を出す
  4. インフルエンサーの力を借りる

ただし、闇雲にフォロワーを増やしても大した効果はない。重要なのは、UGCを増やしてくれる「エンゲージメント率の高いフォロワー」を増やすこと。そのために、既存のフォロワーとの関係性を大切にすべき。

ユーザー好感度をアップさせる投稿のコツ

  • 年齢層にあったSNS、投稿内容を考える
  • 体裁を整え、読みやすい文章を投稿する
  • 投稿に合った、わかりやすい写真をつける
  • クイズやアンケート、ユーザー参加型キャンペーンでコミュニケーションを取る
  • 「いいね」や「リツイート」をしてくれたユーザーに反応を返す

ベストな投稿日時

まず、投稿時間としては、アクセス数が多くなる7~8時、11~12時、17~18時、21~22時が望ましい。ただし、グルメ系であればユーザーが空腹になるお昼時、夕食時など、投稿内容によってベストな時間帯は変わる。

投稿の曜日は、月~木が望ましい。金~日は投稿が多くなるため、埋もれてしまいがち。

投稿の頻度は、Facebookは週1~2回、Instagramは2日に1回(ストーリーズは1日1回以上)、Twitterは1日5回以上、LINEは週1回程度がおすすめ。

やってはいけない投稿

  • ネガティブな投稿
  • 誹謗中傷
  • 見られたら困るようなもの
  • コピペだと思われるような定型文
  • 質の悪い画像
  • 改行や文字間のない、詰めすぎの文章
  • 政治・宗教的な内容
  • 他SNSとの連携投稿
  • ユーザーではなく自分本位のタイミングでの投稿

シェアされるコンテンツの条件

シェアする人の心理をうまく利用する

シェアをする人の動機は主に次の3つ。

  1. 価値があると思ったものを他の人に伝えたい
  2. 情報の提供、共有によって、より親密な交友関係を構築、維持したい
  3. 引用RTなどによって自己表現し、それを認めてもらいたい

これらの動機にうまくアプローチできる投稿をすれば、シェア数は伸びていく。

また、タイトルの下やコンテンツの下、スクロール途中にソーシャルボタンを配置することで、シェアしやすい構成にすることも重要。

人気コンテンツの特徴5つ

  1. タイムリーである
  2. ユーザーへの親密度が高い
  3. ユーザーの共感を呼ぶ内容
  4. ユーザーの役に立つ内容
  5. ユーザー参加型の投稿

ズラした投稿はウケやすい

次のような手法を使って投稿すると、ユーザーにウケやすい。

手法
大きさをズラす バケツプリン、米粒に絵を描いてみた
範囲をズラす 既存商品の意外な使い道、新商品の一部をチラ見せ
時代をズラす 定番商品の昔の姿、写真を昔風に加工

※いわゆるバズりを意識しすぎた結果、ブランドイメージに沿わないような投稿をするのは、長期的にはマイナスなので注意。

SNSのアルゴリズムを意識する

現在の主要SNSの投稿は、ただ投稿された順に無作為に表示されているわけではなく、SNSごとにアルゴリズムによってユーザーに最適と思われるものを表示している。

例えば、Instagramであれば、投稿者へのエンゲージメント率、関係性、DMのやり取りの有無、プロフィール確認頻度、関連性、流行性、滞在時間などをもとに、おすすめの投稿を上位に表示するようになっている。

各SNSの特徴

Twitter

  • 20代の若年層が多い
  • リアルタイム性が高い
  • 拡散性が高い
  • 他SNSの口コミの起点に便利
  • 匿名なので炎上しやすい

Instagram

  • 20代女性から人気
  • ビジュアルメディア
  • ハッシュタグで拡散
  • 検索結果が画像で出る

Facebook

  • 30代男女が中心
  • フォーマル度が高い
  • コンテンツの組み合わせが豊富
  • ターゲット精度が高い
  • 実名制なのでブランディングに効果的

TikTok

  • 動画専門SNS
  • 10代女性から人気
  • ジャンルは多岐にわたる
  • 拡散性が高い
  • 独自アルゴリズムにより、レコメンドで引き込む力が強い
  • フォロワーが少なくても、いいねが多い投稿は拡散されやすい

YouTube

  • 世界ではFacebookに次ぐユーザー数の動画配信プラットホーム
  • 20代をメインに幅広い支持層
  • コンテンツの幅が広い
  • 通勤中の利用者が急増している
  • スマホでの視聴が多い

LINE

  • 国内のユーザー数は9000万人を超える(2021年12月)
  • 他SNSよりもアクティブユーザーの割合が多い
  • スタンプが使える
  • トークとタイムライン2つの機能がある
  • ブロックされないようなコミュニケーション頻度・内容が重要

Pinterest

  • クリエイターや、流行に敏感な女性に浸透中
  • 女性にリーチするジャンル(旅行・インテリア・料理・ファッション等)に強い
  • コンテンツが持続しやすい
  • Webサイトへ誘導可能

サブツール

最後に、SNSの運用を便利にするサブツールをご紹介。

ツール ジャンル 説明
Hootsuite アカウント管理 複数のSNSを同一のダッシュボードで操作できる。スマホ対応。
SocialDog アカウント管理 Twitterの運用、分析、アカウント管理をサポート。予約投稿、フォロー分析等も可能。
Sprinklr アカウント管理 ひとつのプラットフォームで複数SNSのソーシャルリスニング、マーケティング、リサーチ、カスタマーケアまでトータルに管理。
Social Mention モニタリング 100以上のSNSなどに対応したモニタリングツール。
BuzzFinder モニタリング 炎上対策向けモニタリングツール。リスクや異変を検知してメール通知。
Canva デザイン作成 文書やデザインを、ドラッグ&ドロップで作成できるツール。65000以上のテンプレートや100万点以上の写真素材、イラスト、アイコン等を無料で使用可能。
BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長 データ検索 キーワード入力により、様々なページから収集したデータで口コミ分析を行う。
Kerwordmap for SNS データ検索 Twitter特化の運用分析ツール。精度の高いUGC計測が可能。
Boom Research データ検索 80種類以上の分析メニューに対応した、国内最大級規模のソーシャルリスニングツール。
Reposta データ分析 Instagramなどの詳細な運用レポートを出力できる。
Social Insight データ分析 幅広いSNSに対応した分析ツール。口コミ調査、アカウント比較、複数SNSの一括管理などが可能。
Insight Intelligence Q データ分析 マーケッター視点を反映した分析ツール。
ATELU キャンペーン管理 Twitter、Instagramでのキャンペーンで、応募者の収集や当選者選定、通知、レポート作成など、必要な作業を効率化するクラウドツール。
Googleスプレッドシート 投稿管理 投稿スケジュールの管理に使えるツール。日時、投稿内容、目的やターゲットなどを月ごとに1シートにまとめ一覧表にして使用。
Trello 投稿管理 視覚的に投稿を管理できるツール。

まとめ

SNSを活用したマーケティングについて、網羅的に解説された1冊だった。
マーケティングの本は無数に出版されているが、本書はその中でも対象をSNSに絞っているため、よりピンポイントかつ専門的なニーズに対して応えられる内容となっている。また、企業のSNSアカウントの運用が主に想定されているが、内容の一部は個人のアカウントにも流用できるものであり、その観点では幅広い読者に有用な内容と言える。

本記事では割愛したが、書籍内ではマーケティングの基礎知識や、販売戦略、援助リスクヘッジなどにも触れられているため、そのあたりが気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。

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