2020年8月に初版が発行された本。
著者は以下の6人で、全員が心理学を生業としている。
- 竹田伸也氏:鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻准教授
 - 岩宮恵子氏:島根大学人間科学部心理学コース教授
 - 金子周平氏:九州大学教育学部准教授
 - 竹森元彦氏:香川大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻教授
 - 久持修氏:やまき心理臨床オフィス代表
 - 進藤貴子氏:川崎医療福祉大学福祉学部臨床心理学科教授
 
本書は、誰もが感じている生きづらさ(≒ストレス)について、それを無くすのではなく、なんとか折り合いをつけて「こころを晴らす」ということにスポットを当てたエッセイ集である。
ページ数は全体で240ページ。
数ページずつのエッセイの中に、具体例と要点が簡潔に書かれているため、空き時間等を利用して読み進めやすい本となっている。
なお、本記事においては具体例は原則割愛し、ジャンルごとに要点をまとめている。
パートナーや家族との関係
- すれ違いが起こった時、説明するよりもただ謝ったほうが良い場合もある
 - 会話を続けてもすれ違いが解消されないような議題なら、5~10分程度の時間を決めて片方が話し、その間、聞き役は質問やコメントをせず、時間内にキチンと切り上げて終了させる
 - 自分の気持ちははっきりと伝える
 - 愛することは、成熟と習練によって可能になる能力である
 - 思春期の子供の不機嫌の裏には、家族や周りの人への気遣いから来る複雑な心情が隠れていることがある
 
仕事
- 終業前の15分は、仕事の振り返り・明日のプランのイメージ・明日取り掛かることのメモ作成・デスク周りの整理に時間を使い、退社後は仕事のことはきっぱりと忘れてプライベートを充実させる
 - 一人旅をすると、仕事や家庭の役割から解放され、肩書きのない本来の自分になれる
 - 心の強い部分だけではなく、弱い部分(つらいという気持ち)も口に出してあげることが必要
 - 無機質な作業は苦痛だが、それが最終的に誰に対して有益でメリットを与えるものなのかを考えることで、「作業」は「仕事」となり、苦痛は緩和される
 - 他人に嫉妬して足を引っ張るのではなく、自分も上っていこうと考える
 
常識にとらわれない
- 問題に直面したときは、原因を突き止める以外に、優れた点の方に着目してそれを膨らませていくことで解決へとつなげる方法もある(解決思考アプローチ)
 - 未来の自分はイメージと行動次第でいくらでも変えられる
 - 時間の使い方、過ごす場所、一緒にいる相手、何をするかなどは自分で選べる
 - 大きな困難は、自分の人生における新しい価値尺度を得る良い機会
 - リフレイム(見方を変えて別の視点から物事を捉え直すこと)によって、ネガティブな思考をポジティブな思考へと変える
 - 努力で解決できない「悩み」が判別したら、努力でどうにかなる「課題」に取り組めばいい
 
子育て・親育て
- 子育てはひとつとして同じものはなく、苦悩や大変さを感じているのなら、それは「特別なことしているから」と誇っていい
 - 自分自身の気持ちの流れを大切にすると、見えていなかった一面に気づくかもしれない
 - 自我が生まれてくるときには、それまでの表面的な適応が一時的に崩れることも多いが、それが成長のポイントになっている子どももいる
 - 思春期の不機嫌の裏にある成長痛について考えることは、子を支える大切な行動である
 - 本当にだめなことだけは指摘してくれる大人に見守られているという感覚は子どもをリラックスさせる
 
追い詰められたとき
- 忘れられないほどの失敗をしてしまったときは、その時の自分をあえて写真に撮っておいて自戒にする
 - 抱えている挫折や絶望の悩みについて話すと、心の混乱が整理されて楽になる
 - リスクに備えるために大切なのは、人との関係を大事にすることと、必要に応じて他者の力になってあげること
 - 同じような状況の人を見つけ、話すことで孤独の苦しみから抜け出せる
 
からだの具合
- 心と身体はつながっているので、気持ちが晴れないなら胸を張る、自信がないならしっかり立って歩く、意欲がわかないなら好きなものを手に取り鑑賞してみることで回復することがある
 - 身体が発する危険信号などを見逃さずにちゃんと休む
 - リラックスしたいなら、腹式呼吸を行い、次に背筋を伸ばして肩をゆっくりと上げ、ストンとおろすのを2,3回繰り返して肩の筋肉の緊張を緩める
 - たまには食欲に従って食べたいものを食べてもいい
 
リラックスする
- 怒りっぽい人は、怒っている自分を許す気持ちを持ち、怒りを溜め込まず、怒っている状況を口に出して相手に伝えるといい
 - 幽体離脱のようなイメージで客観的に自分を眺めたり、空を眺めたりするとリラックスできる
 - 疲れた時はそれと同じだけの時間をかけて休む
 - マイナス思考に気づいたら「かもしれないし、そうじゃないかもしれない」とつぶやく
 
日常生活
- 将来の夢は、それについて考えてワクワクすること自体に意味がある
 - 部分的な情報から相手の全体を判断しようとしない
 - 今日で人生が終わると仮定して、大切なものを考え、それを大切にする
 - 言葉遊びやあだ名を考えたりして楽しむ
 - 私たちは日々変化し、成長することができる
 - 喫茶店に行くなど、「自分だけの時間」を持つ
 - 何かをしている時に嫌な考えが頭に浮かんだら、「○○と思ったんだね」と優しく受け止めて、今していることに意識を戻す
 - 自分の大切にしたい価値に沿って生きる
 - ちょっとした楽しみを見つけて「何でもない日」をそうでない日に変える
 
人間関係
- 「他人は自分とは違う生き物」だと念頭に置いておく
 - 相手のテリトリーに踏み込みすぎない
 - 本人さえも意識していない、潜在的な心の葛藤である「もうひとりの自分」を想像する力を持つと、人間関係での盲点を無くすことにつながる
 
老い・死・終
- 弱ささえも、人間が生き残るために必要な「多様性」の一要素であるとして受け入れる
 - 何かを失うことは、他の何かを選ぶことである
 - 自分の身の丈を知り、自然と身近な人々に感謝できるような人生を目指す
 
まとめ
人生において直面する様々な悩みについて、それと上手く付き合っていくための思考や行動が書かれた一冊だった。
エッセイ集であり、著者も複数いるため、いわゆる「実用書」のように、ひとつの結論に向かって順序立てて説明していくような本とは少し異なった構成となっている。
本記事では割愛しているが、実際の書籍内では、各々の主張に対して具体的なイメージを与えるエピソードが豊富に盛り込まれているため、気になる方は手にとってみることをおすすめしたい。
  
  
  
  

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