たった5分でわかる『脳からストレスを消す技術』

健康

2008年12月に初版が発行された本。

著者の有田秀穂氏は、「呼吸」や「セロトニン」を専門とする研究者・医師。本書以外にも、複数の本を執筆している。

本書は、ストレスを上手に受け流す方法について解説したものである。
ページ数は、あとがきまで含めて223ページ。専門用語は比較的多いが、用語に馴染みがなくとも、全体の流れは把握できるような構成になっている。

本記事では、特に重要な部分を抽出して解説する。

ストレスは防げない

ストレス自体を防いで完全になくすことは不可能。ただし、ストレスによる苦しみは消すことができる。

日々襲い来るストレスを上手に受け流し、コントロールできる人こそが本当に「ストレスに強い人」であり、本書はその方法について解説している。

2つのストレス経路

ストレスの経路には「身体的ストレス経路」と「精神的ストレス経路」の2種類が存在し、経路によって引き起こされる病気は異なる。前者は高血圧や糖尿病、後者はうつ病やパニック障害をもたらす。

近年問題となっている精神的ストレス経路による病気(うつ病など)は、脳内の「縫線核」という部分にストレス情報が伝わることで、「セロトニン」という神経伝達物質を出すセロトニンの働きが弱ることが原因である。

なお、人間以外の動物も身体的ストレス、精神的ストレスの両方を感じることがわかっている。ただし、「快が得られなくなるストレス」「正当に評価されないストレス」といった、脳が高度に発達した人間ならではのストレスも存在する。

前頭前野がカギ

人間の脳が、他の動物の脳と大きく違うのが、脳の一番外側に位置する「大脳皮質」が発達しているという点。大脳皮質は、場所によって、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉という部分に分かれる。このうち、ストレスを感じたり、解消したりすることができるのが、「前頭前野」と呼ばれる、前頭葉の中でも最も前の方に位置する部分である。

前頭前野は、その位置によって3つの大切な働き(学習、仕事、共感)を持っている。それぞれの部分を「学習脳」「仕事脳」「共感脳」と呼び、学習脳はドーパミン神経、仕事脳はノルアドレナリン神経、共感脳はセロトニン神経に密接に関係する。

セロトニン神経を鍛えるべき

学習脳と密接に関係するドーパミン神経は、快感をもたらす。ドーパミンが適量であれば、意欲やポジティブな心の状態をつくる一方で、過剰になると、依存症をもたらす危険性がある。

仕事脳と密接に関係するノルアドレナリン神経は、怒りや危険に対する興奮をもたらす。ノルアドレナリンが適量であれば、パフォーマンスは向上するが、過剰になると、うつ病をはじめとした精神疾患をもたらす危険性がある。

共感脳と密接に関係するセロトニン神経は、ノルアドレナリン神経と同じように脳に覚醒をもたらすが、決定的な違いがある。それは、「ノルアドレナリン神経と異なり、セロトニン神経は、ストレス刺激の有無にかかわらず、常に一定量のセロトニンを放出し続ける」という点。また、セロトニン神経自体は何か仕事をしているわけではなく、ドーパミン神経やノルアドレナリン神経のバランスを整えるという役割を担っている。

セロトニン神経が活性状態にあれば、ドーパミン神経とノルアドレナリン神経が多少過興奮しても、その興奮を抑えてバランスを整えてくれる。したがって、セロトニン神経を鍛えることで、ストレスを上手にいなせるようになる。

セロトニントレーニング

セロトニン神経を活性化させる方法(セロトニントレーニング)は、主にふたつある。

ひとつ目は、朝に太陽光を30分程度浴びること。朝起きたらカーテンや雨戸を開けて光を取り込んだり、通勤や通学、ウォーキングなどで日の当たる場所を歩くといい。なお、長時間浴びると逆にセロトニン神経の自己抑制機能が働いてしまうため注意。

ふたつ目は、リズム運動を行うこと。一定のリズムを身体が刻みさえすればいいので、激しさは不要。むしろ疲弊してしまうと効果が下がるので、疲れない程度の運動が望ましい。ウォーキングやヨガなどはもちろん、ガムを噛んだり太鼓を叩くことも一定のリズムで行えば、セロトニン神経を活性化できる。

重要なのは最初の3ヶ月間、休まずに続けること。始めたばかりの頃は、少し調子が悪くなるが、それはセロトニンが増えて抑制機能が働いたことによる一時的な不調。続けてさえいれば、必ず調子は良くなっていく。

身体的ストレスへの対抗策

これまでに紹介したセロトニントレーニングは、精神的ストレスに対しては非常に有効だが、身体的ストレス経路には直接の影響を与えられない。つまり、身体的な病気に対する免疫はつけられない。身体的ストレスに対しては、別の対抗策を施す必要がある。

その対抗策とは、涙を流すこと。

涙には3種類ある。

  1. 目を保護するために常に出ている、基礎分泌の涙
  2. ゴミなどが入ったときに出る、反射の涙
  3. 悲しいときや感動したときに流す、情動の涙

3は人間特有の涙で、抗ストレスを持っているのもこの涙。情動の涙を流すときには、共感脳が激しく興奮し、それが脳全体へと伝わり、交感神経の緊張状態(=ストレス状態)が副交感神経興奮状態へとスイッチングされる。ストレスが溜まっている状態というのは、交感神経が緊張状態にあるということなので、これを緩和してやることでストレスが軽減されるというメカニズムである。

泣く素材は映画でもドラマでも音楽でも本でも、感動できれば何でも良いが、ホラーなどの恐怖ものは効果がないので避けるべき。時間帯は、1日のストレスが溜まっていて、時間的余裕がある夜が適している。

ちなみに、笑いにも多少のストレス解消効果がある。泣きは「スッキリする」「大きな」解消、笑いは「元気が出る」「小さな」解消なので、時と場合に応じて使い分けるのがおすすめ。

まとめ

ストレスへの対抗策について、具体的な手法が解説されている1冊だった。多かれ少なかれ、誰もが受けているストレスに関する本なので、汎用性の高い本と言える。
本記事では割愛したが、書籍内ではストレスのメカニズムについても詳しく解説されているので、そのあたりが気になる方には手にとってみることをおすすめしたい。

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